第5話
藤井ももと福江駅で別れてから中央公園に向かった。と言ってもショッピングモールの中のゲームセンターが目的だが。コインゲームエリアでスロットを打ちコインを手に入れ、色々な台で増やしていく。そしていつも増やそうとする過程でコインが無くなってしまうので今日も遊べて1時間程だろう。
カフェテラスの人が少なくなる13:00位にご飯を食べるようにしたいから、あっちに着いたら小説でも読もう。それで11:30位にゲームセンターに行こう。そんな事を考えていると中央公園が見えだした。
今は10:30か。1時間ほど余裕がある事を知り、お気に入りのネット小説の続きを読む。今は9月で暑さは少し残っているが過ごしやすい。子供連れの家族の声や遊びに来ている中高生の声がちょうど良いBGMとなり、あっという間に1時間は過ぎ去った。
「よし、行くか」
小さくつぶやき、ゲームセンターへ向かう。カフェテラスに人が既に多いな、そう思った。
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コインゲームエリア、相変わらずうるさい所だが、嫌いでは無い。既に崩しておいたお金を財布から出しお気に入りの台に投入する。
よし揃った。今日はついているかもしれない。フィーバーのようになったため、適当に回す。しかし、100円目にしてコイン70枚ほど手に入れた。
その次に、中々当たりやすい台に移動し5枚ずつベットしていく。堅実が俺のモットーだ、そんな事を思ってプレイしている間にコインは200枚くらいになっていた。少しずっしりくる。
時刻は12:00すぎ。いつも負けることが多い、いわば俺の中でのクソ台に座る。
コインを1枚ずつ流し込み、上手いことコインを落とす台だ。暇潰しには丁度良いのだが如何せん増えない。
…コインカップの中身が軽くなったな。そんな事を思いながら、その台から去る。
時刻は12:20ほどになっており、だらだらカフェテラスに向かおうとする。今日は中々遊べたな、そう思いながら。
コインゲームエリア出口に向かう時にナンパ?の様な声が聞こえた。知らない女性だろう、そう思いながら目をやると俺と同じ高校の女子で、更には知り合いの女だった。流石にこの状況を無視してしまうと飯が不味くなると思い、男たちに近づき
「俺の彼女に何やってんの?」
考え無しにそう言ってしまった。
その女、藤井ももは
「優希くん!」
と俺に飛びついてきた。それこそ本当に彼女の様に。中々の名演技じゃないか、そう思いながら言葉を紡ごうとする。その時に俺の胸元で藤井がもごもご何か言っていたが緊張で何を言ったのかは分からなかった。
「俺の彼女なんです。ごめんなさいね。」
出来るだけ事を荒立てない様に丁寧に言葉を選ぶ。
「…チッ」
そう言って2人は去っていった。
「大丈夫か?変な所触られてないか?」
藤井に聞く。もし触られていたなら追いかけるのも厭わないつもりだったが
「触られてないよ。大丈夫」
と俺に抱きついたまま返事をする。流石に人の注目が集まってきた。
「流石にもう離れないか?」
「…やだ。」
当人も初めての経験で怖かっただろうし暫くは良いかと抱きしめられる。
俺からも緊張が抜け、藤井の身体が女の子なんだなと嫌でも意識してしまった。太っている訳では無いのに柔らかさがあってずっとこのままでも良いか、そう思ってしまうほど心地良かった。
「来てくれてありがと。」
しばらくして、そう言いながら俺から離れる。その時の俺の表情の変化がバレたのか
「これ以上は、私を彼女にしてくれたら、、ね」
そうあざとく首を
「ねぇ、今決めて。私とまだハグしたい?」
「それは…」
追加攻撃に言い淀んでいると
「やっぱりハグくらいは何時でもしてあげる!もちろん優希くんだけだから!!」
「ご飯行こ!お腹すいてきちゃった。もうカフェテラス空いてるよね。」
そう言って俺の手をとり、指を絡めてきた。女の子は手も柔らかいんだなと思った。
「分かったから引っ張るな。」
そう言って藤井の隣に並ぶ。
「藤井お金持ってるの?」
と聞くと、不満げな顔で
「これからは'もも'って呼んでくれないと反応しないから!後、お金は持ってるから!」
と言ってきた。なんか可愛いなと思いながら
「分かったよ、もも」
と返してやった。恥ずかしいなら止めればいいのにと思う程ももの顔が赤くなっていた。それを隠す様に俺の腕に身体を押し付けてくる。
「そういえば抱きついてた時何言ってたんだ?」
そう聞くと
「大好き」
頬を紅潮させて、潤んだ目で俺の目をしっかり見つめてそう言ってくる。
俺の顔も赤くさせられたことは…言うまでもないか。
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