7-17 旅行の前夜はウキウキです
「…という事で、伯爵様の馬車をお借りしてきました…。」
「カズ様、それは良いことです。カズ様の箔がつきますね!」
「お館様との2回目の旅行…。」
「スピネル、これは婚前旅行になるのでしょうか…。」
「はい、姉様、婚前旅行です…。」
何故か残念ギャルズ全員が喜んでいる。
何故かアイナさんもリビングに上がり込んで、ふんすかしている。
もう何を言っても仕方ないから、そのままスルーしてこれからの話をする。
「今回の旅行はノーオの街でザックさんに会う事、そしてメリアドール様のいらっしゃる街に行き、交渉を行うことです。」
「はい((((はい))))。」
「先ずザックさんが居る色街で、頼まれたものを渡します。
その後、その衣類を作る工場の話をします。
工場は水を使うので、水が確保できる場所を優先的に探してもらいましょう。
そこで、生地をつくってもらう事になるけど、上手くいけば、こちらから素材を渡し、ノーオで生産してもらうことも考えます。
ここまでで分からない事はありますか?」
「はい!主様。」
「スピネルさん、どうぞ。」
「ノーオの街までは馬車で8時間程度かかります。ここからノーオまでの輸送などはどうしますか?」
「そこも含めてザックさんにお願いします。
俺が動くと他の貴族がうるさいので…。」
「はい!主殿。」
「ベリルさん、どうぞ。」
「素材はどこで調達しますか?」
「俺が見つけているのはダンジョン内なので、ダンジョンでしょうか。そうするとギルドへの依頼も必要になるかもしれないね。」
「冒険者の専属契約は考えますか?」
「大量の素材が必要だと考えれば、専属契約も必要です。」
「はい!お館様。」
「はい、ナズナさん。」
「生地は出来ても、布を縫う機械がありません…。」
「一応、むこうから4台ほど持ってきました。
うち3台を使って縫ってもらいます。勿論人選は必要ですし、スキルで裁縫とか持っているヒトであれば優遇されるでしょうね。
そしてあと1台は、アイネさんに渡し、ここで部品を作ってもらい、機械を作ってもらいます。」
「はい!ダーリン。」
「却下!」
「えーーーー、何でですか?」
「俺はアイネさんのダーリンでもありません…。それにそんな事言ってると、ここに居る4人から恐ろしいことを受けると思いますよ…。」
「ひゃ…ひゃい。では、何とお呼びすれば…、では旦那様で」
「却下」
「あ・な・た」
「アウト」
「スィートハート」
「何故そんな言葉を知っている…、ダメ。」
「もう、んじゃ“いっちゃん”で。」
「ま、俺的には良いが…。」
「ダメです(((ダメ)))!」
4人から攻撃されたアイナさん…、ガクブル状態だ…。
「それじゃ、社長で…。」
「まだ起業もしてないけど、まぁ良いか。」
かくしてアイナさんからは“社長”と呼ばれるようになった…。
「で、社長、質問ですが…。」
「アイナさん、どうぞ。」
「私、機械を分解することは得意ですが、組み立てることはできません!」
アイナさん…、今更、何をふんすかしているんだ。
「アイナさん、契約書は読みましたか?」
「いいえ、読んでいません!」
威張るな…、基本中の基本を飛ばしているぞ…。
「で、あれば、鼻血をだしてでも機械を組み立ててもらいます。その前に馬車の改良もします。
これから、アイナさんは寝ずにびっしりと働いてもらう事になりますので覚悟してください。」
「えーーー。労働時間は一日8時間って書いてありましたよ。」
「スピネル、アイナさんにブレス攻撃を…。」
「はい主様。」
「ちょとちょっとー、タンマです。
すみません。私が悪かったです…。ちゃんとやりますよ。死ぬまでやりますよ…。
それで倒れて死んでも誰も喜びませんが良いんですか?」
「そのための契約書です。8時間労働しか書いていませんから、それ以外は個人の判断となります。
よって、寝不足で死んだとしても、こちらには影響はございません。ね、カズ様。」
「ちっ。ブラックかよ…。」
アイナさん…、大分豹変してきました…。
それにタンマとか、ブラックだとか、スィートハートだとか、どこで知ったんだ?
夕食の献立は、サラダにカリカリに焼いたオーク肉を細かく切ったものをまぶし、そこに熱したオイルをかけたものと、野菜たっぷりのスープにオーク肉とブル肉をミンチした肉団子を入れたポトフ、木の実の入ったパンもどき。それだけだと肉食ギャルズのお腹が満足しないので、ブル肉のステーキに玉葱もどきと調味料を混ぜたステーキソースをかけるたものを作る。
「社長ぉ~、いつもこんな豪勢な食事なんですか。」
「いいえ、今日は明日からの英気を養ってもらうために豪勢にしました。
いつもは質素です。」
「では、いただきます。」
「いただきます((((いただきます))))。」
和気あいあいとしている。若干何故居るんだ?と思う人も居るが今晩だけは許そう。
明日から御者をしてもらわなくてはいけないからな。
夕食を終え、アイナさんを家から追い出し、倉庫で休んでもらう。
これはルールだから仕方がない。
それに、申し訳ないがシンプルロリはストライクゾーンではないのだ…。
年齢は…やめておこう…。頭痛がし始めるから…。
部屋に戻り、明日の準備をする。
お土産OK、遊郭用のナイトガウン、ベビードールOK、後はパン20個、石鹸木箱1つ。
ほんとはシャンプーリンスも渡したいところだが、まだ製品化していないので試供品だけとし、今度ザックさんが来る時までに踏ん張って作ることにしよう。
あとは足踏みミシン3台…、そう言えば分解はできても組み立てができない残念ドワっ子がいたな…。んじゃ4台とも持っていくか。
素材としてアラクネの糸、魔糸、楮、綿といったダンジョン産のもの。
それ以外で何かあるか…、あ、サーペントの鱗とかオークなにがしの盾やら剣もあったな…。
後はいつでもパンが焼けるように小麦粉、重曹、ミルク、塩、砂糖、バター…ま、何でもいっか。
あ、メリアドール様の分もそろえないといけない。忘れるところだった。
そんな事を考えながら、ようやく準備が終わる。
「カズ様、お風呂が入りました。」
「おう、ありがとう。んじゃ、入りに行こうか。」
5人で屋上に行く。
今日はみんなのリクエストで展望風呂だ。勿論サウナも準備してある。
皆、もう使い方にも慣れたようで、思い思いに風呂を満喫している。
「お館様、一つご相談があるのですが…。」
「どうしたナズナ。」
「ノーオの街とメリアドール様の街ですが、お風呂は入れるのでしょうか。」
「あ…。入れないね…。でも、ノーオの街には色街があるから、そこでお風呂に入れるよ。」
「ではメリアドール様の街では…。」
「基本、無理かな…。ダンジョンの帰りに使っていたお風呂も倉庫に使っちゃったからな…。」
4人が残念な顔をしている。
「では、この家にあるような、気持ちの良いトイレは?」
「それは絶対ないです。」
魚が死んだような目をしている…。
「あ、トイレならお尻を洗う機能は無いけど、ダンジョン用に簡易トイレがあるけど。」
「いけません。あの機能が気持ちいいのです。」
「そうですか…。無いから我慢して…って、あ!あるよ。携帯ビデを向こうから持ってきたから。」
「はい?」
「自分で綺麗にするやつね。」
「そうですか。使ってみないとわかりませんが、あるだけでも嬉しいです。」
「主殿、服は何を着て行けば良いのですか?」
「基本、ダンジョンに入る時の装備で良いよ。でも、なにかあるといけないから、普段着も持っていってね。
あ、それと明日は伯爵さんの奥方ズの馬車なので、こうした方がもっと乗りやすいとか、こんな機能があれば嬉しいといったような事を教えてくれると嬉しい。」
「では、お館様、トイレとお風呂を」
「馬車のスペースでそれを入れるのは無理です。」
「では台所を」
「馬車を燃やす気ですか?」
「御者を必要としない馬を使わない馬車を」
「それは車ですって、ん、今誰が言った?」
「は、はい。私です主殿。」
「おぉ!ベリル、タイムリーヒットだ。
でも、それは今の技術ではできない…、ことはないか…。
ただ、動力に魔道具を使うことになると風か?回るというイメージは…ブツブツ…。」
「ベリルさん…、カズ様がこうなってしまうと、もう今晩のベリルの順番は無理ですね。」
「え、そんな…。」
「仕方ありませんね~(残念ですね~)。」
「みんなも同じことになるよう呪ってやるぅーーーー!」
そんなこんなで夜は更けていった。
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