SLAWOーあなたが選んだ種族はスキルを使用できません!みんなゲームしてるのに私だけ鍛練から始まりますー

雪乃大福

1章.サービス開始!

1-1:キャラクリエイト

「翔ー!!帰るよー!!」


「うわっ、っと、一葉。危ないからやめて」


 大学からの帰り道、彼氏が私の胸元に飛び込んできた。少し驚いたが、いつものことなので倒れないよう落ち着いてしっかりと受け止める。

 彼氏の名前は宮田一葉みやたかずは。見た目も声も完全に女の子だが実は男。所謂男の娘というやつだ。今はメイクしているがスッピンでも超かわいい。外見から性別を判断するなら骨格とか歩き方で判断するくらいだが、その辺も普通の女の子にしか見えない。唯一の男の子要素が胸がなくてtntnが付いてるくらいで、殆ど女だ。

 一葉と会ってから1年になるが、正直体を重ねるまでは男かどうかずっと疑ってた。見た目に反して力が強かったのには驚いた。

 そんな彼の彼女である私の名前は雨宮翔あめみやしょう、髪型はショートで背も170と女性にしては高く、服装も男っぽいからよく男女と呼ばれる。


「あっ、ごめんごめん!でもめっちゃ楽しみだったからさ、新作ゲーム!!」


「あぁ、そうだね。今日からSLAWOのサービス開始だもんね」


「うんうん、帰った早速開始してフレンド登録しようねー!」


「そうだね。さっ、早く帰ろうか」


 SLAWO、正式名称は『SecondLife in AnotherWorldOnline』。

 『星間通信Withゲーム』というこれまで名も知られてなかったベンチャー企業が開発したフルダイブ式新作VRMMORPG。『第二の人生を剣と魔法の世界で』をテーマに開発されたこのゲームは既存のフルダイブ式VRMMOとはあらゆる面で一線を画すものであった。


 半年前に世界各地の有名プロゲーマーを招待して実施されたクローズドβのプレイが配信され、その実態が明らかになった。

 まず目につくのは圧倒的なグラフィック。まさしく異世界そのものを作り上げたかのような配信を見てた人は虜になった。そして次に驚いたのはNPCの反応だ。すべてのNPCの反応が人間のそれと全く変わることがなく、優しくすれば優しくされ、態度が悪ければ敬遠される。ひどければ衛兵に連れていかれることもあった。(なお、そのプレイをしたβテスターはその後炎上した)。

 そのクオリティは見てた人を『異世界物のアニメを見に来たんだっけ?』と勘違いさせ、プレイヤーには『まさしく第二の人生を始めたみたいだった』と言わせるほどのものだった。


 そしてその配信を見た人、噂を聞きつけた人が先月のオープンβに応募。千人しかない枠に対して1千万人が応募したと言われている。私と一葉も応募したが残念ながら当選しなかったが、初回抽選販売には当選し、購入することができた。


「ただいまー!!早速始めよー!」


「おかえり、荷物片づけてからね。」


「はーい!」


 部屋に鞄を置き、部屋着に着替える。

 私たちが暮らしているのは30階建て高級タワーマンションの29階。2LDKの70㎡とかなり広い部屋だ。

 この部屋を『購入』したのは一葉だ。VRゲームの実況者でありプロゲーマーでもある一葉はかなりの額を稼いでいるらしく、付き合ってしばらくして『同棲するための部屋を買おう!』といいだしたので二人で探して買った部屋だ。

 普通の部屋を探すのかと思ってたら提案してくるのが一軒家の豪邸か高級タワマンしかなくて驚いた。普通のでいいし私が払えないといったのだが、『お金は一杯あるし、僕が全部払うから大丈夫』といって押し切られてしまい、せっかくならと憧れのあった高級タワマンの上層階を購入してもらった。


「よーし!さっそく始めよるぞー!」


 SLAWOは、このご時世には珍しく専用機器が必要であり通常のヘッドギアタイプや、リクライニングチェアとの一体型など色々あった。私たちが購入したのはリクライニングチェアとの一体型。価格は何と100万円。しかも初回生産台数はたったの10台とプレミア物である。私は普通のヘッドギアでいいっていったんだけどね・・・これも一葉に押し切られた。昨日の夜に届いてゲーム部屋に設置済みだ。


 部屋着に着替えたあと、ゲーム部屋に並んでるSLAWO専用のリクライニングチェアに座り、使用者情報を登録した後、ヘッドギアをつけて起動。起動と同時に全身のスキャンが行われ、その後意識がゆったりと遠のいていった。


『ようこそ、SLAWOの世界へ。私は天使ルシフェル、雨宮様のサポートを行うものです。雨宮様の身体をスキャンしてアバターを作成させていただきましたが、調子はいかがでしょうか?違和感があればこの場で修正いたします。』


 起きるとそこは真っ白い空間になっていて、目の前にはルシフェルを名乗る天使がいた。まずは言われた通り体を動かして違和感がないかの確認。一つを除いて問題ないことを確認し、その一つの問題を聞いてみる。


「あの、なんかみぞおち辺りにシコリ?なんか変なのがあるように感じるんですけど。」


『あぁ、それは魔力器官ですね。魔法を使うために必要な器官でして、この世界で暮らす人々は皆この器官をもっています。申し訳ありませんが、こればかりは慣れていただくしかございません。これまでの試験でその感覚に気づけたのは数人しかいないのですが、よく気が付けましたね。』


 へー、そういうものなんだ。魔法を使うための器官・・・か。まぁ、慣れるしかないということなら気にしないでおこう


「そうなんですね、他は大丈夫ですので進めてください。」


『かしこまりました。では次にアバターの設定をしていきます。まずは名前を入力してください。』


名前か・・・うーん、カケルでいいかな。カケルと入力。


『カケル様ですね。はい、大丈夫です。以後、カケル様とお呼びいたします。では次に種族を選択してください。』


 そういわれてウィンドウに表示されたのは、人族、獣人族、エルフ、ドワーフ、ランダムの5つ。

 人族は種族として苦手とするものはないが、得意なものもなく平均的な種族。

 獣人族は身体能力が高く近接戦闘を得意とする種族、生産は苦手なことが多い。

 エルフは魔法と弓を用いた中遠距離戦闘が得意で、調薬・錬金を得意とする。

 ドワーフは生命力が高く盾役として優秀、鍛冶が得意。

 ランダムは文字通りランダム、記載のない種族が当たることもある。引き直しは出来ない。


 う~ん・・・普段ゲームしないし何かしたいという訳でもないし・・・・、ランダムにするか。


「ランダムでお願いします。」


『かしこまりました。引き直し出来ませんがよろしいですか?』


「はい、大丈夫です。」


『かしこまりました。ではランダムを実行いたします。こちらのガチャを回してください』


 そういって現れたのは昔懐かしいガチャガチャ。ハンドルを回したら掌サイズのボールが出てくるタイプのやつ。いつの時代だよ。

 ガチャを回すと虹色の球が出てきて、徐々にケースが消えていく。そして中に残った紙に表示されていた種族は『九尾の妖狐』

 どうみてもレアな種族だよね。それもスーパーレアとかそういうやつ。


『・・・?・・・えーっと・・・?』


あ、ルシフェル様も困ってらっしゃる。


『はい・・・はい、あぁーなるほど。大丈夫なんですね。えぇ、えぇ』


 大丈夫・・・とは?何か怖くなってきたんだけど。そんな大ごとになるようなもの引いたの私。


『お待たせしました。βの時には存在しない種族でしたので創造神様に確認を取っておりました。問題ないとのことでしたので、そのまま進めさせていただきます。まずはユニーク種族の取得おめでとうございます。ユニーク種族には様々なデメリットが存在しますが、それを補って余りあるメリットがありますのでどうかご安心ください。えぇ、初日からユニークが出るとは思ってませんでしたよ』


「えぇっと、ユニーク種族ってなんです?」


『はい、ユニーク種族とはその世界で一人しか存在しない種族のことです。つまり、このゲームにおいて九尾の妖狐はカケル様ただおひとりということです。』


 おおう・・・・なんかトンデモないの引いたちゃったな。まぁ、それはそれで面白そうだしいっか。デメリットが気になるけどそれもやってみてかなぁ。めっちゃ強いらしいし。


『では、次に職業選択・・・なのですが、ユニーク種族:九尾の妖狐の場合、職業は妖術師になります。それ以外にはなれませんのでご容赦ください。』


お・・・おう、まぁなんかカッコイイしいっか。


『では次にスキル選択ですね。5つ選んでいただく必要があるのですが、内2つは妖術と封印(九尾)で埋まってますので、残り3つを選択ください。』


 妖術と封印ね・・・妖術はいいとして封印かぁ・・・解放したら何かあるのかな?。まぁ、それはそれとしてっと。

 そしてスキル選択欄が表示される。武器、防御、移動、生産、補助などなどカテゴリごとに分けられているのは非常にいい。検索欄もあるのは◎。なんだけど、グレースケールになってるスキルが多い・・・。


「あの・・・グレースケールになってるスキルは種族的に選択できないということでしょうか・・・?」


『はい、その通りです。カケル様の場合はユニーク種族ですのでその数も多いですね。その分強いのでご安心を。取得可能スキルだけ表示するには右上の取得可能スキルの欄にチェックをつけてください。』


 ふむふむ・・・まぁそういうなら続けるしかないよね。取得可能スキルにチェックっと。


 えーっと、うん。戦闘系は軒並みアウト。魔法もダメ。Oh…難易度Very Hard…

生産系もあるね、・・・あ、鑑定あるじゃん、これは取っておこう。ラノベとかだと大体これがないと全然進まないとかあるよね。

 えーっと、ゲーム知識ないしなぁ・・・魔力操作と感知・・・?いるかなぁ?


「あ、取得したスキルの内容ってこの場で見ることは可能ですか?」


『えぇ、可能ですよ。それも右上に選択・取得スキル一覧がありますのでそちらをチェックいただければ取得したスキルと詳細が表示されます』


なるほど、言われた通りにチェックをつけてっと。


して、えーっと、まずは妖術から


◆妖術Lv1:特殊・アクティブスキル

 魔法とよく似た術だが、属性や種類という分類の概念が存在しないとされている。魔力を用いて発動しているとされているが、詳細は謎。


 謎ってなにさ!使い方がわからないじゃん!てか最初から扱えるような代物じゃなさそうなんだけど・・・・。はぁ・・・次。


◆封印(九尾)Lv1:特殊・パッシブスキル

 九尾の力を封印しているスキル。習熟度が上がるごとに力が解放されていく。現段階で使用可能なのは妖術のみ。


 習熟度って何のだろう・・・。妖術のことかな。妖術の扱いが上手くなると力が解放されるとか?それともレベルのこと・・・?うーん、わからん。

 結局謎だらけだった。まぁ、徐々に強くなる大器晩成型と思っておこう。


 っと、一応鑑定も見ておこう。


◆鑑定Lv1:特殊・アクティブスキル

 様々な物を鑑定し、情報を参照することができる。スキルレベルに応じて参照範囲が広がる。生物に対して使うことはできない。


 ふむふむ、生物に対して使えないということは、他にも似たようなスキルがあると思っていいのか。スキル一覧を見てみると、看破・薬草識別・鉱石識別があったから多分これらかな。そしたら看破も取っておこう。


◆看破Lv1:特殊・アクティブスキル

 対象のステータスを見ることができる。スキルレベルに応じてステータスを見ることが可能な対象が増えていく。


 さて・・・、最後は何を取るべきか・・・。とるなら魔力操作か感知かなぁ・・・この二つがないと妖術使えない気がする・・・。あ、あとからスキル取得できるのか聞いてみるか。


「あの、あとからスキルを取得することって可能ですか?」


『はい、可能ですよ。スキル取得には色々な条件がありますので是非探してみてください。』


 なるほど・・・となると魔力操作と魔力感知はいいかなぁ。魔力器官があるってはわかったから魔力操作も訓練したら出来るでしょ。

 あっ召喚術も取れるみたい。けど妖術の説明的に大体のやつはこれで代用できそうなのがなぁ。近接戦闘はリアルで武術習ってるから、武術使ってたらそのうちスキル覚えるでしょ。生産は私が不器用すぎるから除外・・・、したら最後は言語スキルにしようっと。


よし、これでスキルはOK。


『決まったようですね。では次にステータスポイントを割り振ります。自由に割り振ってください。』


すると今度はステータス画面が表示される。


HP :40

MP :180

STR:11 [10 * 1.1]

VIT:4  [10 * 0.4]

INT:23  [10 * (1.8 + 0.5)]

MND:17  [10 * (1.2 + 0.5)]

DEX:10 [10 * 1.0]

AGI:11 [10 * 1.1]


SP :100


「あの、ステータスの横のカッコは何でしょうか?」


『あぁ、それは種族補正値ですね。SP1につき幾つ上昇するかを設定したものです。ステータスごとの基本値が1.1、全体で6.6の補正値となるように設定されています。この補正値はどの種族も同様です。例えば人族であれば全てのステータスの補正値が1.1となります。+0.5というのは追加の職業補正値です。この値はどの職業に就くかで変わります。ちなみに今回カケルさんには関係ありませんでしたが、職業選択の際にランダムを選択すればレアなものが出たりして、通常より補正値が高かったりします。それと今後はレベルが上がるごとにSPが10ポイント取得されますのでレベルが上がった際には忘れずに割り振ってくださいね。』


 なるほどなるほど。そういう感じなのね。とするとこの種族は魔法戦に強く、近接戦闘もそれなりに可能。ただし物理攻撃に非常に弱い。そんな感じか。


 SPを振っていけばいいんだよね。妖術は最初使えなさそうだしメインは近接格闘になりそう。とするとINT、STR、AGIに30ずつ振って、残った10ポイントは低すぎるVITでいいかな。よし、完成。


HP :80

MP :920

STR:44 [40 * (1.1)]

VIT:8  [20 * 0.4]

INT:92  [40 * (1.8 + 1.5)]

MND:17  [10 * (1.2 + 1.5)]

DEX:10 [10 * 1.0]

AGI:44 [40 * 1.1]


SP :0


『ステータスの割り振りはこれでよろしいですか?』


「はい、大丈夫です。」


『かしこまりました、ではこれで決定いたします。初期設定は・・・あぁ、アバターの設定を忘れてました。まずは種族:九尾の妖狐をアバターに反映させますね。・・・はい、終わりました。ではアバターの設定をお願いします。』


 アバターの設定ってなんぞやって思ってたら私の目の前に姿見が現れ、狐耳と九本の尻尾を生やし、巫女装束を着た私の姿が見えるようになった。

 腰の辺りから九本の尻尾が生えていて夕陽を思わせる綺麗な紅をベースに、毛先に進むにしたがって白くなっていってる。耳は外側が白く内側が紅色になっている。ま  た、目にも紅色のアイラインが引かれており、いかにも和風っていう感じだ。髪色も耳の周りが少し白くなってる。

 尻尾は邪魔かなと思ったけど意外とそんなこともなく、思った以上に伸び縮みする。自分の意思で動かせるので上手く扱えば戦闘にも使えそうだ。


 っと、アバターの設定だったよね。えーっと、まず髪色は白にして耳の色と合わせてっと。紅のインナーカラーも入れたいけど、そこまでは設定できないみたい。長さは少し伸ばしてウルフヘアにしよ。目の色は・・・紅色にしようか。あと、身長はこのままで、胸は・・・んー、意外と邪魔じゃないからこのままでいいや。うん、これでいいかな。決定っと。


『はい、ではこれでキャラメイクは完了です。あー、それから武器と防具は装備不可となってますのでお気をつけて。それでは、新たな世界をお楽しみください。』


待って待って待って、最後に爆弾落とさなかった!?ちょっ、何それっ・・・


★ステータス

--------------------------

■名前:カケル

■レベル:1

■種族:九尾の妖狐

■種族特性:擬装(妖狐族)

■個性:零距離戦闘陣

■職業:妖術師

■所持金:10,000zゼニー

■ステータス:

 HP :80

 MP :920

 STR:44 [40 * (1.1)]

 VIT:8  [20 * 0.4]

 INT:92  [40 * (1.8 + 0.5)]

 MND:17  [10 * (1.2 + 0.5)]

 DEX:10 [10 * 1.0]

 AGI:44 [40 * 1.1]

 

 SP :0

■取得スキル

 妖術Lv1、封印(九尾)Lv1、鑑定Lv1、看破Lv1、言語Lv1


『あ、種族特性と個性の話忘れてましたね・・・しかし色々ある個性の中からこれを引きますか・・・運がいいのか悪いのか・・・。まぁ、頑張ってください。』


◆種族特性:擬装(妖狐族)

 他者からは外見は一般的な狐族と殆ど変わらない妖狐族となり、他者から見られる場合のステータス表記も妖狐族となる。


◆個性:零距離戦闘陣

 零距離戦闘に特化した戦闘陣。半径一メートル以内の敵に攻撃した場合、威力は2倍となる。また、それ以上の距離から攻撃した場合の威力は10分の1となり、相手から受けるダメージは2倍になる。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る