嬉亡症

@mohoumono

嘘つき

みんな嘘をつく 

あの人が死んだって そんな嘘をつく 

「冗談でも言っていい事と悪い事があるじゃん!」感情が昂ったまま声を出す。

そうすると、皆が泣き始める。

訳もわからないから 彼の病室へと向かう。

でも、看護士さんもお医者さんも首を振って

諭すように、「彼は、亡くなったんだよ受け入れられないかもしれない。本当に辛いのなら、ここに行ってみるといい。」パンフレットを渡される。これで確か5枚目。7枚集めたらドッキリだった事をバラされるのだろうか。でも、何で皆そんな笑えない嘘をつくのだろうか。彼は死んでいない。死んだとするならば、何で彼女の私がそれを知らないのだろうか。昨日もそんな事を考えていた気がする。というか、ここ一ヶ月くらいの記憶があまり無い。彼がいなくなったのは、いつからだったけ?物思いに耽ながらブランコを漕いでいた。彼との思い出の場所だ。「やっといた。」聞き覚えのある声がして、振り返ると、そこには染谷さんがいた。彼の伯父さんにあたる人だ。そんな人が息を切らしながら私に声をかけてきた。

「本当。毎回毎回逃げて追いかけるの大変だったよ。本当勘弁してくれよ。歳なんだよこっちは。」染谷さんは、肩で息をしていた。

「これ、あいつから。読まなくてもいいから受け取ってやってくれ。」染谷さんは、そう言ってノートを十冊くらいの渡してきた。

「何ですか?これ。」突然息を切らして現れたかと思ったら謎のノートを渡してくる。いくら、彼の伯父さんだといっても気味が悪かった。「読んだらわかるよ。辛いだろうけど頑張ってね。」染谷さんは、それじゃあと手を振って去っていった。何だったんだろうかなんて思いながら、私はノートを開いた。

拝啓 夏生へ 

これを読んでいるという事は、染谷さんが、無事ノートを夏生に届けられたという事だろう。そして、「僕が亡くなっている」そんな嘘をみんながついている。今、君はそう感じているんだろうね。でも、みんなが言っている事が事実だ。君のことだから、きっと病院にも通って、嫌いな親の元にも行って、友達の元にもいって彼は死んでないなんて言っているんだろうななんて考えたら、これを書かずには、いられなくなった。これを書き終わったら、葬式が終わっても、君がその事実を忘れているのなら、このノートを夏生に渡してくれと染谷さんに頼むつもりだ。余計なお節介かもしれないけど、君の幸せを願っているのは、事実だ。だからこそこのノートを最後まで読んで欲しい。そして、自分が何で忘れてしまうのか思い出してくれ。

最後に一言、愛してる。

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