第2話 牛乳の営業

 西方極楽浄土の宮殿は野球場に改装して市民に開放した。みんな喜んでくれた。


 それに今、タウンワークで仕事を探している。得た賃金は恵まれない惑星に送金するつもりだ。


 心身の鍛練、文献の読書、仕事を三つ巴で行うつもりだ。


「ね~モグ」


「なに?」


「どんな仕事が向いているかな?」


「いまさらなにを……何回仕事変えたか覚えてる?」


「全く覚えてない!」


「向いている仕事はない。好きなことやったら」


「なんか冷たいな……わかったよ。これやるぞ!」


「え?! なに?」


「牛乳の営業」


「営業?出来るの?」


「だってやってみたいんだ」


「あ~ムリ……」


「牛乳のブランドが酪農ファザ―ズ!」


「聞いたことない」


「当たり前だよ。ハ―ロックの星の会社だもん。今の僕なら3分で行けるから通勤に便利。ちょっと買ってくる」


「え!……ダメだ。ああなったら誰も止められない……」


「ただいま」


「はや!」


「とりあえず3本買ってきた。これが普通の牛乳でこれが飲むヨ―グルト、そしてこれがカルシウムが沢山取れる加工乳。半分こして飲んでみよう」


「うんうん」


「まず牛乳ね。ゴクゴク。うん。どうよ?」


「うまい。濃い感じがするね!」


「うまいね!」


「次は飲むヨ―グルトね。ゴクゴク。うん。どうよ?」


「うまい。濃い感じがするね!」


「うまいね!」


「次は加工乳ね。ゴクゴク。うん。どうよ?」


「うまい。濃い感じがするね!」


「おまえね~何飲んでも同じ感想やないかい」


「だって、濃いくてうまいんだもん」


「確かにおいしいな。これ売れるぞ!!」


「西方極楽浄土に営業所作ってそこを拠点にして惑星ハ―ロックから卸して営業活動をしよう」


「まず、面接いったら?」


「違うよ。ビジョンが先だよ。この瞬間が一番たのしいんだよ!」


「ああそうですか。好きなだけビジョンしてなさい。ただし鍛練と読書は忘れなさんな!」


「は~い。

 もしもしタウンワークを見て電話している山口というものですが、今宜しいですか?あ?はい。そうです。35歳です。接客はやってましたが営業は初めてです。はい。24日、13:30、エメラルダス営業所ですね。セブンの横ですね。はい。履歴書ですね。わかりました。宜しいお願い致します。失礼します」


「モグ、お金。履歴書と写真撮らないといけない」


「はいはい。写真撮る前に床屋いったら?」


「はい。そうします。お金頂戴」


「あ~、全宇宙の最高権力者の財布に360円しか入ってないとは……財布落としたら恥ずかしいから10000円入れておこう!はい、お金」


「え?!こんなに?!なんか全宇宙を手中に収めた感じがするよ。じゃ、行ってくる(自分が全宇宙を掌握していることなど頭の片隅にもない)」


 熱しやすくて冷めやすい性格は一度死んでも治らなかった。





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