どうやら俺は賞賛されたらしい。
「じゃあ、始めるぞ」
「うい」
「良いよー!」
俺とみるく、そして心々音は通話アプリ「
このDiscordingはLIMUなどの連絡アプリと同じようなものなのだが、通話時の音質が良かったり、ノイズキャンセルと言った通話時において重要な機能が良く揃っていて、
現に、配信者などがコラボする時も大体このアプリが使われている。
Twltterで予告した配信予定時間7時になったので配信開始のボタンを押す。
「配信開始したぞ」と言うと、二人は「ん˝ん˝っ」と咳払いをした後、「あーあー」と声の確認をした。
コメント欄が「きちゃー!」や「みるみなりょー再来!!」などのコメントで溢れた事を確認し、俺は第一声を出した。
「みなさん、こんばんは。staralive所属のりょーです」
「みなさん、こんばんは。staralive所属であり、りょーくんの最愛の人、中野みるくです」
「おい」
「みんな~、こんばんなん~。同じくstaralive所属であり、新人くんの直属の上司、三星夏南だぞ~」
「なんでや、確かに先輩だが、いつから俺の上司になった」
「先輩だからね、上司になるのは当たり前だろう?」
「ぐっ……みるくもみるくで最愛の人ってなんなんだ。俺はお前の婚約者か」
「えっ……?」
「いや【婚約者だったんじゃないんですか……?】みたいな反応をするな。誤解が生まれるだろ」
「やっぱり君たち面白いね~」
「お前も面白がるな」
二人の暴走により、波乱の幕開けとなったがなんとか軌道修正して企画説明となった。
「それで、今日は何をする?普通にHEROXをやるだけじゃ面白くないよな」
「そうですね……それは私も一理あります」
「そうだね~、視聴者の諸君は何かやってほしい企画はあるかい?」
夏南の呼びかけによってコメント欄が動き出す。
「負けたら服を一枚脱ぐ」だとか「勝ったら秘密を暴露」だとか「4000ダメ取れるまで辞めれない」などめちゃくちゃな物ばかり。
ちなみに4000ダメの質問については、ゲームで敵に合計で4000ダメージ以上与えるとハンマーという特別な称号が貰える、だからその称号を取れってことだと思う。
「ハハハ、みんな鬼畜だね……」
「このプラチナムの私が本気を見せてあげましょうか」
「ウワーツヨソー」
「なんでそんな棒読みなんですか……少しは信頼してくださいよ」
「ウン、オレガンバルカラ!」
「じゃあ企画としては4000ダメ取るで良いかな?」
「どうしてそうなる、まあなんでも良いけどさ」
「これが一番簡単かなって」
「よ、余裕です!」
こうして、誰か一人が4000ダメージを取るまで終われまてん、という企画が始まった。
4000ダメージなんていつも取ってるし、ちゃちゃと終わらせてやろうと思ったが
「おい、こいつらヤバいって!」
「ぶえぇ~、アサッシュはムリだよ~」
「ぐえ、ダウンしました……」
アサッシュという、アサシンとダッシュというキャラを使ったいわゆる、害悪構成と言われているもの。
アサシンの暗殺者という相手に攻撃が出来る分身が作れるというスキルとダッシュのダッシュパーティというスキルでパーティ全員の移動速度が速くなり一瞬で敵を轢き殺すというもの。
この構成が一時期流行りすぎて何回も調整されているが、未だに強い、いや強すぎる構成だ。
そして配信者狩りに多用されることから、配信者狩り構成とも呼ばれている。
「おい、流石に無理だろ」
「私たち、絶対ゴースティングされてますよ……」
「まあ、まだ本気だしてないし」
その後、3戦ほどカジュアルを回したがゴースティングに毎回狩られてしまうので少し重くなってしまうがサーバーを変えて再度挑戦した。
「やべっ、うわっ!マジか……ごめん抜かれた」
「ちょっと、なにやってるんですか」
「結構距離あるから大丈夫だ、蘇生頼む」
「はいはい、分かりましたよって、ギャー!ベッチ来ました!」
「お前ら、俺を置いて……逃げ……ろ……」
「新人くん、君の事は6秒だけ忘れないよ!」
「なんで6秒なんだよ!」
「それはね……あっ……」
「あ、抜かれた」
「私、二人が居なかったら何も出来ないよー!ぎゃあ」
「あ、抜かれた」
案外簡単かと思っていたこの企画、普通に難しい。
しかし、一人でやっていたあの時と比べると、比べ物にならないくらい楽しい。
こういう時間がずっと続けば良い、そんな風に思えた。
「ちょっと、俺も本気出すわ」
そう言い俺が選択したキャラは「フォン」というキャラクター。
こいつは自信が操れる竜巻を出して、竜巻で上昇して空中から攻撃できたり竜巻で相手を引き寄せてダメージを与えたり、投げ物で攻撃したりとソロランクではかなり使われているキャラクターだ。
実際、このキャラで何回も4000ダメージを出している。
称号は持っているが、配信を開始してからもう3時間ほど、流石に疲れて来たのでこれで終わらせる。
「お、フォンを使うんですか」
「ああ、俺の本気」
「じゃあ私は、ダッシュにしよー」
「お、みるくちゃんがダッシュを使うなら私はアサ――」
「やめろ、その害悪構成は使うのも嫌いなんだ!」
「新人くんはアサッシュに親を殺されでもしたのかい……?」
それからは、俺の独壇場だった。
状況は残り俺たち含む3パーティ、そして途中でみるくと夏南がアサッシュのパーティに狩られた。
だが今のダメージ数が3800ダメージという状況であと、200ダメージを与えれば企画終了。
長物、つまりスナイパーでチクチクダメージを与えれば良いが、それじゃあつまらない。
俺は敵を発見すると、持っていたスナイパーを捨てその場に落ちていたショットガンを拾った。
「え、新人くん!まさか
「まあ、スナイパーでチクチク打って企画終了!は面白くないでしょ」
「僕はもう疲れたんだ、スナイパーでチクチクしようよ!」
「私も疲れました、そう早まらずにスナイパーでチクチクしましょうよ」
二人から反対されたが、それでも俺は突る。
最初に持っていたARで一番近くに居た敵をダウンさせる。
そしてその後カバーに来た二人をショットガンで二枚とも持っていった。
「す、すげぇ……」
「りょーくんってこんなに強かったんだ……」
「カジュアルは基本味方入れずにソロで回してるからな1対3は結構慣れてる」
と言ったものの、正直危なかった。
俺の体力は残り30となっていて、相手がショットガンをしっかりと当てて来ていたら負けていた。
でも、今のプレイが認められたのかは分からないがコメント欄は「は、うますぎだろ」「今のは意味わからんw」「もしかして前世プロ?」など賞賛の声が上がっていてなんだか嬉しい気分になった。
その後も、残りの1パーティを同じようにシバいてチャンピオンとなった。
みるくと心々音含む視聴者達は呆気に取られていたのかコメントも流れなくなってしまったし、喋らなくなってしまった。
仕方ないと思い「じゃあ今日はこの辺で、次回はこいつらを指導して強くする!?みたいな企画でもしたいですね。それじゃあ、おつみる~&おつなん~」と言い配信を切った。
「おい、お前らも配信を切れ」
「うわ~、高圧的~。これが新人くんの裏ですよ、みなさん~」
「もっと酷い事してやろうか?それこそ前の――」
「ひぎっ!ご、ごめんなさい!」
この部分が「新人ストリーマーRYOの裏の顔」というタイトルで切り抜かれ、100万再生される事になるのは、この時の俺はまだ知らない。
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