11-26 隣の芝生は青く見える?
家に戻り、夕食をとる。
雇用者10名、奴隷4名…、一気に14人も増えている。
ま、奴隷も雇用者扱いなので、何ら関係はないし、それよりも奥様ズと残念ギャルズがニコニコしているのが分からない。
部屋割は大丈夫なのかと聞けば、ジョスさんが2,3階部分を先に作ってくれたので、今夜からでも泊まれるようで、既に家具も入れてあるとの事だ。
流石ジョスさん、出来るヒトは違うね。今度スピ〇ッツを大量に渡しておこう。
なので、ルカさん、ローザさん、エリアナさんには3号店で寝泊まりしてもらうようにする。
別館の空き具合は何とか1室あるとの事なので、申し訳ないが今日メイドさんとして買った奴隷2名…あ、名前まだ聞いてないぞ…。彼女たちに合部屋として使ってもらう。
そして、親子は本館の客室で寝てもらう。
「という事で、今日からこの“繚乱”の家事などを担当してもらう…」
「コレットです。」
「レクシーです。」
「それと、レルネさんのところで修練してもらう…」
「ジーナです。」
「サーヤです。」
4人には風呂に入ってもらい、着替えもさせた。
やはり驚いていた。が、それよりも大勢となったことで、カウンターには入りきらず、急遽ソファをどかしてテーブルを置き、そちらで食事をとってもらう。
クラリッセさんがコレットさんとレクシーさんを使い、てきぱきと指示している。
レクシーさんはメイドなので、すぐに覚えるが、コレットさんはなかなか難しいね。
でも、良いんだよ。メインは下着を販売するんだから。
「クラリッセさん、サーシャさんとネーナさんは昨晩帰って来たんだったよね。」
「ご報告が遅れ、申し訳ありません。
本日、朝に戻りましたが、メリアドール様の指示により、サーシャは王都へ、ネーナは伯爵家へと向かい、そろそろネーナが戻って来る頃だと思います。」
「無事だよね。」
「勿論です。」
「んじゃ、問題ない。でも、そういう話は早めにお願いします。」
「カズさん、すみません…。私が忘れてました。」
あ、ダンジョン行ってたんだよね。
ワクワクしちゃったから忘れたんだ…。
「ま、次回からということで、先ずは食事にしましょう。」
「社長、今日は酒を飲んで良い日かい?」
「流石に毎日はいけないよ。週に一日は身体を休ませてあげないと。」
「なんじゃ、仕方がないの。じゃ、メシをたらふく食うか!の、ラット。」
「おうよ、ヤット!」
うん。いつもの風景だ。
しかし、あの親子はビクビクしてるね…。
まぁ、一度鑑定はしているから、スキルとかも分かっているんだけどね。
食事も終わり、クラリッセさん達が後片付けをしてくれている間、雇用したヒト達にお風呂に入ってもらい、各部屋で休ませる。併せて、奴隷のヒトもその後で入ってもらうようにした。
大勢で話を聞くのもいけないと思い、ジーナさんとサーヤさんには、メリアさんとレルネさん、ディートリヒと俺で話を聞いた。
まぁ、話はカルムさんのところで聞いたとおりだ。
しかし、彼女たちというか母親であるジーナさんの眼が泳いでいる。
嘘は付けない性格なんだろうね。
最初から『疑ってます!』オーラを出すのもいけないから、お風呂に入ってもらい、今日は休むように伝えた。
「さて、ネーナさん。報告をお願いしますね。」
「ご主人様は気づかれておられたんですね。」
クラリッセさんの影から、ニュッと顔を出す。
「そりゃ、魔法を作った本人だからね。なんとなく感じるんだよね。」
「流石ですね。では、ご報告させていただきます。」
情報はやはりノーオの街に出入りしている商人がホールワーズ領に伝えたようだ。
要約すると、
・ホールワーズ伯爵は、ノーオで製作している下着工場に目を付けた。
・出所を調べると俺の名前が出て、どうやら“渡り人”であることも知っている。
・そのスキルと知識を自領で囲うため、策を練っており、今回、オーネの街で店を経営していた男をたぶらかし、母親と娘を奴隷とし、この街に潜り込ませた。
・あわよくば美人局として俺を嵌め、弱みを握りオーネへ連れてくるよう指示されているが、奴隷商の警備が厳しく、情報が入ってこないことにやきもきしている。
・母親と娘の所在が分かれば、即行動を移すようにとの指示を男に出している。
・おそらく男はこの街に潜伏中。
・“渡り人”の技術と知識を土産に帝国に媚びを売り、帝国との関係を構築したい。
「思っていた以上に腐りきっているね…。」
「カズさん、貴族全員がこうであると思わないでください…。」
「大丈夫だよ。そんな事は思っていないから。
だけど、ノーオの街はメリアさんの領地だろ?流石にそれは厳しいんじゃないか。」
「ヒトの移動は自由ですから…、しかし、工場に目を付けるとなると、カズさん達が作ってくれたミシンの存在が危ぶまれますね。」
「どのみち、いつかはバレるものだからね。
そういった事を踏まえて、サーシャさんに王都に行ってもらったんでしょ?」
「カズさんには内緒ごとはできませんね。
その通りです。少し早い気がしましたが、製作技術の特許を王都に認めてもらうべくサーシャに部品図と現物一台を持って走ってもらっています。
今頃、王都では蜂の巣をつついたような騒ぎになっているでしょうね。
こんな画期的な機械が世に出るのですから、衣類革命と言っても過言ではないでしょう。」
「革命がどんなものかは分からないけど、少しでも衣服が良くなると良いね。
ホールワーズ家もミシンの技術を買えば問題ないんじゃないのかな?」
「いえ、縫う技術は出来たとしても、下着まで作る技術はありませんからね。
今、ノーオの工場ではミシンを動かせるヒトと下着を作るヒトの引き抜きがされている状態だと思います。」
「ザックさん、大丈夫かな?」
「大丈夫だと思いますよ。私達の紋章の事を伝えてありますので、同じようにしていると思います。」
「まぁ、別に漏れても問題はないんだよ。
ただ、そうすると一部貴族の特権となってしまうことだけはイヤなんだよね。」
「市民が着用できるように、が、カズ様の信念ですから。」
「あ、そう言えばダンジョンは大丈夫だったんだよね。」
「はい!楽しゅうございました!」
ナズナとベリル、ニコルが青ざめている。
「まさか、氷魔法で…」
「はい。一網打尽に!」
「奥方様の魔法は強力なので、できればもう少し加減をされた方が…。」
「あら、全滅は良いことですわ。」
「はい…。全滅は良いのですが、氷漬けになった魔物を壊すのに時間がかかります。
今回は、ローザが居てハンマーでブチブチ叩いていましたが、出来ればもう少し簡単に叩けるくらいの氷魔法でお願いします。」
「あら、そうだったかしら?」
「で、素材は集まったのかな?」
「はい。それはもうたくさん。バッグ二つ分素材が集まりましたわ。」
恐るべし、メリアさん…。
多分、うっすら笑みを浮かべながら魔法を放っていたんだろうな…。
その魔法を避ける皆さん…、ご苦労様でした…。
「でじゃ、イチよ。あの奴隷どもをどうするつもりじゃ。」
「そうですね…、少し泳がせてみましょうか。必ず接触してくる人物が居ると思いますよ。」
「彼女たちには悪いが間違った錬成を教えて返すって手もあるがの。」
「そうすると、彼女たちが危うくなりませんか?」
「彼女たちよりも、それを指揮している奴、即ち旦那の方が命を狙われるな。」
「まぁ、旦那であれば問題ないでしょう。
俺も余り店を出ないようにした方が良いですね。」
「イチは問題ないぞ。それにそろそろクローヌの屋敷が出来上がる頃では無いかの?」
あ、忘れてた…。
あっちも、いろいろと作らなきゃいけないモノがたくさんあるんだった。
「それじゃ、明日、メリアさんとディートリヒで行ってくるか。
ナズナとネーナさんはあの二人の影に入って情報を入手してくれるかい?
それで接触してきたヤツの動向を探って欲しい。
ベリルは店の護衛、ニコルはジョスさんに会って、4号店の改修について打ち合わせをお願いします。
クラリッセさんはメイドさん2名の指導を。レルネさんは錬成の修練をお願いします。」
「なにか面白くなってきましたね。」
面白くなるのではなく、皆が羽目を外すんじゃないかと思うと…。
皆で風呂に入る。
いつものように皆の髪を洗いマッサージをした後、ベリルとスピネルに両腕を取られ、朝を迎えることになった…。
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