第11話
バギィィィイイイイ!
俺の拳が骨を砕く音が静寂の通路に鳴り響いた。
「よし……これでやっと十体だな」
俺は今さっき倒したばかりのボーンカトラスソルジャーの骨の山から銀貨を二枚拾い上げた。
アプリナの町についてからおよそ三ヶ月、俺は骨のモンスター達を拳でひたすら倒す生活をおくっていた。
ボーンカトラスソルジャーは海賊が使うような曲がった剣を持った骸骨兵士だ。骸骨というだけあって人間的な動きができるのが厄介だが、曲刀は錆びていて鋭いとは言えないし、動きは鈍いのでよく見れば簡単によけられる。どうしても避けられない攻撃は腕に装備してある籠手である程度は防ぐことができる。
何より、剣や魔法よりも打撃系の武器や拳の方が効くというのが武器系スキルを使えない俺にとっては嬉しかった。
とは言っても──
俺は手に巻いていた包帯を剥がすと、血が滲んでいてひどい有様になっていた。すぐさま懐からポーションを取り出し、患部にかける。
「ッてーー、流石に染みるな……」
ポーションは全体的に体力を回復するなら飲んでもいいが、傷を癒すだけなら塗った方が量を節約できる。以前カエデが俺の腹に直接やっていた技術を応用してみたのだが、ソロ狩りで稼ぎが少ない自分には思いの外役に立った。
貧乏探索者は工夫をしないとモンスターよりも前に空腹で死んでしまう。
新しい包帯を巻きながらひとりごちる。
「やっとの思いで2ギル……八体倒したからおよそ16ギルか」
モンスターの落とす硬貨の枚数には個体差があるが、ボーンカトラスソルジャーならだいたい銀貨二枚、2ギルが平均値だ。
俺の一日の稼ぎはここ数日でだいたい20ギルくらいというところ。
「物価で考えると1ギルだいたい1000円くらいだから一日死ぬ思いで働いてやっと2万円……」
そこから自分の場合は宿代と食費とポーション代等、雑費で大分減るので、一日の稼ぎで手元に残るのはだいたい5ギル、5000円くらいだ。家なし、仲間なし、使えるスキルなしの三なし探索者にはダンジョン探索はものすごいハードワークだ。異世界に労働基準法があるわけでもなく、ダンジョンに労働組合はないので当然と言えば当然だが。
いや、今いるここは正しくはダンジョンではないか─、
消えかかった松明。ボロボロの通路。既に開けられた宝箱。錆びた武器を持つモンスター。
探索者のうろつかなくなったダンジョン。
「ロストダンジョン、クリアされたダンジョンの成れの果てか……」
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