第30話 共闘
ゴブリンが走りながら追ってくる。
目が殺しに来ている奴の目だ。
「お前……一体なにしたんだよ……恨みでもあるのか?」
「…………」
「答えたくないならいい。そんな事よりあれをどうにかするかだな!」
ゴブリンの攻撃が来る。
右手を俺たちに向けて振ってきた。
華麗にとまではいかないものの余裕をもって逃げ切れた。
これもラグナロクが俺を引っ張っているおかげだろう。
もしも引っ張っていなければ、即死級だ。恐ろしい。
すると、今度は物凄い勢いで突進してくる。
流石にこれは避けれないと思ったのか、ラグナロクはスキルを使う。
「フレイムバリア!」
炎が大きな壁をなり、突進を防いだ。
しかし、その衝撃で壁も一気に壊れてしまう。
凄い。
いまの攻撃を防ぐなんて……耐久力が高い。
「ごほごほ……っち、面倒臭いな」
「だ、大丈夫ですか!? 苦しそうですけど!」
「うるせぇ、大体、お前のせいで疲れるんだよ。お前を持っていると、避けようと思っても思うように避けれないんだよ」
ん? という顔をすると説明しだす。
「はぁ……ちゃんと説明すると、俺のスキルは自分の体力を炎として具現化させ、ものや武器を創り、攻撃するんだ。空に飛んでいるのもこの炎で壁を作り、それを動かしているんだ。だが、どうしてもお前がいるとやりずらい」
そういうことか。
俺という縛りがあってうまく立ち回れずに戦えないのだ。
なら……
「俺の方は大丈夫です! 自分でなんとかできます。ここからおろしてください。できるだけ逃げ回るのでその間に倒してください」
「お前におとり役をやらせようというのか」
「そうです」
少し悩みながらこう答えた。
「それもいいかもしれないが……ダメだ。お前にこいつの攻撃は避けれない。一発当たって退場だ。無駄死にもいいところだな」
「でも……それじゃあ……」
「今回に限っては仕方がない。お前のような奴と一緒にいるなんてことはあまり好きではないのだが……共闘といこう」
「共闘……」
「お前も一応は魔法を使えるんだろう。レインさんから聞いている。俺がよけながら攻撃を放つから、隙をついて、お前も攻撃をしろ。一人じゃなく二人で攻撃した方が楽に倒せる」
どうでもよさそうな感じで言う。
それにしても共闘か。
俺の攻撃はゴブリンに聞くのだろうか……
「……わかりました。やりましょう。共闘しましょう」
「そうか、なら攻撃開始といこうか」
「いや、その前にちょっとだけ……」
俺はラグナロクに抱えられながら、下をみる。
やはり、そこにはミクがいて、俺を追っかけていた。
結構な速さで逃げているはずなのに追いかけて来るなんて……凄いな!
声をかける。
「……おーい、ミク! 聞こえているか?」
「聞こえているわ! 安心しなさい、いますぐ私がそこから助けてあげるわ! ラグナロクとかいうやつをぶっ倒してね」
大声で俺とミクが言い合う。
すると、ちょっと怒った感じの声でラグナロクが言ってくる。
「何言っているんだ、あのガキは……」
「多分、俺がラグナロクさんにとらえられていると勘違いしているんですよ」
「ふざけやがって……」
あはは、と笑っていると今後は右に避ける。
「なんか、怒りがこもってませんか!?」
いきなりすぎて、びっくりした。しかも相当な速度でだ!
お腹がくぅ……ってなって変な感じだ。面白くないかといえば面白いけど。
「別にそんなことはない」
「嘘ですよね!?」
ってそんなことやっている場合じゃない!
これは戦いなのだ。早くミクに伝えないと……
「おーい、ミク! 俺はとらえられているわけじゃないんだ! 俺はラグナロクさんと共闘する。あのゴブリンと戦うんだ。だからお前はグランさんと一緒に逃げてくれ!」
「共闘って……ダメよ、そんなの。私も手伝うわ!」
「手伝うっていってもなにするんだよ!」
「また来たか」
話している最中で攻撃がくる。
普通の人なら話している時には攻撃してこないが、こいつはモンスター。
そんなこと関係なしなのだ。
「おい、早くしてくれ。攻撃され続けているんだが」
「わかってますよ! ……ああ、もう。ミク! とりあえず、死なないように気をつけろよ、後はなにしててもいいから!」
「わかったわ!」
そういってミクと話をやめ、集中する。
ミクなら一人でも大丈夫なはずだ。
これまでもそうだったし。なんなら俺よりもミクの方が強いし。
「――エレクトロ!」
まずは安定のエレクトロから入る。
当たるが、止まることはなく追ってくる。
全くといっていい程、効いていないようだ。
そして、ラグナロクはまたもや大きな槍を完成させていた。
「ジャッジメントランス!」
飛ばすが、俺と同じく効いていない。
どうしたらこいつに攻撃が入れれるんだよ!
化け物が!
「うあああああああああああ!」
雄たけびと共に、右のストレートパンチが飛んでくる。
髪をかすれた。あぶねぇ。
「ラグナロクさん!」
「なんだ?」
「麻酔とかって効くと思いますか? あれ、倒すよりも一旦眠らせた方がいい気がして……」
これの方が完全に現実的だ。倒すんだったら、眠らせて被害を完全になくしてその後、ちゃんと準備をしてから攻撃の方がいい。
「それならもう試した。言っただろ、具体的に作れるんだ。麻酔もその一つだ。フレイムバレットでなんども打ったが、毒も麻酔も利かなかった」
最初に弾丸を打っていたのはそれが理由なのか。
じゃあどうしたらいいっていうんだよ。
こっちの攻撃は全然ダメだけど、相手の攻撃を一度でも受けてしまえば、ゲームオーバー。
なんという絶望的なゲームなんだろう。
勝てるのかよ!?
まあ、それでも攻撃するしかない。
詠唱を唱える。
「我が清廉なる紅蓮の炎。壮大なる青き炎よ。この大地を破壊し、敵を駆逐すべく、我がこの手に莫大なる力を! フレイムバースト!」
中級魔法ならどうだ。
「うあああぅぅぅ……」
一瞬、攻撃がやむ。なにやら腕を抑えて、うずくまった。
あれ……なんか効いている感じがする。
もしかして、中級魔法なら効くのか!? そういうこと!?
…………いや、待て。それならおかしい。
どうして俺の中級魔法なら効いて、ラグナロクさんの攻撃は効かないんだ?
俺の方が攻撃力が弱いのに……
疑問が浮かび出て来る。
炎に耐性がないっていう可能性もあるけど、そんなこと俺の目にはなかった。
スキルじゃないなら単なるステータスか?
それならどんな攻撃にも耐性がつくはずじゃないか。おかしいだろ。俺の攻撃が通なんて……
考えるが、わからず、もう一度よく見てみる。
腕、腕、腕……なんかあるような……ないような……
あ。
俺は腕もある部分を発見する。
最初から知ってはいたが、忘れていた場所。
俺が、傷つけたゴブリンだとわかった場所。
それは……
火傷の痕だった。
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