ぽっちゃり体型は必須アイテム。それ以外はお断り。
ポカポカ妖気
第1話 大好きなの!
私はどこにでも居るような普通のOL金田美鈴24歳独女。
仕事はそこそこ、人付き合いもそこそこ、容姿もそこそこの全て平均値の様な人物だ。
そんな私にも少し他と違うモノがある。それは異性への好み。
みんなは身長が高く程良く筋肉が付いたイケメンが好きと言うけれど私の好みは少し違う。
イケメンなんて大嫌い。私はぽっちゃり型普メンが大好きだ。
内向的な性格なら尚良し。色々尽くしたくなるじゃない?
私が普通だからイケメンに相手にされない僻みじゃ無いかって?
それは1ミリも無いから安心して。
好みは人それぞれでしょ?
人の好みに口出ししないで!
おっと、そう言っている間に来た来た、私の推しメンの彼が。
うちの会社へ営業で来る近藤マサルさん27歳。
私の見立てでは、推定身長180センチ、体重120キロ超のぽっちゃりどストライクな体型。
しかも顔はインパクトの無い黒縁眼鏡の薄口醤油顔でイケメンじゃない!(これも高ポイントよ)内向的な眼鏡男子。
もうこれは行くっきゃ無い。
仕事の話しも程々にディナーに誘ってみる。
「今晩、一緒にお食事なんていかがですか?」
言ったぞ私。
さぁ返事は?
「えっ、、えぇ。僕で良ければ、、、喜んで。お店は、、、僕が見繕います!!、かっ金田さん。」
顔を真っ赤にしてOKの返事。
きた~、内向的な彼がこの反応!!
これ脈アリじゃない??
早速個人携帯の番号を交換する。
ついでに無料通信アプリのRainも交換し合う。
コードを読み込む時ワザと手に触れちゃった!!
あっ、また赤くなってるー。萌!!
「、、店、、は後でRain、、で送ります。。。」
じゃあまた後でって一旦お別れ。
〈四時間後〉
さぁ定時で終わったわよー。
身嗜み整えて、お化粧も直していざ出陣!
えーっと、あったあったこのお店。
あらここデカ盛りのお店じゃない。
なんてデートに向かない、、、所。
こんな所を選ぶマサルさん、、、ナーイス!!
好感度アップよ!
飾らないありのままの自分の行きつけに誘うなんて、既にパーソナルスペースに入っちゃったわ!
そして、とうとう彼が、近藤マサルさんが来たー!!
ーーーー?!?
「やぁお待たせ。ふふっ、僕の容姿の変わりように驚いたかい?
これか本当の僕さ。」
眼鏡を取ると!!
イッ、イケメンだと?!
マサルさんは実は、、、いや、違う!!
背丈は同じで眼鏡を取った顔は何となく面影が有るけれど、これだけは断言できる。あのポチャ体型は偽物だ!
あの体型は作ったもの。コートの下に何か入ってる!!
それを指摘すると
「あっ、バレた?
まあバレるよね。あんなデブブサ野郎とこの俺を間違えるはず無いわな。」
そう言う成りすましイケメンは髪をかきあげ話しを続ける。
「実は俺、マサルの兄でさ。
あのデブブサが女と番号交換したって聞いて興味湧いたんだわ。
そしたら取引先の金田嬢だって言うじゃん!!
こりゃ俺が行くしか無くね?って。
へへっ金田嬢も嬉しいっしょ?
あいつデブブサでキモくても社長子息って肩書きで近づいたんだろ?
安心しな、この次期社長(候補)であるイケメンな俺が代わりに相手してやるから。」
肩に腕を回してくるイケメンに鳥肌が立つ。
やっぱりイケメンに碌なの居ないわ。
ってか黙って聞いてりゃ勝手なこと言いやがって!!
「私はマサルさんが好みなの!!好きなの!ポッチャリ型内気男子以外興味ありません!
自分大好き俺様イケメン様はお呼びじゃない!!」
そう伝えてから腕を掴んでデカ盛り店に向かって声をあげる。
「テンチョー、この人デカ盛り道場破りするってー!早速特設リンクに連れてって。」
「アイヨー、らっしゃい。道場破り入りやーーす!!!
ウチのデカ盛りナメんじゃねーぞ!!
食べ切れたら年間無料パスポートプレゼント。ギブなら店内のデカ盛りハンターどもに奢りだかんな!」
こうして俺様イケメンさんは無事店内に消えていきましたとさ。
私は振り返り電柱を見る。
「全部聞いてたよね?
で?あなたはどうしたい?」
電柱の影に隠れている(全然隠れていない、萌)人物に聞いてみる。
その人物、マサルさんは私の前に出てきた。
そして下を向いたまま言葉を絞りだす。
「ーー兄を、止められなくて、すみません。いや、僕が金田さんを、、信じて無かった、んです。
僕の社長子息って肩書きを見てるって言われて、、、僕は、、ごめんなさい。うっ、うっ。」
そう言いながら鼻水を垂らし泣いていた。
そんなマサルさんを見ながら私が思ったことはただひとつ。
萌ドストラーーーイク!!!!
あのぽっちゃりで貫禄ある体型なのにウジウジしちゃって、、、サイコーーーー!!
鼻血出そうだわ。。
いえ、だめよ、美鈴我慢よ。
ここは最大のチャンスなんだから。
弱みにつけ込んでマサルさんをゲットよ!
「ダメ、許さない!
だから、ーーー私と付き合いなさい!!
返事は??」
詰め寄るように返事を求めると赤べこのように頷何度も頷き、、、
「ふぁいっ!お願い、しますぅっ!!」
声が裏返りながらも返事をしてくれのだった。
よっしゃ、もらったーーー!!
こうしてお付き合いをすることになり、私は幸せな毎日を過ごしていた、、、そうーーー過ごしていたのだ、が、、。
〈1年後〉
「美鈴さん、僕と結婚して下さい。必ずあなたを幸せにします。
残りの人生、僕と共に歩んで下さい。」
そうプロポーズをしてくれたマサルさんの方を見る。
そこには180センチ超、程よく引き締まった体型のーーー笑顔が爽やかなイケメンがいた。
いやいやいや!まさかこうなると思わないじゃない!
この一年間を振り返る。
最初のうちはいつも挙動不審で、私が幸せを噛み締めながら世話を焼いたものだ。
『自信がない』
『僕なんて』
という度に
『貴方はできる人よ』
『貴方は魅力的なの』と
高揚する気持ちを抑えながら慰めていた。
そんな日々の中ーーー
いつの頃からだろう。
そんな後ろ向きな言葉を言わなくなったのは。
それと同時期位から体重が減ってきていたと思う。
『もっと食べなくちゃダメよ。』
と言っても
『貴女に相応しい自分になりたいんだ』
と言われれば、《強がっちゃってキャワイイ!!》と止める事ができなかった。
その頃の自分を殴りたい!!
とまあそんな感じで、、、マサルさんはダイエットに成功し、お肉に覆われていた顔もそれが無くなればスッキリイケメンフェイスでした、、と。
性格も前向きに変わり、そして言動はジェントルマンに進化した、、と。
ということで現在プロポーズされているわけだが。
私の答えは決まっている。
「ごめんなさい。
私ぽっちゃり型普メンが好きなんです。なのでお断りします。
マサルさん、折角身も心も爽やかになったんだから私みたいな普通な人よか、もっと素敵な人と結ばれて下さいね。」
そう伝えて席を立つ。
マサルさんのことは嫌いじゃない。
だけどだけど!、、、やっぱり私はぽっちゃり普メンが良いの!!!
私はどこにでも居るような普通のOL金田美鈴25歳、独女。
仕事はそこそこ、人付き合いもそこそこ、容姿もそこそこの全て平均値の様な人物だ。
そんな私は、自分好みのぽっちゃり型普メンを今も探している。
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