ノーゲーム・ノースローライフ②

 牧場ほのぼの系スローライフゲーム【牧場自給ヒストリー】の最新作をプレイ。パソコンのマウスからゲーミングコントローラーに変え、新しくはじめるという項目を押してスタート。初心者モードと通常モードの二択で通常モードを選択したのち、性別は女の子、名前を愛称であるベーちゃんとして、容姿のカスタマイズに移る。


『ほおほおへぇー……髪型におめめ……かなり種類が豊富ですねー。なるべく私に近付けたいけど時間かかりそうだね、みんなからのアドバイスも貰いたいなー。例えば髪型何ページの左上、みたいな感じでお願いします。あっ、このゲームを選んだ理由とかも言わないといけないよね?』


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みたらし団欒 〈ベーちゃんにピッタリのゲーム選択だと思います〉

狐っ子 〈髪型はミディアムくらいだから最初の方のページが良いかな? 二ページ目の真ん中とか、もちろん色は金色〉

縦辺 〈クリケットじゃなかった……でもこのゲームはのんびり視れるから嬉しい〉

北の海 〈獣耳は流石にないか〉

狐っ子 〈青い目はあるのかな?〉

フラ太郎 〈理由気になります〉


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『私に合うっ! ありがとうございます。おっと髪型……これですかね? 確かに私のヘアスタイルに近いですっ、金髪はマストっ決定っ! ちょっとテンションがおかしくなっちゃったかな。ああ……クリケットのゲームも考えたんですけど、最初のゲーム配信でルールを全然知らないスポーツゲームをプレイするのは失礼かなと思いまして……すぐには難しいですが必ず配信しますっ! そのときはもうお手柔らかにお願いしますね。うーん、獣耳は無いですねー……もしかしたらゲームを進めていってコスチュームチェンジとかであるかもですかね? 目は青、了解です。このゲームの理由……ちょっと私的で長くなるかもですけどいいかな——』


 そう前置きをして、私はコメント欄を確認する。他のカスタマイズの要望に加え、理由が長くても構わないと言う意見が多く、分身の女の子の表情を微調整しながらこのゲームを選択したことを語ろうかな。


『——私の家系に農家の人が多いから、あと出身が北海道で、子どもの頃から広大な土地の自然に触れる機会も多くてですね、よく作物の収穫を家族で手伝っていた記憶が今でも鮮明にあるんですよ。にんじんを抜こうとして思いっきり尻餅だけ着いて抜けなかったとか、とうもろこしを焼かずに生で食べたりとか、てん菜っていうカブのような見た目の作物と一緒に撮った写真があって、私は天才だって見せびらかしながら吹聴して回ったりだとか……あとはそうだね、私の幼馴染みに家族がお店を開いている子がいるんだけど、その子の家にお裾分けに行くと毎回遠慮して、そのあとに絶対嬉しそうに受け取ってくれる姿が好きだったからかな。こういうのも農作物の良さの一つだよね、まあ私はあんまり知識は無いんだけどね……だからゲームっていう形だけどやってみたいなって昔から思っていました、それが理由ですっ』


 それはいくつもある私が子どものときのエピソードをつまんだもの。上手くみんなに伝わっているのか分からないけど、興味を持ってもらえると嬉しい。


 一人語りの間に北ノ内 べいかに限りなく寄せたキャラクターのカスタマイズを終える。続けて所有する土地の名称を自由に付けられるところで悩む。


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縦辺 〈確かに出身地的にもこのゲームが最初なのは頷ける〉

北の海 〈微笑ましいお話だ〉

北の海 〈そういえば自分もぬかるみにはまって大泣きした記憶あります〉

狐っ子 〈テンサイ? 調べます〉

フラ太郎 〈幼馴染みですか。マンガとかだとよく見ますけど、現実だとなかなかいない気がしますね〉


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『はい。やっぱりゆかりのある環境と近いゲームからかなと思いまして。ああー……私は寧ろ逆で大笑いしました、家族の方が後頭部をぶつけていないか心配になってましたね。てん菜っ、是非調べてみて下さい。一応簡単に説明すると糖を作り出す原材料の一つだったかな? 間違ってたらすみません。幼馴染み……そうかもしれませんね、実際私もずっと付き合いのあるのはその子……仮にSちゃんとしますね、Sちゃんとは入園式で逢ってからの仲で、この配信についても手伝って貰って、私が言うのもアレですけど親友と呼べる人だと思います。一番遊んで、一番ケンカもして、二人だけの秘密もたくさんあります。いやでも確かに、ちゃんと幼馴染みと呼べるのはそのSちゃんくらいですかね。なんだろうな……幼馴染みって人によって基準が違うからね。私の場合はSちゃんだって決めちゃってる状態で、そこから新たに友達が出来ても幼馴染みにはSちゃんがいるからってなるし……難しい問題ですね、目の前の土地名と同じくらい』


 今日の配信を視ているか分からないけど、流れでちょっと恥ずかしいことを喋ってしまった。いくら幼馴染みであっても親友だと告げるのは勇気がいるというか、それこそ冗談交じりでしか言ったことがないから、くすぐったい気持ちになる。あと長々と語り過ぎかもしれない。


 土地の名称を決めるための五十音画面が微動だにしていないのも、きっとそのせいだと思いたい。画面右下の北ノ内 べいかも口ばかりが動いて身体の向きがずっと変わらず、熱視線を送ってくる。


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縦辺 〈幼馴染み理論(難)〉

みたらし団欒 〈シンプルに考えると、北ノ内牧場でしょうか?〉

北の海 〈べいかストリート〉

フラ太郎 〈Sちゃん、喜びそうだね〉


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『……はい。うーん、どうしようかなー』


 北ノ内 べいかとして私は散々悩んだ末、パンが大好きであることと、コメント欄も参考にした上で名称をべいか牧場に決定。これから彼女たちのストーリーが始まる。

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