猫ロボと正露丸
暗黒星雲
第1話 不思議な猫ロボ
学校の帰り道、僕は白い猫を見つけた。
そいつは桜の木の根元で全然動かない。死んでるのかと思って近づいてみる。よく見たらそいつは猫ロボだった。首輪にメーカーのロゴと型式番号が刻印されていたので気づいた。
これは交番に届けるべきだ。しかし、交番は学校の向こう側になる。今来た道を引き返さなくてはいけないし、歩く距離も倍以上になってしまう。ちょっと面倒だなと思っていたら、その猫ロボは赤い目を点滅させた。
「水を下さい」
人語を喋ったのでビックリした。猫ロボは通常、ニャーニャーと猫の鳴き声をそのまま発するだけと聞いていたからだ。
「水、飲むの?」
「はい。体内の水分が極端に不足しています。稼働状態を維持できません」
猫ロボも水を飲むんだ。そう言えば、猫ロボは普通にペットフードを食べると聞いた。なら、水を飲んでも不思議ではない。僕は背負っていたランドセルから水筒を取り出した。朝に入れた麦茶は全部飲んでしまったので、今は水道水が入っている。
僕は水筒のキャップを外して水をそそぐ。そして猫ロボの口元へと当てた。
猫ロボは本物の猫のように舌を動かし、ぴちゃぴちゃと音をたてて水を飲んだ。すると、真っ赤な目は次第に青色に変化し、そして黄色になった。
ああ、そうか。赤はトラブル信号で、青はそのトラブルが解消したというサイン。今の黄色は普段の色って事だな。
「もう大丈夫?」
「ありがとうございます。私の名前はサラ・ヌール・イリューザ。貴方は? 」
「僕は
「浩平君ね。私の事はサラって呼んで」
「はい。サラさん」
「浩平君。一つお願いがあるんだけど、いいかしら」
「はい。お願いとは何ですか?」
「正露丸を少し分けていただきたいのです。日本では各家庭に常備してあると伺っているのですが」
「正露丸ですか。多分、家にあったと思います。すぐに必要なんですか」
「なるべく早い方が良いですね」
「わかりました」
僕は急いで自宅へと向かった。ほんの数百メートルだったけど、猫ロボと一緒に川沿いの道を走った。
自宅の戸棚を漁って正露丸を見つけた。茶色の瓶入りで黄色いラベル。これが欲しいって事はお腹が痛いんだ。多分、猫ロボの飼い主の人が。僕はそれを掴むと、ランドセルを降ろし着替えもせず制服のまま外へ出た。白い猫ロボは玄関前で行儀よく待っていた。
「これだよね」
「はい」
猫ロボは正露丸を見つめて頷いていた。
「ではこちらへ」
猫ロボは再び川沿いの道を歩き始めた。僕は正露丸を握りしめ、彼女について行った。
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