偽善さん

牛朱

第1話 始まりは晴天から

「降って無いじゃん。雨。」


スーパーから出て見上げると、太陽がさんさんと輝いており雲一つ無かった。華さんに「帰りに雨が降るらしい」と渡された赤い傘は、ただの邪魔な荷物と化した訳である。

両手にはレジ袋。背中にリュック。全てに、スーパーで買った日用品が詰め込まれている。


「急に呼ばれて何事かと思ったら、まさかの[おつかい]って……。光は勝手に出かけて華さんとイツキとあかりは女子会、だとしても無所属の俺に頼むか普通……。」


久々の休暇だし、全力で楽しんでくるわ!

とかなんとか華が言ってたことを思い出す。

光も出かけちゃって、今 暇な人がいないんだよね。君なら信用できるし、絶対暇だよね?お小遣いは出すから。って訳で、頼んだ!

とも言われた。


俺の名はタク。ヒーローであり、結構有名人だったりする。

人気ランキングは二年連続最下位で、まぁ、とてつもなく嫌われている。だから今も……


「ねぇ、あれ……」

「え?うわ!偽善じゃん。ばったり会うとか最悪……」


普通より聴力が高い俺にその悪口はしっかり聞こえていた。まぁ、それ相応 いや、それ以上のことをした自覚はあるし、昔は石を投げつけられるなど日常茶飯事だったのだ、

(ナイフで刺されるとか、殺人未遂に発展したこともあったっけか)平和になったんだなぁとのんびりそう思った。

そんな時だった。警告音が鳴り響いたのは。


「っ!?」


いきなりだが、この世界には魔法がある。

モンスターも生息しているし、『超人のような肉体を持った頭の寂しいおじいさん』なんて普通にいる。

だから、そこら中にあるサイレンには二つの意味があった。一つは、地震や巨大バッタの大群などの災害を警告すること。二つ目が人間による事件を警告し、ヒーローを集めることだ。今回は後者だった。機械的な声が叫ぶ。


「――駅の近くで謎の結界が確認されました。中には大勢の民間人が取り残されている模様です。ヒーローの方は至急集まってください。――」


走ろうとした。けど、動きが一瞬止まった。

次の言葉で俺は混乱していた。


「尚、主犯はヒーローの有岡 光、

 通称『パイライト』であるということが

 判明しています――』


感情のこもっていない、けど確かに友人の名前をそれは告げていた。

ちょっとまて、たしかに勝手に出かけて行ったと華が入っていたが……。声が震えた。

無意識に呟いていたことに 今 気付いた。


「どうして、光が――?!」

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