ブラックコーヒー

yukisaki koko

今日も今日とて

 今日も今日とて、にっがいブラックコーヒーを飲みました。喉を通した時、顔を顰めてしまうくらいの。そんなブラックコーヒーを一日の終わりに必ず飲むようにしてるんです。これがないと私は生きていけないんです。真っ黒なコーヒーよりも苦くていやーなものが世の中には溢れているんです。それをコーヒーの苦味で溶かしてやらないといけません。


 安心するんです。苦いことも辛いことも。嫌なはずなのに、苦いとわかって飲むコーヒーは心地良いんです。一日煮込んで出た灰汁をコーヒーは溶かしてくれるんです。


 とは言っても、私はまだ大学生だったりします。社会の味も知らんし、制服やランドセルに体を縛られることもありません。宙に浮いてしまってるんです。だからこんなことばっか考えてしまうのかもしれません。


 ところで最近、大学の二回生になりました。もう一年ほど経ったら周りは就活を始めるんでしょうか。終活という言葉を聞くようになってそれなりに時間が経ったような気がしますが、就活もまた終活な気がします。というか生まれてからずっと続く時間もまた、終活な気がします。だけど私は、普通にしてれば普通に生きられる国に生まれてしまったんです。生まれてからずっと、欲しいものは周りを見ればどこかにありました。何不自由のない幸せな時間が、私の当たり前になったんです。仕方ないなあ、と思いますが、儘ならないなあとも思います。そんだけ幸せの中に生まれてしまったので、生きてく過程で知ることは全部、不幸せなものになってしまうんです。世の中を生きてくためには我慢しなければいけません、でも、生きることは終活なんです。でも、終活は幸せなものであってほしいんです。だから、私はずっとわがままを教えられてきたように感じてしまうんです。


 人生は一度きりという言葉をよく聞きますが、確かになあと思います。死んだ後のことはわかりませんが、きっと私という人として生きることは最後でしょう。魂というものがあったとしても、この体を脱いだらそれが私かどうかなんてわかりません。私という体を脱いだ元の私がまたどこかで芽吹くんでしょうが、私は消えるんです。でもそれでいいかなあと思います。生まれる前のことを恐れていないなら、死んだ後のことも恐れないというのは道理ではないでしょうか。


 話が逸れたような気がしますが、思考なんてそんなもんです。あっちこっち行って、迷子になるんです。


 今は夜の十一時ごろなんですが、このくらいの時間にコーヒーを飲むのが一番いいんです。九時だと早すぎます。まだ、灰汁が出てくるかもしれません。十一時なら大丈夫でしょう。ただ、夜眠れなくなるのが困りものです。カフェインがどの程度効いているのかはわかりませんが、単純に苦くて目が冴えてしまうんです。それとも、一日の気疲れの塊が砂糖のようにコーヒーに溶けてくれるからなんでしょうか。どっちもあるような気がします。なんとなく、死ぬ前にも苦いコーヒーを飲みたいなあと思ったりします。類は友を呼ぶと言いますが、これも似たようなものなんでしょう。苦いというのはマイナスなもんで、だから一日の中で出たマイナスも一緒にまとまってくれるんです。マイナスにマイナスをかけるとプラスになるので心地良いと感じるんです。とんちのように聞こえますけど、不自然なほど腑に落ちるのはなんでなんでしょうね。


 にっがいブラックコーヒーを飲んだら、できるだけすぐにベットの中に入るようにしています。さっきも言いましたが、出来るだけもう灰汁が出ない時間にコーヒーを飲むようにはしてるんですが、それでも灰汁が出てきてしまうときはあるんです。そんなときは口の中に残った苦みを絞って転がして、必死にそれを溶かそうとするんですが、そんなことをしていると、自然と意識が離れていくような気がするんです。眠れなくても、眠った気になるんです。だからベットに入ります。座りながら眠るというのも、私にとってはちょっとおかしな話で、違和感があるんです。だから眠れなくても眠った気になりたいんでベットに入るんです。



 そんなこんなで、今日も今日とて一日を終えるんです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る