第41話 新たなる王都生活へ
新年を迎え年越しの行事や新年の行事も全て終わり、お父様やお母様は領地のロンダに戻っていった。
我が家も正式に子爵家になり、領地でも大々的なお披露目をするみたい。
でもピピちゃんと久しぶりに訓練をした日のことを思い出すと、今でも大きな溜息を付いてしまう。
あの後久しぶりにテンマ先生と会うことができたけど、シャル王女と先生があまりにもくだらないことで揉めていたのだ。
シャル王女がシルちゃんをモフっていると、テンマ先生が起きてきてシルちゃんはテンマ先生の下に移動して、テンマ先生がシルモフを始めたらしい。
そのことでシルちゃんの奪い合いになり、一触即発の状態にまでなっていた。
テンマ先生のシルちゃんに対する態度は異常よねぇ……。
前からテンマ先生のシルモフは異常だと思っていたけど、それが加速している気がする。ジジちゃんに話を聞いて少しだけ納得できたけどね……。
ジジちゃんの話ではテンマ先生はバルドーさん経由で、王宮からの依頼を受けていたようだ。
バルドーさんの仕事の振り方は過激だからねぇ。
テンマ先生はろくに休むことなく毎晩のように生産活動をしていて、そのストレスを起きたときのシルモフで紛らわしていたらしい。それを邪魔することはテンマ先生の禁忌にも触れるような行為で、それをしたシャル王女は危ない状況だったらしい……。
そんなの誰が分かるのよ!
テンマ先生はどこか変人みたいなところがあるけど、そんなことを理解できるのはジジちゃんぐらいしかいないと思う。
結局シャル王女が謝罪して、国王陛下まで謝罪させるような事態となったのだけど、その原因がシルちゃんの奪い合いとは信じられない……。
シャル王女はその件で謹慎処分となり、年末年始の行事以外は部屋で軟禁生活を送っていた。
面倒事の嫌いなテンマ先生は王都の研修施設を
テンマ先生、逃げたわね!
人付き合いの苦手なテンマ先生は王家と揉めたことで逃げ出したのだろう。
別にテンマ先生が悪いわけでもなく、陛下が謝罪するぐらいだから気にする必要はないはずだけど、私は何となくテンマ先生が逃げたと思っている。
すぐに戻ってくると
ロンダでもバルドーさんに次々と仕事を振られてテンマ先生は追い詰められると、何故か旅に出ると言い出したのである。
今度も追い詰められて逃げ出すように旅に出たのだろう。
でもバルドーさんも一緒なら同じことになる気がするわ。
私は迎賓館の応接室で研修の合間の休憩をしながらそんなことを考えていた。すると迎賓館の入口が騒々しくなり、シャル王女が応接室に入ってきた。
「もう限界よ、アーリン、研修をしましょう!」
シャル王女は入ってくるなりヒステリック気味にそう叫んだ。
「シャルロッテ王女殿下、お久しぶりでございます。ですがちょうど研修の合間の休憩をしている最中ですわ」
「私をそんな風に呼ばないでよ。シャルだけで十分ですわ」
シャル王女は相当ストレスが溜まっているみたい。話し方も少し王女らしからぬ雰囲気になってる。
「うふふふ、随分とストレスが溜まっているようね。でも原因はシャルが先生と揉めたからじゃないかしら?」
「そ、そうだけど、テンマ様があれほど若いと知りませんでしたわ。それにあれほどの変人だと……想像することなどできませんわ!」
「殿下、そのようなことを軽々に発言してはなりません! もしそのことがテンマ様や陛下に伝わったりしたら、今度はどんな罰が下ることになるのか……」
シャル王女の発言に従者のドナが焦ったように注意すると、シャル王女は慌てて周りを見回してからホッとしたような表情を見せる。
「先生の感覚は普通の人には理解できないと思うわ。それほど根に持つタイプじゃないし、旅に出たから気にしなくてもいいじゃないかしら」
私がそう話すとシャル王女は複雑そうな表情をしたけど、何か諦めたように力が抜け、ソファに腰を下ろした。
「そうね、常人が理解できるはずないわね……」
シャルは呆然と呟いた。
「ねえ、それよりも学園の改革に協力してよね。元々シャルが企んだのでしょ?」
シャル王女は思い出したような表情になった。
「そうだったわ、でもテンマ様の許可は……」
「ちゃんともらったわよ?」
「本当なの? てっきり私のせいでテンマ様を怒らせたから、許可してもらえないかと……」
シャル王女の気持ちも分かる……。テンマ先生は確かに少し変わっている。
「テンマ先生は怒っていたけど、大切なことを感情的に判断はしないわよ!」
「そ、それは良かったわ……やっぱり
そこまで言っちゃうのぉ!
でも……、私も全部を理解できない。
「まあ、テンマ先生を理解するのは大変だけど、あれこれ気にしても仕方ないわ。それよりも私と普通にやることを進めましょうよ?」
「えっ、何を言ってるのかしら? テンマ様と似ているあなたと普通にですって!」
待ってぇーーー! テンマ先生と私を一緒にしないでよぉ~!
シャル王女の話にドナとダニも普通に頷き、護衛の騎士まで頷いている。
私はテンマ先生と同じ変人扱いされているのかしら?
「うふふ、冗談よ。アーリンさんはあそこまでの変人だとは思っていませんわ!」
な、なんか微妙……。
テンマ先生ほどではないけど、少しは変人だと思っているってこと……。
これ以上そのことを追求すると、悲しい結末が待っている気がする。気分を入れ替えてやるべきことをシャル王女達に話す。
「も、もういいわよ。それより年末年始の行事も終わって、本格的に学園の改革を始めないとダメなのよ。テンマ先生が学園用の資料を用意してくれたし、新学園長からそろそろ話しをしたいと連絡がきているのよ。私一人では大変だから、手伝ってよね!」
そう話すとシャル王女達も真剣な表情で頷いてくれた。
テンマ先生が王都からいなくなり、これから新たな王都生活をするために、私はシャル王女達と改めて行動するつもりだ。
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