8-15 食後の運動…

「それじゃ、付与していくよ。先ずはディートリヒからね。願いたい事を言ってね。」

「はい。カズ様、お願いします。

 その前に、私たちの方からも、カズ様にお願いしたいのですが。」


 ディートリヒは、一つの指輪を出した。


「同じデザインは7つありましたので、これをカズ様にもつけて欲しいのですが…。」

「うん。良いよ。」

「やった~((((やった~))))。」


「んじゃ、この指輪は連携強化にしておこう。その他はどうする?」

「私は末永くカズ様と一緒で…」

「そんな付与は無いから…、それにいつまでも一緒だから問題ないね。ほかに何かある?」

「では、体力増強と魅力向上で。」

「魅力向上はこれ以上無理だと思うよ。」

「え、何故ですか?」

「ディートリヒの魅力は最高レベルだからね。」


 あ、褒め過ぎた…。クネクネし始めた…。


「では、体力向上と俊敏の向上を」

「よし、んじゃ…。ほい、出来たよ。次はナズナね。」

「お館様、私は俊敏の向上と認識阻害を」

「はい、んじゃ…。ほい、できたよ。次ベリルね。」

「主殿、私は何を願えばよいのでしょうか…。」

「そうだね、ベリルは切り込み隊長だから、俊敏の向上と索敵かな。

 んじゃ…。ほい、次スピネルね。」

「私はマナ増加とマナの向上です。」

「はい。んじゃ…。ほい、出来たよ。」

「社長~次私です!」

「まぁ仕方ないからね。んじゃ…。ほい。できたよ。」

「え、なんで聞いてくれないんですか?」

「え?だって戦闘職じゃないからね。だから錬金術の向上と鑑定をいれておいた。」

「社長~、あたしは魅力大幅アップでボンキュッボンになりたいんです。」

「それ、付与じゃ無理だからね。」


 ふふふ、アイナよ、君に付与したのは鑑定と知力向上なのだよ。


「それじゃ、みんなにつけてあげるね。」


 俺は全員に指輪をはめた。

指輪は魔法で調節ができるようだ。これは便利だ。


「俺の世界では指輪を相手に付けてあげると、一緒になるって意味にもなるんだ。

 だから、これからもよろしくお願いするね。」

「は、はい…、カズ様…。私どもはいつまでも一緒です。今後ともよろしくお願いします。」


 皆、指輪を眺めニヤニヤしている。

うん。俺も嬉しいよ。


「あ、明日のアドフォード家の面会の際には、皆3点セットを付けてね。

 あのアホどもに俺たちの仲が良いところを見せつけてやろう。」

「お館様、何故か闇深い笑みのような気がしますが。」

「まぁ、あいつらには少し痛い目をあわせたいからね。

 それでも懲りないってのは、ほんと残念だよ…。」


 俺はこれまでメリアドールさんの家で起きた事を話した。


「社長~、そいつらホントにバカですね。私でさえ、社長には勝負しないっていうのに。」


 なぜ君が言う?

魔法か剣じゃなくて、言葉と言う武器でコテンパンになったと思うのだが…。


「まぁ、アイナの意見は放置して、明日はとびっきり美人になってもらうよ。

 その前に夕食にしよう。」

「はい((((はい))))。」


 今朝作っておいたブル丼の鍋と熱々のご飯を出す。


「“つゆだく”が良い人~?」

「主殿、“つゆだく”とは?」

「この白いご飯にスープをいっぱいかけるって事ね。」

「であれば、はい((私も。))。」


 3人か。俺とディートリヒは汁が少なく、あとの3つは多くする。

お皿の真ん中に生卵を割って入れる。(勿論、生で食べて良いように菌を殺す“死滅の光”をかけておいた)

「では、いただきます((((いただきます))))。」


 皆、初めて食べるものだけど、上手にスプーンで掬って食べているよ。


「これは…。」

「おいひいです。」

うん。石鹸や下着の販売がひと段落したら、食事処をやってもいいよな。

こうやって、みんなが笑顔で食事してくれる姿を見ると嬉しい。


「主様、なぜ涙を流されておられるのですか。」

「あぁ、スピネル。ごめんな。

みんな笑顔で俺の食事を食べてくれる姿を見ていると嬉しくなってな。齢をとると涙もろくなるんだよ。」

「社長の料理はこの国イチですね。これでお酒でもあれば文句なしです。」

「ははは。今日はダメだよ。明日の成果如何で俺達の今後が決まるからね。」

「はーい。」

「んじゃ、いっぱい食べて、明日のためにお風呂に入りますよ~。」



俺…、人生初の大失態を犯した…。

ブル丼は完売した…、皆ご飯を3,4杯食べたんだ。

結果どうなるかと言えば…


そう、お腹がポッコリと膨らむんだよな…。


「カズ様、このお腹は…」

「そうなんだ…、ご飯をいっぱい食べるとお腹がポッコリするんだ…。

 でも、消化吸収が早いから、運動すればなおるんだけどね…。」

「運動ですか…、ハイ、分かりました。

では、アイナはここで待っててください。私たちとカズ様とでお風呂に行き、先ずは運動してまいります。運動を終えたらアイナを呼びますので、お風呂に来てください。」

「あの…、ディーさんや、運動はお風呂でなくても走ったりすることでもできますが…。」

「いいえ。あのお風呂の熱さと程よい水が運動には最適なのです。

 カズ様もサウナは新陳代謝が良くなると仰ったではないですか。」

「いいました…。言いましたが、運動会は本日2回目になりますので…ゴニョゴニョ…。」

「大丈夫です。カズ様は私たちの面倒を見てくださるだけで良いので。」

「はい…。」


それから数時間後、風呂でのぼせた俺をポッコリお腹も無くなり、艶々になった女性4名が介抱していた…。


「お館様、少し頑張りすぎましたか?」

「カズ様は頑張っ…踏ん張っておられたのではないかと…。」

「ディーさんや…、そこは頑張ってでいいです…。

 俺、120%以上出し切りましたので…。」

「すみませんでした(((すみませんでした)))。」


 これ以上動けません…。

でも、こんなおっさんでも愛してくれるヒトが居ることが嬉しいよ。

だから頑張るからね…。


「ディートリヒすまないが、明日7時に皆を起こしてほしい。もう一度お風呂に入ろう。」

「はい。」

「それじゃ、俺は落ちます…。」

「カズ様、朝7時です。」


え、そんなに早いの?

アッという間じゃん。


「うん。ありがとう。じゃ、みんなを洗ってあげる。」


5人をしっかりと洗う。

特に下手に見られそうなアイナとスピネルは念入りに。

5人を洗い、髪をドライヤー魔法で乾かす。

うん!サラサラだ。


風呂を出て、軽く朝食をとる。

お腹いっぱい食べないようくぎを刺しておいたが、アイナは隠れて何か食ってたところをディートリヒに見つかり大目玉をくらっていた。


 彼女たちに似合う下着も選んだ。

アイナにはサイズが無いのでスポーツブラのSサイズで対応。

それでもぶかぶかで、死んだ魚のような目をしている。


白いブラウスに黒のスパッツ、そして、靴も黒のヒールのようなブーツで揃えた。

そこにアクセサリーの3点セット。

ブラウスの胸元のボタンを一つ外し、ネックレスが見えるようにする。

その上に黒のジャケットを羽織り完成。


「できたよ。みんな鏡を見て。」


「あの主殿、いったい何をされたのでしょうか。

 私がこんなになるとは思えないのですが…。」

「それはね、みんなに魔法をかけたんだ。」

「主様、それは認識阻害とは逆の魔法ですか?」

「いえ…、嘘つきました…。何もかけていません。

 皆の素っぴんが綺麗だということなんです。」

「お館様、“すっぴん”とは何でしょうか。」

「素顔って事ですよ。皆素顔が綺麗だって事です。」

「社長、そこはカメの仲間で…というのが定石でしょう。」

「って、アイナ、何でそんな事知っているんだ?」

「え?何で…?かな…?頭の中に浮かんできたんですが…。」


 しまった。付与した知力向上が変な知識を植え付けていってる…。

流石アイナの脳だ…。


「じゃぁ、アイナ、馬車の準備をお願い。」

「あいあーい。」


しばらくして、皆で下に降りていく。


「それじゃ、みんな、行きますか!」

「はい(((はい)))。」


 皆の周りに光が舞い降り、馬車に乗り込んだ。

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