第31話 こんな風にはならないよ?

 これって......そういうことなのか?


 でも..........絵里ちゃんはいいのだろうか。


「絵里ちゃんの事は、その..........好きだよ?」

「!?じゃ、じゃあ」

「でも、絵里ちゃんはよく考えた方がいいと思う」


 僕だって、高校生だし、絵里ちゃんから何度も好きだと言われると絵里ちゃんとの将来を考えたことは一度や二度ではない。


 でも、それは絵里ちゃんが恋愛と、親愛を勘違いしているかもしれない。


 ぼくの事を、お父さんのように思っていて、依存しているだけかもしれない。


「私は、何度だって考えたよ?雪花お兄さんとどうすれば結婚できるかって」

「そういうことじゃないんだ」

「?」

「恋愛と親愛を間違っちゃいけないんだ」

「.........?そんなこと分かってるよ?雪花お兄さんは何言ってるの?」

「本当に分かってる?」

「分かってるよ?雪花お兄さんは、私がお父さんと雪花お兄さんを重ねてるって思ってるんでしょ?」

「.........簡単に言えばそうだね」

「それなら、問題ないもん。だって..........」

「?」


 僕の耳元に口を近づけ、こう囁いた。


「だって、お父さんにこんなに興奮なんてしないもん」


 そう言った絵里ちゃんは、僕の手を掴んでそっと股に近づけた。


 じっとりと湿っていて、絵里ちゃんの方をみると、興奮して情欲に染まり切った顔をしていて、はぁはぁと湿っぽい吐息を零していた。


「え、絵里ちゃん」

「雪花お兄さんは、怖いんだよね」

「え?」

「私達の関係がもしかしたら壊れてしまうかもしれないのが」

「っ!?」


 なんとなく、自分の心の中にあった靄を突き付けられた感覚だった。


 一度、あいつと付き合ってひどい別れ方をしてから、付き合うということから逃げていたんだと思う。


 ..........絵里ちゃんと..........美穂さんからの好意を気付いてなお、心の中で「もし付き合ってしまったら」と壁を作り、「守る」という言葉で逃げていた。


 あの言葉は自分を守っていたのかもしれない。


「大丈夫だよ?私は雪花お兄さんを逃がしたりしないもん」


 そう言った絵里ちゃんは僕の服をゆっくり脱がしていく。


「.........不本意だけれど、お母さんも雪花お兄さんをみすみす逃したりはしない」

「.........」


 僕は、呆けて絵里ちゃんの事を見つめるしかない。


「雪花お兄さんは、私達から逃げることなんてできないの」

「.........絵里ちゃん」

「なぁに?」

 

 このまま身を任せてしまおうかという考えが頭を過るが、頭を振って絵里ちゃんを見つめる。


「僕と、付き合ってください」

「はぁい。元からそのつもりだったけれど」


 絵里ちゃんは興奮が最高潮になったのか、僕の唇を貪った。

 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る