第7話 冒険者になりたい

 朝になった。

 今日は家もないので野宿した。適当なところで腰を下ろすと疲れていたのかすぐに眠ってしまっていた。


 初めて野宿したってこともあってか凄く腰が痛い。

 怪我は特になかったけど、止めて欲しい。


「荷物は持ったのか?」


「持ったよ、爺さん。ありがとな」


 行く準備はもうできている。

 荷物といってもほとんどが燃えたのでたまたま置いてあったちょっとした食料とちょっとしたものしかない。

 まあこれでも十分だろう。


「気を付けて行くのじゃぞ。その地図通りに行けば、町に行けるからな。わしたちはここから少し歩いたところに知り合いの家があるからとりあえずはそこを目指す。なにかあったら戻ってくるのじゃぞ」


「わかってる」


「それから……それから……」


「もうわかったから! 大丈夫だって!」


 どんだけ言ってくるんだ。

 心配性かよ!? いや、嬉しいんだけどね!? ちょっとしつこいだけで!


「そ、そうか。なら、頑張るんじゃぞ」


「うん……」


 でも、なんだかこれで少しの間お別れってのは寂しい。

 最初は一人で行こうとしてたけどミクがついてこれることになってよかった。

 多分、一人でだったらなんか寂しくてどうにかなりそうな気がする。


「そういえば、ミクは? あいつどこ行ったんだよ」


 さっきから全然、見かけないんだよな。

 もう出発するって言ったのに。


「ああミクじゃったら……」


「おまたせ……ちょっと待たせたわね」


「……え!?」


「なに驚いちゃったみたいな顔してるのよ」


「そりゃ驚くさ! なにその変な剣。どこにあったの!?」


 小型のナイフ2本を腰ある袋につけている。

 鋭そうなそのナイフは少しカッコイイと思う。


「お父さんに武器とかあるか聞いて、もらったのよ。魔獣が少ないっていっても今回みたいにまた来られたらたまったのもじゃないわ。準備しておくのが賢明よ。ほらあんたも一つ上げるわ」


「マジで!? よっしゃ!」


 テンションが上がってきた。

 武器ってなんだか憧れるよな。カッコイイ!


 ミクから小型のナイフ1つとそれをしまう袋を受け取った。

 早速腰にナイフをつけてみる。


 ……ふむふむ、確かにこれは料理用とはちょっと違う気がする。

 獲物を殺すためだけに作られた感じだ。逆に調理とかは出来ないだろう。


 それに前までは武器なんてなかったから素手だったけど、これからはナイフがあるから多少はなんとかなりそうだ。

 ナイス、ミク!


「……これで全員準備が整ったわね。いよいよ出発の時間だわ」


 辛そうに言う。

 こいつもなんだかんだ寂しいのだろう。

 

「2人とも頑張るのじゃぞ」


「ファクトお兄ちゃんもミクお姉ちゃんもどっちも頑張ってね! 私、応援してるから!」


「僕も応援してる!」


 3人から励ましの言葉をもらう。

 

「サンキューなお前ら。絶対また戻ってくるからその間お前らも頑張れよ!」


「「うん!」」


「それとファクトもう一つお前に言っておかなければならないことがある」


「なんだよ、そんなにかしこまって。どうかしたのか?」


「……いうべきは迷っていたが、言うことにしよう。……まだファクトたちが来る前。もう一人この孤児院にはいたのじゃ」


「え? この孤児院にもう一人いたのか!?」


 嘘だろ……

 信じられない。初めて知ったぞそんなこと。


「名前はクロロという。15年前にファクトと同じく10歳で出て行った。この孤児院はあいつのために作ったのじゃ。だが……」


 そいつのためにこの孤児院を作ったのか。

 だけど15年前ってことは俺は会ったことはないらしい。一体どんな奴だったんだろう。少しあってみたい。


「……出て行ってからずっと音沙汰がない。全くじゃ。どこで生きているかもわからない。だから、どこかで見かけたら教えてくれないか」


「わかった。ついでに探してみるさ。じゃあミク、行くぞ」


「うん、みんなじゃあね。また今度会いましょう」


 そのまま別れ、俺たちはまっすぐ道を進んでいく。

 この通りの道なりに進めばとりあえずは町につくらしい。

 最悪わからなくなった時用のために地図も貰っておいた。


 地図を見ると、俺たちが向かう町はフールという場所らしい。

 なんか変な名前だよなとか思いつつ歩いていた。


「……ねぇファクト、今日中に町に着くと思う?」


 いきなり聞かれた。そういわれてもな……


「どうだろ……ここからどれくらい離れているか知らないし、なんとも言えない気がする。最悪野宿する場合に備えて食料とかはどこかで採取とかしたい」


 食べ物を自分で確保したことはないが、少し前に本で食べれる植物の種類を見たことがある。

 多分確認さえできればわかるだろう。


 ……ありがとう本!

 ちなみに全部焼けちゃってもうなにも見れないんだけどね!


「そうね、確かにその通りだわ。どこかで水も取りたいし……ってそう考えると自分たちで生活するってこんなにきついのね…。初めて知ったわ。もっと楽かと……」


「それな。爺さんがよくもまあ食べ物とか用意できたって感じだ。普通に凄い

ぞ!?」


 尊敬に値するよ、ホント。

 本人には絶対言わないけど。


「それで本題なのだけど、職業はどうする気なのよ。あっちに行っても職につけなければすぐにお金も尽きて追い返されるわ。……そしたらこの計画は終わりよ、終わり。しかも私たちはまだ10歳だからあまり職に就きずらいし……」


「それなら俺に考えがあるから大丈夫だ」


「考え?」


 俺はうなずき、話し出す。


「まず普通の職業……建築とか商業とかそういうのは子供にはできないから相手にされないのはわかってる。だけど、たった一つだけ年齢とか関係ないものがある」


「なによ……それ」


「冒険者だ」


「ぼう、けんしゃ?」


 なにも知らなそうに首をかしげた。

 まあ知らないのも当然か。俺も本で見て知ったものだし。


「冒険者ってのはこの前出た魔獣とかを討伐する仕事のことだ。これは年齢とかは関係ない。完全に力があればできる」


「それってもっと難しいってことじゃない!? あんたってやっぱり馬鹿なの!? いや馬鹿でしょ!」


「馬鹿じゃないから! ていうか大体そんなに言うならミクが意見出せよ。どうせ、なにも浮かばないくせに」


「あら、私にも考えがあるのよ。まずは町に行くでしょ。そしたらモテて、告白とかされるじゃない。そしたらお金を稼いでもらえばいいでしょ」


 自信に満ちた顔つきで言う。

 なんていえばいいんだろうか。


「……お前ってたまにそういうところあるよな」


「そういうところってなによ!?」


「ま、とにかく。俺たちは冒険者になることは確定してるから。そもそもそのために行くって決めてたから!」


「……じゃあ一旦はそれってことにしておくわ。ダメだったときは私のプランを採用するわね」


「それだけは絶対やめろ」


「なんでよ!」


 俺は魔法とか色々もっと知りたい。

 それに冒険者って響きとそのカッコよさに憧れてた。だから、俺も成りたいと思った。

 

 町についたら本ももっと読みたいし……あれ、なんだかワクワクしてきた。

 早く着かないかな!

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