第9話 エルナンデス一族
「それは……」
「さあ、ご飯が冷めてしまうよ。父さんも母さんも、お話は一旦それくらいにして食べましょう。僕もリディアも腹ペコだから」
「そうだったな。リディアさん、さあ食べてくれ」
意を決して打ち明けようとすると、クラウスさんが話題を変えてくれた。私の方を見て意味ありげに微笑んだので、庇ってくれたのだろう。まだ心の準備が出来ていなかったので、正直助かった。
(すごく嬉しい。でも食べ終わったら、きちんと話そう。半妖精との類似点についても聞きたいし……)
食べながらどうやって話すか考えよう。そう思っていたのに、ご飯が美味しすぎて夢中で食べてしまった。
「美味しい……これ、すごく美味しいです!」
「まあ嬉しい! こんなに喜んでもらえると作った甲斐があるわね。我が家の男どもは全然感想を言ってくれないもの」
私の食べっぷりを見ていたお母様がとても嬉しそうにするので、ますます食べてしまう。
「あまり褒めると、無限に食事が出てきますよ。母さんは限度を知らないから」
「その通りだ。リディアさん、お腹がいっぱいになったら無理してはいけないよ」
「まあ失礼ね!」
笑い合う三人を見ていると、こちらまで幸せな気分になれる。本当に仲の良い家族なのだろう。自分には縁遠い光景に胸がチクリと痛んだが、それ以上に温かかった。
「そういえば、我々の自己紹介もまだだったな。私はヘルマン・エルナンデス。クラウスの父親だ。この帝国で、宰相のようなことをしている」
「私はクリスティーナ・エルナンデスよ。よろしくね。……リディアちゃんって呼んで良いかしら?」
「も、もちろんです。よろしくお願いします」
とても優しそうなご両親の姿は、自分の両親と重なってみえた。久しぶりに触れる家族の温かさを、今だけは味わっていたかった。
食事が終わって談笑も一段落着いたところで、私は思い切って話を切り出した。
「あの! 先ほどのことですが、クラウスの治癒は聖女の力によるものなのです。私は隣国のゴーシュラン王国で聖女でした。今はもう聖女ではないのですが……」
私は聖女の力のこと、妖精から聞いたエルナンデス一族のことを話した。
「私も聖女の力がどのようなものか分かっていなかったので、何か知っていることがあればお聞きしたと思いまして……」
私の話を聞いて、ヘルマンさんは納得の表情を浮かべた。
「そうか……聖女の力か。どおりでクラウスが完治した訳だ。我々はゴーシュラン王国の聖女について詳しくないが、妖精、半妖精の力については少しは話せるだろう。ですがリディアさん、今日はもう遅い。話は明日以降にしよう。良かったら泊まっていってください」
「それが良いわ! リディアちゃん、泊まっていってちょうだいな」
(ご飯までご馳走になった上に泊めてもらうなんて悪いわ……)
断ろうと思ったが、クラウスのお礼だからと強く言われてご好意に甘えることにした。
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