2-9:運営視点①
「主任!れ・・・レッサースワンプドラゴン・・・突破されました・・・」
「はぁ!?なんでだよ!?!?あれはまだフラグも経ってなかったし行動制限つけてたはずだろ!」
ここはSLAWOの運営が集まるVR執務室・日本ワールド。ゲーム内時間が加速されているため、運営もそれに合わせた環境を用意してワールドを監視しているのである。想定外のことが起こったのか、何やら慌ただしい雰囲気だ。
「そ・・・それが、グリフォンと遭遇した結果、恐慌状態になったようで行動制限が外れて・・・」
「はぁぁーーー、そういうのあったなぁーーー。行動制限が外れない保証はなかったんだよな。シミュレーションでも極々稀にしか起こらないから忘れてた。恐慌・魅了・混乱のいずれかの状態になると外れるんだったか。だがよりにもよってワールドレイドボスが原因かよ・・・。それで被害状況はどうだ?」
「エンジの西の森が一部沼地になった程度ですね。弱体化したこもあってか、運よくソロ突破できてしまったようです。」
「ソロだぁ!?いくら弱体化するようになっているからってソロはないだろう!?街が半壊する程度の被害は出る想定だったろうが!!」
「えぇっと、倒したのはカケルくんですね。暴徒鎮圧の効果でダメージ三倍になった結果、運よく撃破できたようです。」
「あぁー、九尾の子か。確かに今の状態でも条件が一致すれば倒せるが・・・、まぁ、起こってしまった以上は仕方ないな」
「プレイヤーにはどう説明しますか?」
「とりあえず、行動制限の件や色々な条件が偶然積み重なった結果だといっとけ。ミカエルー、頼むー。」
「はいはーい!了解だよー!まぁ、そのリスクはいつでもあったから仕方ないねー。じゃぁ、掲示板に書いてくるねー!」
そしてミカエルと呼ばれた天使は何処かへ消え、そしてすぐに戻ってきた。
「ただいまぁー!」
「帰ってくるの早くね??」
「うんうん、それがさぁ、カケルくんがグリフォンの件を話してたから戻って来たんだよねぇ。この扱いどうするー?」
「はぁ!?なんでそれを知ってるんだよ!?プレイヤーがいけない所にいたはずだろ!!」
「ちょっと待ってくださいね。ログを確認します。・・・あー、アダムが漏らしたようですね。」
「はぁぁぁぁーーー、あいつかぁー。あれは俺らとは別だからなぁ。向こうにもそれなりの理由があるのかもしれないが・・・。じゃぁまぁ、グリフォンのせいって形でまとめとけ。レイドボス発生条件は、劣沼竜の条件は開示していい。もう倒されたやつだからな。他は伏せて置け。」
「被害想定とかはー?」
「まぁ、予想で来たこととはいえ、仮にもレイドボスの報酬が一人に固まったわけだからな。その情報も開示していいだろう。」
「了解だよー、じゃぁ行ってくるねー!」
そして、ミカエルと呼ばれた天使はどこかへ消えていった。
「で、この後どうする?前例が出来た以上、ラスボスがいきなり登場することだってありえるかもしれないだろ。すでにワールドには
「出しちゃってますね。
「はぁー・・・最悪、ルシフェルかミカエルに被害が出る前に倒してもらうしかないか。その時の討伐判定は切って、リポップしたのを再度レイドボスに成長させる。それは可能か?」
「可能ですね。倒したことで浮いた経験値をリポップしたのに与えれば同じ強さにもなりますね。ただ、そうなると最初の個体より強くなる可能性もありますが」
「強くなりすぎたら、その時もミカエルかルシフェルに援護してもらうしかないだろ。誰かがフラグを踏んだという事にしてよ。」
「そしたら住人にお願いして教会に誘導してもらいますか?教会からの神託という形であればいい具合になるのでは?」
「確かに。それならフラグを踏んだという形で処理しやすいか。・・・はぁ、ワールド作ったのはいいけど本当にめんどくさいな・・・」
「普通のゲームはこんなこと考えないでしょうからねー。まぁ、本来の用途はゲームではないですから」
「星間通信を超えた
「あぁっ!?!?!?」
そして、主任と会話していた監視者とはまた別の人が大声を上げる。
「今度は何だ!?」
「あっ、あのっ、九尾の人のログを見ていったらこれが・・・」
そこに映し出されていたのは、カケルの身体のスキャン結果。ほとんどのフルダイブ式VRゲームではプレイヤーの健康状態を確認するために、定期的に身体をスキャンして記録しているのである。
そして健康状態が悪い状態にあるとAIに判断された場合はログイン不可となり、AIで判断つかない場合はこうして運営陣がスキャン結果を見て判断することになるのだ。とはいえ、余程の特例がないかぎりAIが判断できないということはないのだが、カケルの場合は耳と尻尾が生えたたためその特例に該当する。
「おいおいまじかよ、これ狐の耳と尻尾じゃねぇか。しかも初期のアバターそっくりだ。おい、さすがにこれは問い合わせがあったんじゃないのか?」
「えーっと、ゲーム内からの問い合わせ記録はないですね。ただ、電話での問い合わせはあったようですが。」
「それ、誰が回答したんだ?」
「一般コールセンターの人ですね。問い合わせ時点ではスキャン結果が上がってなかったため、すり抜けたんだと思います。」
「なるほど・・・、ちょっと上に確認してくるわ。データ送付頼む。」
「承知です。」
そして主任と呼ばれた人はログアウトして消えていった。
ところ変わってここは星間通信株式会社の執務室。先ほどの主任と呼ばれた男と、もう一人の女性とも男性ともつかない人が会話をしている。
「うーん・・・これは僕も初めて見た現象だね。ただ、これ以降苦情がこないってことは、元々そういう事が起こる可能性があるってわかってたんじゃない?」
「うちの機器とは関係なくってか?確かに世界は広いから、国が隠蔽してることも多々あるだろうが。さすがに有り得ないと思いたいけどな。」
「とりあえず、スキャン結果を見る限り問題なさそう。ただ、こんなに作成したアバターに寄るのは不思議だね。ちょっと総理に聞いてみるね。」
「普通はそんな気軽に質問できる人じゃないんだけどな・・・」
「惑星規模の秘匿プロジェクトだからね。それくらいは普通だよ。僕が持ち込んだ話だしね。」
「惑星規模ってこと自体がもう普通じゃないんだが・・・、まぁ、頼むわ。うちの会社には手が余る。」
「はいはーい。」
そして、謎の人物は執務室を去っていった。
「全く、最初はただの宇宙開発系のエンジニア集団だったのに、何がどうしてこんなことになったんだか・・・。あぁーやめやめ!帰ったら酒飲んで忘れよう!」
主任も自分の持ち場に戻っていく。
そしてその
「と、いうわけなんだけど、何かしらない?」
「ふむ・・・、確かにその情報は国の秘匿事項になってますね。ただ、資料も大したものはなかったかと。せいぜい妖怪の血が混じってるとかそういう眉唾なことしか書かれてなかった記憶です。森さんは何か知ってます?」
森と呼ばれた女性。恐らく秘書か何かだと思われる彼女が答える。
「いえ、私も総理と同じ見解です。ただ、日本に限らず様々な国でこのようなことが起こっているはずですので、情報開示を求めてはどうでしょう。」
「開示してくれますかね。国によっては軍事転用してそうな気もしますから中々難しいのでは」
「なら、僕が直接聞いて来よう。それなら答えてくれるでしょ。」
「どうですかね・・・。うちは自国の事実を持ってこられた以上、回答しないわけにはいきませんが、他国の場合だとその辺は知らぬ存ぜぬを貫く可能性が高いかと。」
「そっかぁ。そしたらアダムに聞いてみようかな。彼なら知ってそう。」
「アダムですか・・・。それも
「君たちにとっては今更じゃない?」
「それもそうですね。とりあえず、うちで持ってる情報は渡しておきます。森さん。」
「はい、すでに用意してあります。こちらをどうぞ」
「ありがとう。それじゃぁまたね。」
そして謎の人物はその場から煙のように消えていった。
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