第38話 逆転

「もろたで、ジェンシャンナイト・シェリダン!」


 タキが、背後から銃で狙っている。


「くっ」


 こちらは、シールドも防御に使っているため、反撃できない。


 だったら。


 敵の射撃と同時に、こちらも武器を展開した。


「ディスク・アックス!」


 空いている手から、斧を投げ飛ばす。


「なっ!?」


 相手の腕には足らなかったが、武器には命中した。


「ぬおっ!」


 タキの銃が暴発し、弾が魔王の目に直撃する。


 魔王が目をかばう。


 そのスキに、マーゴットが魔王の腹を殴った。


 しかし、魔王はとっさにローブで腹を守る。ダメージを吸収し、マーゴットに蹴り返す。


「しつこい男ですわ!」


 マーゴットは両手に火炎弾を作り出し、魔王に投げつけた。


 魔王はすべて、ローブで受け止める。


「加勢しに行かなくて、いいのか?」

「こっちは、お前を押さえるのがやっとや」

「俺は魔王の味方じゃない。共闘するなら手を貸す」


 こいつに、王都を攻める気はない。なら、厄介者をまず倒すべきだ。


「せやな。こっちの目論見がバレた以上、魔王に手を課す必要もないんやった。不意打ちって戦い方も、性に合わん。休戦と行こか」


 タキが、銃を拾う。


「ただし手は貸さん。休戦は一時的や。魔王を倒したら、次はお前やからな!」

「それでいい」


 共闘ではない。各々が魔王を倒す。これで話はまとまった。


 障害さえ消えれば、ソレでいい。


「ドクター・イシロウ。やはり我の邪魔をするか。己のローブで技を受け流されて果てるがよい」

「じゃかあしいわ! 無理した分の跳ね返りはキツイで!」


 タキが、珍しく格闘戦でローブを攻撃する。


「やけになったか、ドクターッ! こんな攻撃……ぬお!?」


 いつものように、魔王はローブで受け流そうとした。


 しかし、ローブが簡単に破れる。すぐにマーゴットが攻撃を繰り出す。


 魔王に、大ダメージが入った。


「残念やったな。そのローブとワシのインナーは、同じ素材なんや!」


 同じ力がぶつかり合うことで、威力が対消滅してしまう仕組みなのだ。


「ダメージを受け流す能力は、そこまで万能やあらへん。すぐに壊れてしまうんや。せやから装甲が必要やったっちゅうわけや」


 ローブの耐久値まで考えて、相手に渡していたと。どこまで狡猾な奴なのか。


「しかし、我にはウォリハルカニウムがついている。無敵・無限のエネルギーが!」


 胸部の装甲から、赤黒い宝玉が光りだす。


 おびただしいほどの魔力を放ち、マーゴットでさえ近づけない。


 だが、オレは宝玉の違和感に気づく。今までの輝きと比べて、どうもイビツだ。まさか。


「アホか。それも計算済みや」


 やはり、タキがなにか仕掛けていたか。


「まさか、宝玉が!?」


 赤黒い宝玉に、ヒビが入る。

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