10-28 ファミリー報告会①

「社長さん、この食べ物はなんて食べ物なんだ?」

「これはトンカツって言って、オーク肉に衣を付けて油で揚げたものだ。

 ソースやおろし、塩胡椒でも何でも合うから好きな調味料をかけて食べてくれ。

 あとは、白くてふっくらしているのがご飯というものだ。

 トンカツに合うし、なにせ美味い!試しに食ってくれ。

 それにスープはメイド長さんの自信作だ。」


「お館様、やはりトンカツは美味しいです!」


ナズナが満面の笑みを浮かべている。

そんな事してると、取られちゃうぞ。


初めてのヒトは、おどおどしながらもフォークで刺してソースに付けて食べる…、一口食べて目を見開き、二口食べてご飯を食べる。三口目からはガツガツいってる。


「メリアさん、クラリッセさん、サーシャさん、ネーナさんも食べて。早く食べないとアドフォード家の二の舞になって、すぐになくなっちゃうよ。」

「あの…、社長…、ご飯のお代わりはあるのでしょうか?」

「おう!二升炊いたからどんどん食べて!」

「はい!ありがとうございます!では、お代わりを!」

「はは。良い子だ!トニュフさんだっけ?いっぱい食べてね。」

「お館~、酒はもうおしまいですか?」

「ヤットさんとラットさん用にちゃんとあるよ。俺の村で作った酒だ。ただし、強いから余り飲み過ぎないようにね。」

「お館様…、トンカツを味わって食べていたら、もうありません…。」

「そんな事だろうと思って、材料はたくさんあるよ。

これから、どんどん揚げてくからね。」

「はい!ありがとうございます!」


戦場に行った事はないが、調理場が戦場と化している…。忙しさが半端ない。

でも、嬉しい忙しさだ。皆が笑顔になって食べている姿を見るのが何よりも嬉しい。

いつの間にか俺も笑顔になっている。


 1時間後…、


「それじゃ、報告会をしようかね。それじゃ、先ずは石鹸としゃんぷりんかな?」

「カズさん、その前に王都での報告をした方が石鹸としゃんぷりんの今後も分かりやすくなると思いますので、王都での話をさせてください。」

「あ、特許の問題があったね。んじゃ、メリアさん…、が報告してくれることでいいかな。」

「はい。先ずは王都での石鹸の製法についてですが、王都が製造しているモノとは製法が異なるものであり、これを石鹸として認めるという事です。そして製法特許とその公表ですが、王国内に公表し民の生活に役立てるという事、天晴であるとの事で、今後50年、毎月金貨2枚を報奨額として与えるとの事です。

 次に石鹸に類する製品の製法を公表することについても同額を報奨額として与えられます。

 つまり、石鹸の販売をしながら、今後50年は毎月金貨4枚の収入が得られることとなりました。

 下着についてですが、製法特許を認め、他の店が同等の製品を開発・生産し販売する場合は、商業ギルドに登録の上、売上額の5%を特許使用料として納めることにより可能となります。つまり、他店の売上の5%が収入として入って来ることになります。

 ガーダーベルトも特許として認め、同じく売上額の5%を特許使用料として入ることとなります。

 王宮からは、女性の生活を向上させた功績は顕著であり、ひいては国の発展と繁栄をもたらすものであることや諸々の事を加味し、勲章を授けるとの事でした。

 授与式は、2か月後の王の誕生祭において執り行うとの事です。

その準備金として金貨50枚をいただいてきております。

 最後に、カズさんの領地についてですが、シェルフールとクローヌまでの往来が活発になると判断できた場合、その時点から領地を与えるとの事ですので、これはブレイトン伯爵に任せましょう。

 あ、もう一つ言い忘れましたが、王と側近、騎士団等より、災害級の魔獣を討伐した報酬として白金貨5枚をいただいてきております。」


「災害級の魔獣って?」


そうだよな…。ほとんどのヒトが知らないんだった。


「では、その件について、私ディートリヒが報告させていただきます。

ここから南に行ったノーオの街の東にあります湖に住んでいたエンペラー・サーペントを討伐したことです。」

「へ…? エンペラー・サーペント???

 あれを討伐されたという事ですか?」

「そうです。それもたったお一人で倒されました。」


 皆、口をあけたまま無言だ。


「まぁ、災害レベルの魔獣は過去の話だけど、今後の話としてシェルフールとクローヌの往来の活性化はすぐにできそうだね。」

「旦那様、それは何故ですか?」

「馬車で行くとガタガタだったから、ここからクローヌまでの舗装を修復しているからね。

あと7,8㎞で終了するよ。」

「20㎞のうち、ほぼ半分を既に舗装されたという事ですか?」

「そうだよ。ここにいるナズナ、ベリル、アイナ、ミリー、ニコルが土魔法で直してくれているよ。」

「え、確かナズナさんとベリルさん、アイナさんは土魔法が使えることは聞いていましたが、それ以外の方は…。」

「馬車でクローヌへ行く間に覚えたんだよ。それにディートリヒも覚えているよ。」

「そう言えば、カズさんの魔法は誰にでも覚えることができるものでしたね。」

「あぁ。それに氷魔法とフライだっけ?それも覚えている伴侶も居る。」


皆、また口を開けて呆けている。


「社長、一つお伺いいたします。

 もし、私たちも魔法を学びたいとお願いしたら、教えてもらえるものでしょうか…。」

「レイケシアさん、君は既にいろんなスキルを持っているけど、それ以上に魔法が必要な事ってあるのかな?」

「そうですね。悪漢に襲われた時とか護身術くらいには欲しいとは思います。」

「まぁ、そういう護身術的なものであれば教えることはできるね。

 でも、魔法を覚えるということは、危険を冒す可能性もあるという事を心に置いてほしい。

 剣もそうだし、魔法もそうだ。レイケシアさんが、魔法が使えると皆が知れば、レイケシアさんの力を頼りにしてくる輩もいるだろうし、その力を排除しようとしてくる輩もいる。時には誰かを殺めることもあるかもしれないんだ…。

それに戦争や戦いにも参加させられることもある…。危険と隣り合わせだという事だ。」


 レイケシアさんは深刻に悩み始めた。


「ここに居るみんなは既にスキル持ちなんだよね。だったら、先ずは自分のスキルを磨いてほしいと思っている。生まれた時から持っているスキルは練習すればするだけどんどん伸びると思うんだ。

 だから、昨日今日覚えたスキルに頼らなくても、皆が楽しく生きていければ良い。

 俺はそう思う。」

「イチよ。それが正解じゃな。

 ルカも儂も戦闘よりも、こうやって研究をしておる時間が嬉しくて仕方がないからの。

 おそらく、スピネルもミリーもそう思っておるのじゃろうて。」


アデリンさんたちが納得した表情で頷いている。


「カズさん、氷魔法について、後ほど詳細に教えてください。」

「メリアさんは氷属性の魔導師ですからね。分かりました。」


クラリッセさんがコーヒーを入れてくれたので、ゆっくりと飲む。


「んじゃ、クローヌの話も出たので、今度は俺たちの事を報告するね。

クローヌに住む場所は決まったよ。街の奥の山を買ってそこに住むことになる。

 今、屋敷を建ててるけど15日くらいで完成するって事だから、それまでに道を舗装していくよ。

 それから、馬車でクローヌに向かおう。

 ただ、下着と石鹸の販売、メイド服の販売もここで展開していくから、残ってもらうヒトも居るけど、馬車で数時間の距離だから、皆が行き来できるようにしたいね。

 あと、クローヌを再興するためのものも作っていくよ。

 ちょうど、王様にお金をもらった事だから、そのお金を再興の資金に回したいけど、ディートリヒ、どう思う?」

「すべてを回すのはいけませんね。できれば白金貨2枚くらいに抑えていただければと思います。

 それと、カズ様の財産を管理するヒトを専属で付けたほうが良いですね。

金額が金額なだけに、恐ろしくなってきましたので。」

「それじゃ、経理のできる人間が必要って事か。」

「カズさん、当面はクラリッセに任せておけばよいかと。ただ、クラリッセもクローヌに行くことになりますので、クラリッセがクローヌ担当、レイケシアさんがシェルフールの経理担当という事で如何でしょうか。そしてクローヌの館に両方を統括する者を置くのが良いと思います。

 そうですね…、クローヌに執事を置けば問題はありませんね。」

「それじゃ、執事を探す事もしないといけないね。」

「それと、家を切り盛りするヒトも必要ですね。そういったヒトを奴隷で雇うのが良いかと思います。」

「奴隷か…。確かに俺の伴侶となったヒトはほとんど奴隷だったからなぁ…」


「へ?みなさん奴隷だったのですか?」


クラリッセさんたちが驚く。


「はい、奴隷でした。私は四肢がなくなり、死にそうなところをカズ様に助けていただきました。」

「私は大やけどで、動けなかったのをお館様に治していただきましたね。」

「私は内臓が破裂してましたね…。」

「私たちもボロボロでした。それを主様が治してくださいました。」


「えぇぇーーーー。」


キター!

久しぶりの全米中が絶叫した。


「でも、カズ様は、私を一週間ほどで奴隷解放していただきました。」

「私の場合は、数日ダンジョンに籠った後にお館様に奴隷解放していただきましたね。

 ダンジョンでは、お館様に死ぬほど叱られましたが。」

「私たちの場合は奴隷と言えるのかどうかは分かりませんが、闘技場で拾っていただいたのですが、カルム様が『またですか…』と仰った言葉が今も忘れられませんね。」

「私たちも、数日ダンジョンに籠った翌日に、でしたね。」


「えぇぇぇーーーーー。」


全米中が絶叫した…アゲイン。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る