第15話 独占型の才能を開花させたい ステップ4 仲良くなって少しのスパイスを
さぁ、いくぞ!
今、話しかけるしかない。今が絶好のタイミング。
「ねぇ、それってパピぷニューギニアのライブキーホルダーだよね?」
と僕は話しかけた。
うぅ、やっぱり初めて話しかけるのは緊張する…。頼む!答えてくれ。
彼女は驚いていたが、すぐに笑顔になって、
「そう!知ってるの?」
と答え、パピぷについて怒涛に話し始めた。
中学生の時はまっちゃってさ、そっからずっと好きなの
どの曲がすき?私はね、『隣の芝生が青って緑やろ』!
やっぱりいいよね、メロディーもいいけどやっぱり歌詞ね、センスがあるよね
よかったぁ、答えてくれた。
無視されたらどうしようかと思った。
それに、思ったよりも効果がある。この話題で反応が薄かったら打つ手なかったしな。
多分、バンドの話題なしに、しかも今のタイミングでなければ、僕みたいなフツメンは相手にされなかっただろう。
きっと軽くあしらわれ、仲良くなるきっかけも掴めなかったに違いない。
彼女の寂しさが僕を受け入れる空間を作ったのだ。
ありがとう、彼氏。
それに、彼女の純粋な笑顔がみれてよかった。
やっぱり笑顔は可愛い。
彼女は、才能がほぼ開花されているといっても過言ではない。
しかし、彼女は現在ヤンデレではなく、メンヘラ気味。
彼女に大切なのは、自分が愛を求めるばかりでなく、相手にも愛を与えたいと思う慈しみの心。
その才能を開花させることができれば、開花している才能と相まって彼女は最高の独占型ヤンデレになれる。
しかし、彼女に寂しい思いをさせる彼氏は良くない。全く、何をやっているんだ!彼女はヤンデレの才能をたくさん秘めているというのに。
まぁ、しかし、彼女の才能が開花すれば、彼女の魅力に彼氏は魅了されるに違いない。
ヤンデレに魅了されない人間はいない。
そうすれば、彼女は悲しい思いをしないはず。
つまり、それはヤンデレが幸せになるということ。最高!
では、彼女の慈しみの心を開花させるために僕はどんなスパイスを加えるのか。
そう、僕が考えたスパイスは、
とりあえず彼女のお願いを聞く、
ということ。
どういうこと?という感じかもしれない。しかし、まずは僕がなんでもお願いを聞くというポジションになることがまず第一のステップ。
そして、それが続いた後、僕が誰かに何かを要求して、お礼を言っている場面を見せる。
そしてその時に僕がとても喜んでいるような様子を見せるのだ。これが第二ステップ。
つまり、彼女には、相手に何かを要求するだけでなく、何か自分が行うことで相手を幸せにすることができる、といった他者目線を感じてもらいたいのだ。
そうすることで、彼女は要求するだけでなく、相手に何かをして、相手の素敵な顔が見たい、と言った慈しみの心を生み出すことができるだろう。
多分。
僕はこの考えのもとに、彼女とたくさん話をすることができるよう働きかけた。
しかし、僕が彼女に話しかけなくとも、彼女はパピぷのことで心が綻んだのか、初めて話した日のみならず、さまざまな場面で僕に話しかけてくれるようになった。
朝の挨拶、合間の休み時間、昼休み、放課後…気がついたらほとんどの時間彼女と一言以上は交わしている自分に気がついた。
コミュ力強い人ってすごいなぁ。
僕には絶対にできない。ヤンデレを生み出すという使命がなかったら、異性と話すのだってちょっとなぁ。
話しかけられたらすぐに応じ、言われたことは素直に受け取り、要望を聞く。
僕は彼女にとってそれは便利なモブ男となったことだろう。
あぁ、そうだ、これもやっておかないとな。
危ない、危ない。
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