41 気まずい
「お、おはよう」
「優輝くん、お、おはよー」
俺と優輝で朝食を食べに食堂へ行ったところ、栞と和泉さんが二人でテーブルに座っていたため、俺たちはいつも通り近づき優輝が和泉さんに挨拶をした結果がこの様だった。
客観的に見ても二人の空気感は明らかにおかしかった。
さすがに朝からこの空気は重い。
この空気を断ち切るように俺も二人に挨拶を交わした。
「おはよう、二人とも」
「島崎くんも、おはよー」
「おはようございます。島崎さん」
和泉さんからはいつも通りのあいさつが、栞は俺のことを名前呼びでなかったのが若干気になったが、冷静に考えれば優輝と和泉さんに俺たちの関係を話してない以上それは当然のことだと言えるだろう。
少しは空気感が軽くなったか、と思ったがどうやら勘違いだった。
問題なのはここからだった。
もちろん四人そろった以上は一緒に食べるのが自然の流れだろう。
しかし食事中、普段と比べると明らかに四人全員の口数が減っていた。
優輝は和泉さんに話しかけづらいのか、話そうとしては口を閉じるのを繰り返し、和泉さんもこれまでにはあまり見たことがないような気まずそうな表情を浮かべながら黙々と朝食を食べていた。
そんな空気を感じながら俺も何も話さずに黙々と朝食を口にしており、栞はまあ、口数が少ないのはいつも通りなのであまり違和感はない。
そんなこんなで全員が朝食を食べ終わると、黙々と食器を下げて「じゃあまたテニスの練習で」と軽く声をかけた後、お互いの部屋に戻った。
「どうしよう。気まずすぎるぜ」
部屋に戻ると優輝は落ち着かないような様子でそう嘆いていた。
「しょうがないだろ。昨日告白して振られたんだから。そりゃあ振った方も振られた方も変な気遣いするだろ」
「でもよお」
なおも優輝は何か言いたそうな口ぶりだ。
「はぁ、まあ合宿中は無理でも少し時間が過ぎればまたお互い普通に話せるようになるだろ」
「そ、そうか?」
俺が優輝に慰めの言葉をかけると優輝はしつこく聞き返してきた。
これは重症だな、と俺は心の中で思う。
こんな優輝を見るのは初めてかもしれない。
「そうだろ。ほら、時間はすべてを解決するってよく言うだろ」
「た、確かに?」
会話をしながら、早くうるさくて、暑苦しくて、でも根はやさしい、いつもの優輝が戻ってきてくれと心の底からそう思う。
でも俺には優輝が本当の意味で立ち直ってくれるような言葉を持ち合わせていないことが何より心苦しかった。
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