第1話 ケース352 広崎 浩二の場合:重いといつも振られる僕に合うひとはいないのか

「なんかさ、重いんだよね。もう無理、さよなら」


またこのセリフなのか…。


春になり、出会いに浮き出すこの季節、僕は彼女から別れ話をされた。

それも電話で。


別れるなら、ちゃんと話し合いたいよ。いつか空いてない?会おうよ。

僕がそう言うと、彼女はこう言い放った。


「無理。あんた直接会うと絶対別れてくんないし。まじで無理だから」


僕はしばらく呆然としてしまった。

別れる兆候などなかった。

この間も遊びに行ったし、家にだって行き合う仲だった。

いや、もしかしたらあったのかもしれない。しかし、僕は全く気が付かなかった。


何がいけなかったのか。

僕は途方に暮れて歩いていた。

彼女に寂しい思いをさせないようLINEは適度に送っていたし、電話もよくしていた。

何かが欲しいと言われたら、君の喜んでいる顔が見たいからなんでも買ったし、君の家にもよく行った。


しかし、僕だって呆然としはしたものの、どこかで予兆していた部分もあったと思う。

僕はいつだってこんな振られ方をするのだ。


相手から告白されていようといまいと、始めは相思相愛でもいつからか僕ばかりが好きになってしまい、次第に振られるルートに入ってしまうのだ。

そして振られるセリフもいつも同じ。


「なんか重いんだよね」


なぜ僕はいつもこんな感じなのか。

別段嫌なことをしてしまっているという自覚はない。彼女のことは自分ができる限り大切にしているつもりだ。

しかし、こんなにおんなじセリフで振られてしまうということはやはり僕は重いんだろう。

だけど、何が悪いのか。僕には全くわからない。


僕は一生このままなのか。


そんなことを考えながら歩いていると、僕はいつもとは違う道に出てしまっていることに気がついた。


どこだここ?

来た道どっちだっけ?

道は入り組んでいて、どこから入ったのか、どこから出れば大通りにでるのかもわからない。

参ったな、今日は最悪の日だ。

そう思いながら、うろうろしていると、ある家が見えてきた。


その家は、一目で普通の家と違うことがわかる。

壁は紫だし、屋根は真っピンク。普通ならあり得ない家だ。センスを少し疑ってしまう。少なくとも僕の趣味ではない。

おそらく、誰かの家なだけではない、なにかのお店でなければあり得ない外観だ。

むしろお店ならば、目立ち都合のいい外観だと言えるだろう。


そう思い店名を見ようとかかっている札を見てみる。

すると、そこにはこれだけが書いてあった。


『ヤンデレと出会いたいあなたへ』


ヤンデレ?なんだそれ。あ、なんかすごい重い人?だっけ。連絡何百件とかしてくる人みたいな。

前なんかアニメでヒロインの恋敵でいたかも。

ていうか出会いたいってどういうこと?出会いたいと思ったらヤンデレとだけ出会えるってこと?


僕はその看板にはてなマークが止まらなかった。

すると、突然ドアががらんごろんと音をたてて開き、


「いらっしゃいませ、よかったら中へどうぞ」


と店の中から人が出てきた。

うわ、見つかってしまった。こういう入る気のない店でそう言われてしまうとしまったと思ってしまうのはなぜだろうか。

というか、この人女性?男性?どちらかわからない。

だけど、綺麗な人だな。


僕は誘われるまま、店内へと足を踏み入れた。

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