第47話 次の日のテスト勉強は(彼女目線②)

「とりあえず、みんな座ってこ」


中心的人物が声をかける。みんな、

「どこ座る?」「隣座らない?」

と言いながら、続々と席に着く。


え?どうしよう?

私は完全に波に乗り遅れてしまった。どうしよう、どこに座ろう…。彼の近くに座りたいのに!

そう思い、彼をキョロキョロと探すとなんと彼は私の近くにいるではないか!

やった!じゃあ彼が座ったらその近くに座ればいいや、と思っていると、


「あ、杉ちゃん、何してんの?ここ座ろー!」


友達がいきなり来ると、私を強引に席に座らせてしまった。

やだ!ちょっと待って!

彼女はきっと私が遠慮してどこに座ったらいいかわからないと思って座らせてくれたんだろう。

いや、そうだろうけど待って!私高城君の隣に座りたいの!


席に座らされながら私がそう思っていると、誰かが私の隣に座ってきた。

ちょっと待って誰だか知らないけど、そこは高城君の席だから!

キッと隣を見ると、なんと彼ではないか!

私は驚いて少し呆然としてしまう、

やだ、ごめんなさい。というか、私の隣を選んでくれたんだね。

やっぱり彼も私と話したいと思ってくれていたんだ。やっぱりね。


勉強会は順調に進んでいった。みんな話しながら勉強を進め、時々休憩したり。

結構いい雰囲気。これなら私も彼に話しかけられそう。

でも、なんて話しかけよう。やっぱり勉強関係がいいよね?この問題とか?でも、これ簡単だし、聞く必要ないよね?バカとか思われたくないし。

でも逆にこの問題は難しすぎて彼がわからなかったら恥ずかしい思いをするだろうし…。

そんなことを考えていると、


「ねぇ、これってどういう意味だと思う?」


と彼が話しかけてくれたのだ。

あ、話しかけてくれた。嬉しい!私のこと忘れてなかったんだ。

私たち以心伝心だね。

でも、私だけのあなたじゃなくなったことはなんとなく気づいているの。

だから、あなたのまく餌にほいほい食いつくような真似はしない。私だって変わったんだから、あなたにばかり主導権を握らせはしない。

あなたにも私を追いかけてもらわないと。

だってあなたにも夢中になってほしいから。


にやける気持ちを抑え、なんとか平静を保つと私は彼に勉強を教えた。

教え終わると、私は彼との話を遮るように勉強に身を置いた。

ほら、私だって変わったのよ?だからいつまでもあなたにばかり執着していると思われたくない。

あなたの方からまた話しかけてほしい、話を引き伸ばしてほしい。


しかし、そんな私の思いとは裏腹に彼は私に再度話しかけないばかりか他の人に話しかけようとする、他の人から話しかけられ嬉しそうにしている。


なんで?

あなたは私と話したいはずでしょう?

他の人とはいつだって話せるじゃない。私とは今じゃないと話せないかもしれないんだよ?

そう思うともう止まらない。彼が誰かに話しかけたらその話に入る、誰かが彼に話しかけようとしたら私が先に話しかける。

気がつけば、もう外は暗くなり勉強会は終わりを迎えようとしていた。


みんなざわざわともう帰るかーと言いながら片付けをし始めていた。

え?私、全然勉強進んでないんだけど!

私は彼を他の人から遠ざけることに必死になりすぎて、後半はほとんど勉強ができていなかった。

いや、何のために出席したの!馬鹿すぎる。

そう思っていると、


「じゃあ、またね。明日も出席するでしょ?」


彼からそう言われた。

え?うん。もちろん。まぁ、そうよね。私の今日の目的は彼と話すこと。勉強なんて二の次。

あーあ、今日出席してよかったな。

また明日も彼の隣を死守しないと。

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