第10話 ミッション:魔物に襲撃されている街を救え!

 小国ライコネンへ入る。


 まだ家々が燃えていて、焦げ臭い。


 兵隊や住民たちが、オークなどの魔物たちに捕まっている。噴水のある広場に、全員が集められていた。


 一人の少女の髪を、オークが引っ張る。

 中央に連れてきて、処刑を行おうとしているのか?


「フハハーッ! 魔物ども、素材よこせーっ!」

「な、なんだ!?」


 オークどもが驚きの声を上げた。すぐに、オレの銃に貫かれる。


「なんだあれは、敵か?」


 ライコネンの兵隊たちが、オレの姿を見て不審がった。


「撃て! ライコネンの侵入者を倒すんだ!」


 もはやライコネンの兵隊たちは、誰が敵か味方か判別できていない。

 オレにすら、矢を放った。


「わわ、どうするよ?」

「大丈夫。磁力操作!」


 脳内に、ニョンゴから指示が出る。


 指示通り、オレは矢に向けて手をかざした。


 矢がひとりでに、止まる。軌道を変えて、モンスターたちを射抜いた。


「慌てないでください。彼は味方です!」


 フローレンス姫が、馬車から出てくる。


「彼は魔女様が命をかけて遺してくださった、騎士さまです。ライコネンの戦士たちよ。この竜胆の騎士ジェンシャン・ナイト シェリダンに続きなさい!」


 姫からの声に、兵士たちが活気づく。


 馬車には重火器も装備されていて、遠方のオークも全滅させた。中にいるフローレンス姫も無事だ。


「敵襲だ!」


 ガイコツの兵隊たちが、隊列を組んで襲ってくる。


「邪魔だ!」


 ジーンが馬車から取り出して、槍でガイコツ騎士たちを蹴散らす。

 槍に斬られたガイコツどもが、パワワーっと浄化されていった。

 あの槍には、聖なる属性の魔法が込められているのか。


「お、女騎士ジーンだと!? ライコネンの姫君が城を奪還しにきたぞ!」


 魔物の兵隊たちが、ホラ貝を吹く。モンスターがいたるところから現れた。


 ジーンは魔族にとって要注意人物らしく、ほとんどがジーンへと集まってくる。


 無数のケンタウロスたちが、ジーンを囲んで動きを封じ込めた。


 対するジーンも、ケンタウロスの脚に槍を引っ掛けて転倒させる。だが、同じく槍で武装したケンタウロスに苦戦していた。


「クッ! この」


 取り囲まれ、ジーンは身動きが取れない。槍で突破口を開こうとするが、数が多すぎる。馬車の重火器すら、追いついていない。


 しかも、例のエンプーサ共まで群れで現れた。


 これはアカン。


「ヒャー!」


 オレは、両手のビームを当たり一面に撒き散らす。


 ジーンの周りを埋め尽くしていた魔物を、秒で壊滅させた。


 エンプーサの集団も、焼き尽くす。

 ケンタウロスも強さの調査をしてみたい。

 が、今は相手をしてやる暇がなかった。おとなしく秒殺されなさい。


「大丈夫か?」

「すまん!」

「どうってことねえ! それより、住民を避難させよう」


 馬車から、複数のドローンを飛ばす。氷魔法を応用したシャワーを、街中に撒き散らした。


 街を覆っていた炎を、みるみる消化していく。


「残っている兵は、住民を安全な場所へ! 城の中心部へは、このジーンとフローレンス殿下で行く!」


 生き残っていた兵隊が、生気を取り戻す。


 引き続き城周辺の街で、魔物たちの撃退を行う。

 高速移動するウルフも、飛行して狙いを定めづらい巨大コウモリも、パワードスーツを身に着けているオレの敵ではない。

 コボルドもリザードマンも、等しく剣で切り裂く。


 ライコネンの街は、ひとまず安全だろう。


「ニョンゴ。ジーンのヨロイを強化って、できるか?」

「可能だけど、扱えるかどうかは彼女の力量によるよ!」

「構わん。生存率を上げたいんだ」

「オッケー。だったらお安い御用さ!」


 オレがモンスターの素材を回収し、ニョンゴが開発する。それを改めて、オレが改変して。


「できた!」


 ジーンのビキニアーマーを補強するプロテクターが、完成した。


「こいつを着てくれ、ジーン!」


 オレは、出来上がった装備品を投げつける。


「ヨロイの上に着るんだ!」

「了解!」


 ジーンが、腕にプロテクターを付けた。脚に、赤いミニスカートを穿く。背中はローブで覆った。


「プロテクターを、敵に向けるんだ!」

「やってみる!」


 腕を伸ばし、ジーンがモンスターに照準を合わせた。


 バシュッという心地よい音とともに、怪物の頭が蒸発する。


「すごい!」

「うまくいった!」


 オレのビームを、ジーンでも出せるようにしたのだ。

 さすがに、威力は控えめにしているが。


「リアクターで魔力を増幅させて撃ち出すんだよ。魔力を消費するから、いざってときに使うんだ!」

「感謝する!」


 他のパーツは、ジーンの魔法防御力を著しくアップしてくれた。ローブは敵の炎ブレスを反射し、脚力を上昇させてキックの威力を上げる。


「また、囲まれそうだよ。ジーン! 槍を地面に叩き込むんだ」

「……こうか?」


 ニョンゴの言葉を受けて、ジーンは跳躍した。落下と同時に、槍を地面に突き刺す。


 雷撃が足元に展開し、モンスターが感電して黒焦げに。


「さっきの増幅装置で、光線のエネルギーを電撃に変えたんだ」

「ありがたい。感謝する魔女殿!」


 これなら、ジーンの脚を止められはしないだろう。


 あとは、騒ぎを聞きつけて強いモンスターが出てきたら……こないな。


 やけっぱちになって、街を壊滅させるかと思ったが。そのつもりなら、最初から街なんて焼き払っているか。この都市の有用性を、この魔物たちだってわかっているのだ。


 敵の目的は、なるべくこの国を無傷で手に入れることだったのだろう。


「突撃だ。城を奪還する!」 


 ジーンが城の中へ入り、中にいる魔物兵隊を蹴散らす。


 お付きに守ってもらいながら、フローレンスは城へ。自身も参戦し、負傷した自軍の兵隊たちに治癒の魔法を施している。


 オレはお行儀悪く、窓から入らせてもらいますよ。


「たのもーっ!」


 ガラスをぶち破り、王の間の中へ。


「なんだい? 騒々しいな、おい」


 黒髪で灰色の肌を持つ女性が、玉座に座っている。

 二メートル位はあるだろうか、巨体を持ち上げるかのように立ち上がった。手には、ムチを持っている。


「この城を荒らすのは貴様か、おい?」


 筋骨隆々の女性が、オレを見下ろした。ムチに、人間の皮や血がこびりついている。


「んだ? すると、テメエがボスか?」


 ハイレグアーマーとは。しかも、腹筋女子とはな。


「ブチーオ様の城だと知らずに侵入したってのか、おい? せっかくお楽しみだったってのになあ、おい」


 女オークの足元には、剣を持ってうずくまる女騎士たちが。みんな身体中にアザを作り、ボロボロの姿になっていた。事切れるギリギリまで、なぶられたようだ。


 男の騎士もいたが、全員が一撃で殺されている。女性をひたすらいたぶるのが、このオークはお好みらしい。


「ひどい。骨までむき出しじゃないか」


 ニョンゴが、女騎士たちの様子を見る。


 周到な攻撃に、心を砕かれたのだろう。騎士たちはみんな、戦意を失っていた。


「治してやってくれ」


 騎士たちの治療を、ニョンゴに頼む。


「オークロードって言うから、てっきりブ男なんだと思っていたぜ。たしかに、性格は凶悪な性格ブサイクってところだが」

「……あたしを侮辱するか、おい。命はないと思えよ、おい」

「テメエこそ、今まで殺したヤツラに呪われながら、念仏でも唱えるんだな」


 オレが挑発すると、ブチーオがキレた。


「上等だ、おい! たっぷりかわいがってやるよ、おい!」


 ブチーオがムチを振り回す。


 空気を切り裂き、衝撃波を飛ばしてきた。


 波動がスーツに当たり、火花を散らす。


「今のは、悪くなかったぜ」


 上から目線で答えると、ブチーオがさらに怒りをあらわにした。


「だったらもっと、くれてやるよ!」


 さらにブチーオが、ムチを繰り出してくる。

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