第59話 他者排除型の才能を開花させたい ステップ9 ヤンデレ開花への一歩か
僕はいきなり腕を掴まれたことで、頭が混乱していた。彼から距離を詰めてくるなんて、と一瞬頭がフリーズする。
そんなことはあり得ない。これまでの経験から考えて、そんなことはあり得ない。
どういうこと?急なるデレ?それはやぶさかではないけど、、じゃなくて!
僕は頭を振り、混乱する脳内を整理すると、和田に話しかける。
「どうした?なんか用?」
冷静さを装い、話しかけながらも動揺は収まらない。どうしたらいいんだ?
頭はフル回転。
なんで呼び止められてるんだ?やっぱり怒ってるってこと?わからん!
でも、どう考えたって、和田から僕に話しかけることは無理。これはもうこれまでの経験でわかる。絶対に無理。だから、僕から声をかけたことは正解なはず。
しかし、彼は何も言わない。
あぁ!どうしたらいいんだ。
移動教室用の教室しかないこの辺りには、三者面談時には誰も通らない。
その静寂が余計、僕を不安にさせる。
彼がなにを伝えたいのか全くわからない。はっきり言って、悪態をつくなら早くしてほしい。
これまでの経験からすると、悪態をつくか、無視されるかの二択。つまり、呼び止められたことで悪態一択になっているわけだ。
なのに、彼は何も言わない。
やめてよ、呼び止めた責任は取ってほしい。
そこから何分経ったのか。体感では1時間は軽くなっている。
どうしたらいいんだ。頭を必死にフル回転させる。腕を掴まれている以上、何もせずに振り払うわけにはいかないし。
そう考えていると、彼が口を開いた。
「なんでも、ない。はやく行きなよ。三者面談」
え?なにそれ。
和田はそれだけ言うと、掴んだ手を離し、来た道を戻ろうとする。
いやいや、待って。
絶対なんでもないわけないじゃん。
なんていうか、わかんないけどこのまま戻れるほど僕は鈍感じゃないし、馬鹿じゃない。
僕は夢中で、彼の腕を掴む。
え?と驚いた顔を見せる和田。さっきとは全く逆の状況。彼は、驚いていると同時に、逃げ出したいような表情を浮かべている。
いや、離さないから。だって、君が僕に示した初めての意思じゃないか、その行動、無駄にはさせない。
「なんていうかさ、僕成績悪いから三者面談行きたくなかったわけ。でも、和田はいいよね成績いいしさ、」
僕はとりあえず捲し立てる。
正直、和田がなにを伝えたかったのかは全くわからない。怒りたかったけど言葉が出てこなかったのかもしれないし、それは和田にしかわからない。
でも、僕はヤンデレの才能を持った人の勇気はどんな形であれ生かさないといけないと思ってるから。
なにを言ったか覚えていないぐらいに、僕は捲し立てた。しかし、これ以上話を広げようとすると、僕は自分の先程の恥と共に、酷い顔をしていたという、もしかしたら勘違いかもしれない、勘違い野郎感を出さなければいけなくなってしまう。
でも、もう止まれない。どうすればいい?
そんなことを考えていると、
「もういいって!早くいけよ」
と、今までにない大声で言われた。
そこで、僕の意識は戻ってくる。
はっ、今までなにをしていた、ってそこまでじゃないけど。
和田はいつも通りの悪態をつくと、来た道を戻って行ってしまった。
意味のわからない時間を過ごしてしまった、、
、、って三者面談!
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