第26話 価値観とか、誠実とか、嫉妬とか
しあわせの定義って、なんなんだろうな?
みんなでガヤガヤ波打ち際を歩きながら、いろんなことを思う。
ふいに、視界に舜が映った。
「舜、本当にごめんな。プレゼント用意してなくて」
男前の舜は、なんだそんなこと、とばかりにおれたちにしか見せない笑顔で笑いかけてくる。
「努がそこまで言えたら合格だ。その調子で、愛の告白もがんばれよ」
「なっ!?」
あうあうとなさけなく口を開けたり閉めたりしているおれへ耳打ちする。
「糸子さんもまんざらでもなさそうだし。誠実に告白すれば、いつかは受け入れてもらえるかもな?」
はうっ。誠実ってなんだっ!?
落ち着け、おれ。誠実の意味くらい知っているさ。誠実とは、裏切らないこと、やさしくすること。そして、しあわせにしてさしあげること。だったかな?
いや、これはあくまでおれの個人的な解釈でもってだな。
「もう、努様っ!!」
おっと? なぜに糸子さんがドアップなんです? しかも、頰を赤らめていらっしゃる。かわいい。
「ですから、あなた様の脳内はダダ漏れですとあれほど言っているではありませんかっ! どうしてそうデリカシーのない、はずかしい……」
最後にはうつむいてしまった糸子さんを、やさしい視線で見守っている男がもうひとり。
薫……。
お前も、糸子さんのことが好きなのかよ?
いつから糸子さんと知り合いになったんだよ。まさか、最初にはざまに行く前からの知り合いじゃないよなっ!?
――いかん、いかん。ここで仲間割れなんてしたくない。おれのつまらない嫉妬で、この関係を壊したくない。おれのバカ。
うん。誤解だ。全部誤解だ。薫がおれを、はともかく、おれたちを裏切るようなことをするはずがないんだ。こんなに正直でやさしくて、賢い男をおれはほかに知らない。
だから――。
「ごめんな、薫」
軽く肩を叩いてあやまっておいた。
つづく
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