第18話

 次の日の朝。

 複製を済ませて、5個薬草をバックに入れ、待っていると、アラン君が迎えに来た。


 アラン君の頭には、海賊のような巻き方で、黒いバンダナが巻かれている。


「アラン君、早速つかってくれたんだ」

「あぁ」

「似合っているよ」


「ありがとう。さぁ、行こうか」

「うん……」

「緊張しているのか?」

「少し」


「大丈夫、ほとんど片づけたから。ミントは離れて、見ていてくれればいい」

「うん、分かった」


 二人で肩を並べて歩き出し、洞窟へと向かった。


 洞窟に到着する。

 岩石の壁に人がすんなり入るぐらいの入口がある。


 ひび割れたような入口で、自然に出来た感じだ。

 入口の周りには、苔や蔓草が生えている。


「苔で滑るから、気をつけろよ」

「うん」

「ランタンは、ミントが持っていてくれ」

「分かった」

 

 洞窟の中に入る。

 中はとても広く、入口の光だけでは、奥が見えないくらいだ。


「結構、涼しいね」

「あぁ、そうだな。足元、デコボコしているから、気をつけろよ」

「うん、ありがとう」

 

 転ばない様に、アラン君の後ろを慎重に歩く。


「ランタン、私で大丈夫? 暗くない」

「大丈夫だよ」

「魔物、本当にいないね」

「だろ?」


「道は分かるの?」

「大丈夫。地面を見てくれ」


 地面をみると、赤い塗料が塗られている。


「俺がここに来るたびに、印を付けといた」

「なるほどね」


 奥に来れば真っ暗かと思えば、そうでもない。

 どうやら、天井に亀裂が入り、光が漏れているようだ。


 30分ぐらい歩いていると、細い道に差し掛かる。

 アラン君が立ち止まり、「疲れてないか?」

 と、振り返る。


 私は立ち止まり、「平気」

「ここから更に20分は掛かる。少し休んでおくか?」

「そういうことなら、休みましょ」

 と、私は言って、地面に座った。


 アラン君も隣に座る。

 私はバックから水筒を取り出し、水を一口飲んだ。


「飲む?」

 と、言って、水筒を差し出す。


「――いや、いい」

「なんで間があったの?」


「い、いいだろ別に」

「クスッ」

 と、笑って、水筒をしまう。


「ねぇ、アラン君」

「なんだ?」


「これが終わったら、旅に出るの?」

「あぁ、直ぐではないけどな。一緒に来るか?」

「いいの?」


「俺は構わないが」

「――正直、迷っているの。自分の気持ちもよく分からないし、少し考えさせて」


「分かった。さて……」

 と、アラン君は言って立ち上がり、「そろそろ行くか」

 私も立ち上がり、おしりの土をパッパッと払うと「うん」


 15分ほど、細い道を歩く。


 アラン君が立ち止まり「ちょっと止まってくれ」

 私は立ち止まると「どうしたの?」


「ここから少し行くと、広場に出る。そこが、最深部だ。おそらくボスがいる」

「いよいよってことね」

「あぁ、慎重に進もう」


「ラジャー」

「――慎重に進もうな」

「なぜ二回言う?」


 アラン君は「ふっ、心配だったからだよ」

 と、笑うと、また歩き出した。

 私も後を付いていく。

 

 5分ぐらい歩き、広場に出る。

 辺りは壁に囲まれている。

 光は十分にあり、ランタンはいらないぐらいだ。


 奥の方にゴブリンが3匹。

 一ヵ所に固まっていて、2匹は向かい合い

 一匹は私達に背中を向けて、座っている。


 こちらには気づいていない。

 アラン君が言っていたボスっていうのは、おそらく背中を向けているやつ。


 普通のゴブリンが1mぐらいなら、あいつは2mぐらい。

 筋肉も、普通のゴブリンと比べ物にならないぐらいに付いている。

 例えるならゴリマッチョ。

 

 小声で「どうするの?」

「たったの3匹だ。このまま仕掛ける」

 私はバックからナイフを取り出すと「私も戦う?」


「いや、ここで待機していてくれ」

「分かった」


 アラン君が見つからない様に、ゆっくりゴブリン達に近づいていく。 

 アラン君が狙ってるのは……やっぱりボスね。

 鞘から剣を抜き、一気に斬りかかる。


 ボスがうめき声をあげる。

 だが傷は浅く、血がユックリ垂れる程度だった。


 2匹の普通のゴブリンは素早く立ち上がり、

 グルルルと牙をむき出し、アラン君を威嚇する。


 アラン君は後ろに飛んで距離を取る。

 ボスがユックリ立ち上がる。


 アラン君を睨めつけるかのように見ると、激しい雄叫びをあげた。

 アラン君は怯むことなく、様子を見ている。


 先に動いたのは……普通のゴブリンが一匹。

 掌サイズの石を拾い上げ、握りしめると、アラン君に殴り掛ろうとする。


 アラン君はヒラリとかわし、ゴブリンの背中を斬りつけた。

 すかさず呪文を唱え、「ファイヤーボール」

 と、背中に打ち込む。


 ゴブリンが吹き飛び、こちらに倒れこむ

 ピクピクと動いている。

 まだ生きているようだ。


「ミント! そいつにトドメを」


 私は両手にナイフを握る。

 だが震えて動けない。

 どうしよう……。


 アラン君が駆け寄ってきて、

 死にかけのゴブリンを斬りつけ、トドメをさす。


「悪い、無理だったな」

 と、アラン君が言った、その時!


 アラン君の横から普通のゴブリンが、飛び蹴りをしてきた。

 防御する暇もなく、アラン君は倒れこむ。


「アラン君!」


 いつの間にか、ボスがアラン君の直ぐ側まで来ていた。

 ボスが拳を振り上げる。


「避けて!」


 アラン君は間一髪、転がって避けた。

 ボスの攻撃は凄まじく、地面がへこんでいた。


 アラン君は立ち上がり、薬草を食べる。

 普通のゴブリンとボスが、アラン君の方へと歩いていく。

 

 アラン君が呪文を唱えている。


「フレイム」


 広範囲の炎が普通のゴブリンと、ボスの左足に当たった。

 普通のゴブリンは、もがき苦しみ、ボスは自分の手で火を消していた。


 普通のゴブリンはそのまま、倒れこみ、動かなくなった。

 あとはボスのみ。

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