第六章 店の完成

6-1 販売品の考察

 翌朝、久しぶりの慣れたベッドの上で起きる。

熟睡できたようで、身体が軽い。

ディートリヒとナズナはまだ夢の中のようだ。俺が動けば起きちゃうな…。


 思えば2回目の出張もいろいろあったなぁ…。

でも毎日が充実している。生きていることがこんなに楽しいのかと思えるくらいだ。

それに、傍には彼女たちが居る…。

何か、彼女たちにできることは無いか…。

あ、そう言えば今思い出したが、ディートリヒに似合うかな?と思って内緒で買ってきた下着があったな…。でもサイズが分からないから、適当に買ってきたんだった…。

スポーツブラ以外で残っているのは…、白と黒と…。

うん…、朝からこんな話はよそう。

マイ・ジュニアが年甲斐もなく動き始めるから…。


 お、ナズナがムズムズし始めた。

「おはよ。」

「お館様、おはようございます。」


 あ、俺の声でディートリヒも起きたね。


「おはよ。」

「はい、カズ様、おはようございます。chu!」


 続けて、ナズナにもキスをする。


「二人とも今日は何したい?」

「カズ様、私は今日はこのままこうしていたいです。」

「お館様、私も今日だけは…。」

「うん。分かった。じゃぁ、もう少しこのまま…、いや、今日は一歩も部屋から出ないっていうのも良いかもね。お腹がすいたらイヴァンさんに何か作ってもらおうか。」

「はい(はい)。」


 俺たちはもうしばらく互いの体温を感じる時を過ごす。


「そう言えば、家がもう少しで完成するんだったな。」

「そうですね。あの魔道具を使ったお風呂も楽しみです。」

「あのお湯が出る魔道具ですか?もしかして買われたのですか?」

「うん。まぁ買ったというか、髪留めと物々交換かな。

 そのヒトと仲良くなってね…。あ、そのヒト遊郭も経営してたんだ。」

「え。お館様、私たちだけでは足りずに遊郭に足をのばされたという事ですか?」

「あ、それ違います。ディートリヒ、フォロー頼む。」

「もう、カズ様は。

ナズナさん、カズ様は私たちだけで満足していますので安心してください。

 色街で店を経営しているザックさんという方が、カズ様と意気投合したんです。

 それで、カズ様の事を兄貴としてこれからお仕えするとの事になったんです。

 んと、何ていいましたっけ? そうそう、“お風呂は正義だ”という事です。」

「はぁ、“お風呂は正義”ですか…。確かにお風呂は気持ち良いですからね。」

「まぁ、それもあるし、“裸の付き合い”って言葉もあるんだよ。」

「“裸の付き合い”とは、何ですか?」

「普段は服着てるだろ。服を着ているってことは身分を前面に出して付き合うんだよ。

 例えば伯爵様だと綺麗な服着て対応するし、貴族でも同じだよな。

商人は商人の服を着るし、冒険者は冒険者の服を着てヒトと接するって事は、簡単に言えば“身分が服着て歩いている”ってな感じかな。

だけど、風呂は服を着ないよね。そうすると身分なんて関係なく、自分は自分だとして話ができる。

まぁ、俺が良く言ってる“腹割って話す”のと同じって事かな。」

「お館様、私、そういう考え好きです。

コカっちの件もそうですが、魔獣だからと言って討伐せずに共存していくというお考えは素晴らしい事だと思います。」

「あ、コカッちで思い出したが、ナズナ?もしかしてあのコカトリス…確か12羽のつがいが居たと思うが、全部に名前つけたのか?」

「はい!コカッちにコカたん、コカまろにコカ夫、それから…、」

「分かった。分かった…。今度郷に行ったときには首からプレート付けておかないとどれがどれか俺たちには区別がつかないな…。」

「あ、それでしたら狩人の一人が既に郷に依頼してプレートを作成してると思います。」

 

 あ、あの残念な狩人さんだろうな…。


「あとは、レルネ様が工芸品を作る部署を創設したのですが、長の命令以上のもの…ええと、なんて言いましたっけ…、そうそう、その部署に来た職員に“戒厳令”をしきましたね。」

「へ?戒厳令?」

「はい。元来工芸品を作るのが大好きなエルフですので、寝る間も惜しんで髪留めなどを作ってしまうようです。ですので、工房には8時間しか居られない事や、家に仕事を持ち込まないよう、出入口で工芸品を持ち出してないかをチェックをするまでになりました。さらにアクセサリーは一人一日1個しか作ってはいけないといった事まで決められたそうです。」


 ま、そうなるよな…。

鱗だって有限だし、いつかは素材が枯渇してしまうからな…。


「あ、そうだ。二人に見てもらいたいものがあったんだ。」


 俺はビジネスバックに入っているものをごそごそ探し始めた。


「あ、これだこれ。」


 俺はメジャーを出した。


「カズ様(お館様)、これは何ですか?」

「これはメジャーと言って、長さを測るものだ。ジョスさんが棒みたいなもので家の中を測っていただろ?あれの紐版だと思ってくれるとよい。」

「これで、何を測るのですか?」

「ディートリヒとナズナの胸とかの大きさを測るんだよ。」

「へ?何故ですか?」

「それはね、これです。

ててててってて~“ブラジャー”と“パンティー”!」


ごめん…、ハイテンションでないと見せられない…。


「あ、これは本に出ていたモノですね。」

「うん。ただ、俺が帰ったのはナズナに会う前だろ。だからそんなにサイズと色が無いんだよ。」


 俺はBとCカップの75、80、85の3種類3色の計9着を出した。


「カズ様、こんなにも種類があるのですか?」

「あぁ、これはね。しっかりとサイズを測らないと自分の胸を綺麗に見せることができないって事からいろんなサイズがあるんだよ。正直サイズの測り方なんて俺も分からなかったけど、教えてもらったからね。」

「自分でも分かるんですか。」

「そう。そのためのメジャーだ。」

「カズ様、お願いします。測ってください。」


 ありゃ、目が猛獣になってる…、ナズナに至っても同じだ…。

でも、ナズナに合うサイズがBで大丈夫か…、そこだけが気がかりだ…。


「んじゃ、先ずはディートリヒから。

トップが88㎝、アンダーが73㎝だから差は15㎝か…、てことはC75って事かな?んで、ヒップが82㎝だからSかMサイズ…。ディートリヒ、上がC75 で下がMのセットが3つあると思うけど、それを着てもらっていいかい?」

「はい。」

「んじゃ、次はナズナね。

トップが80㎝、アンダーが68㎝だから差が12㎝、B70か…、ごめん持ってきてないな。ヒップは74㎝だからSかMだね。一度B75を着てもらっても良いかな。」

「はい。」


 二人は、ベッドの脇で、着替え始めるが、初めての金具に苦戦しているようだ。

おれも嫁さんのブラの装着方法しか知らないので、その方法を教える。


「なんだか、クルッと回しながら“ぶらじゃ”をするのってドキドキしますね。」

「そうですね。何か防具を装備しているようで楽しくなります。」


 あ、そう言えば最近ではビキニ・アーマーとかもあるとか聞いた事があるな。

でもあれってお腹とか寒くないのかね…。

おっさんがあれすると腹が冷えて下痢するんだけど…。

なんて思いながら、ディートリヒとナズナを見る。


 ディートリヒは気分が良いらしい。ふんふんと鼻歌を歌いながらクルクル回って鏡を見ている。

一方ナズナはやはりブラが大きいのか、ダブダブ気味のぶらを見ながら沈んでいる。

俺は、余ったブラの中にあるパッドを1セット出して、ナズナに渡す。


「ブラの下にこれを入れる隙間があるから、入れてみると良い。」


「お館様、これは、防具の下に切る肌着を一枚入れるような感じですね。」


まぁ、そんな感じなのかな…。俺には分からないが…。


「お館様、どうでしょうか?」

「ん。綺麗だよ。これで“余所行きのべべ”着てくと、みんな見とれちゃうくらいだな。」

「カズ様、私は?私は?」

「ははは。ディートリヒも綺麗だよ。

 これ着て伯爵家に行くと、みんなびっくりするだろうね。」


 二人は、何か考え事をしている。

そして、二人が同時に声を上げた。


「カズ様(お館様)、これをお店で売ることはできませんか!」

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