残念な夫

アオヤ

第1話

「お帰りなさい。早速、其処にある餃子のタネを皮に包んでちょうだい!」


夫が会社からいつもの時間に帰宅する。

今日は子供達の塾があって・・・

私は塾に行く前に子供達に夕御飯を食べさせたいと思っている。


「なんだよ? 作業服を着替える時間もくれないのかよ? 」


手を洗って戻って来た夫は渋い顔をしたものの、作業服のままでテーブルに置かれた餃子の皮にタネを詰めていった。


私はキッチンで食事の準備をしながら娘達の学校の事を夫に話す。


「あぁそうだね~ 」


なんとなく夫の話しがズレている様に感じて・・・

「ねぇ? ちゃんと聞いてる? いつも私が学校に行ってるけど、たまには代わって行ってくれる? 」

私はこんな夫に毎回イライラする。


「俺は今、餃子の皮包みに全集中しているんだ。一度に幾つも仕事が出来ないって言ってるじゃないか!」


夫はいつもこんな感じだ。

自分の事ばかりで私に対する気遣いなんてまるでない。


「私だってね、仕事して疲れているんだからやってよね! 」

私のイライラは絶頂に達する。


はぁ~ 私も男に生まれて来ればよかった。

毎日キッチンに立つ度にいつも思う。


夫が餃子の皮を包み終えて持って来たので、「じゃ、焼いといてね! 」ってキッチンに立つのを私と交代させた。

そしてコーヒーを片手に学校やママ友からの連絡をテーブルに着いてチェックする。

メールを見ながら夫に向って「ハァー」ってため息をついた。


夫は「俺を見ながらため息をつくのは止めてくれないか? まるで俺が甲斐性なしみたいじゃないか?」なんて言ってくる。


「しょうがないじゃない、自然と出ちゃうんだから・・・ ため息をつく事で心が落ち着くのよ。」

私は間違った事は言ってないはずだ。


でも、夫は納得してない様子で何も言わずに黙々と餃子を焼いた。


一通りメールをチェックし終えた私は「焼くのを代わるから着替えてくれば!」って夫と交代する。


餃子もこんがりと焼き上がり食卓に並べようと子供達に声をかけた。


「ほら、夕飯だから運んでくれる? 今日は塾もあるんだからさっさと仕度して! 」


なかなか準備しない娘たちに私はまたイラッとした。


「グズグズして遅刻する様なら塾を辞めるから!」


私は毎回同じ事を言ってる気がする。

なんでみんな分かってくれないんだろう?

私は毎日こんなに頑張ってるのに・・・

それが当然な事で誰も私に感謝なんかしていない。

そう思うとイライラは止む事が無い。


夫も着替えて来て食卓に着いた。

「いただきます。」

私を除いてみんな食べ始めた。

私が食べ始めるのは一番最後だが、時計を見るとゆっくりしている時間は無かった。


焼きたて餃子をゆっくり味わう事も無く私は夕飯を済ませると、食器をシンクに運んで「貴方、コレ洗っておいてね! 」って子供達を車に乗せて塾へ向かった。

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