向日葵の咲く頃⑧

「あー!こんな所にいたー!」


「あ……」


しばらく夏の日差しに焼かれてる景色を眺めていると、鷲黒会長が開けたままにしたドアから、桜木さんがコチラを指差していた。


「…………」


「…………?」


威勢よく声を上げておきながら、ただ隣に来て並んで屋上からの景色を眺めだす。


さっきのは独り言というか、心の声のつもりだったのかしら……。


「えっと……さくーー」


「あのね、なんだか、懐かしく思っちゃって」


「懐かしい?」


「うん……」


声を掛けようと思ったら、遮って話し出して、繋げようとしたら、今度は話を切られた。


なんなのよ……。


仕方なく、2人でしばらく景色を眺めた。


けど、落ち着かない……。


「あの……そろそろ良い?」


「いや、それ私が言いたいんだけど!?」


「あ、あれ?」


なんで、あなたが困惑してるのよ。


「前に私が葵ちゃんみたいにしてたら、ただ傍にいてもらったことがあって。その時の真似をしようとしたんだけど」


「あのね……私はあなたじゃないわ―――よ……」


あ……。


言い終わって、ゴトン、と何かが私の中で落ちた。


そうか、そういう事ね……。


「あ、えっと、これは、あ、あれで……――」


「ふ、ふふふふ……あは、あははははは!」


「あ、葵ちゃん?」


突然笑いが込み上げてきた。


久しぶりに、それこそ何年かぶりだろうと思うくらいに、お腹を抱えて笑いたくなった。


ひとしきり笑った。


隣で桜木さんが心配にそうにしてるけど、何も気にならない。


心が何かから解放されて、私の中で何かが変わり、見えている世界はとても色鮮やかに染まりだす。


こんなに、眩しかったんだ……!


「ふぅー、暑いねっ」


「ふぇ、あ、うん、暑い……ね?」


「うん、戻ろう」


「ど、どこに?」


「練習ー!」


そう言いながら、私は屋上のドアに向かって走り出す。


「練習、今日はもう終わったよー!」


「あ、そうなんだ!」


「もう……だから探しに来たんじゃん……」


隣に追いついた桜木さんと目を合わせると私はまた笑った。


桜木さんもつられて笑い出す。


夏の太陽に照らされて、金色の髪が輝きながら笑う彼女を改めて綺麗だと思った。


素直にそう思えるようになった。

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