どうやら俺は陰キャだったらしい。

 「ピロン♪」

 

 うるせぇ。


 「ピロン♪」


 ああもう。


 「ピロン♪」

 「だから、うるせぇ!!!」


 深夜2時、俺はスマホの通知音で目が覚めた。

 通知の正体はTwltter、寝る前はたまに通知が鳴るぐらいだったのに12時を回ってから急激にうるさくなった。

 明日は休日、別に夜更かししても良いが生活リズムは崩したくない。

 アラームの為に通知音は消せない、俺は設定からTwltterの通知音を消してまた眠りについた。



 「ぐえぇ~」


 体を伸ばした反動でだらしのない声が出た。

 時刻は8時、少し遅めの起床だ。

 下に降りると誰も居ない、飯も無い。

 俺は冷蔵庫を漁って余り物で朝飯を済ませた後、二人に連絡した。

 二人が家に来ることは父に伝えてある、そして父を通じて母親にも連絡済み、なはず。

 だから、呼んでも問題ないのだ、きっと。

 LIMUでみるくと心々音に連絡を入れた後、二人を待っているがてらテレビをつけた。



 「ピンポーン♪」

 

 少し甲高いチャイム音が聞こえた。

 「はーい」と言いながら玄関に行くと、扉の小窓から二つの人影が見えた。


 「「おじゃましまーす」」


 みるくはしっかりと靴を揃え、しかし心々音は靴を脱ぎ捨てると俺にぐいぐいと近寄って来た。


 「それで、涼真くん。Twltterの方はどうだった?」

 「あ?そんなん、うるさくて寝れなかったから消した、あ、消したってのは通知の事な」

 「ふむふむ。ではTwltterは開きましたか?」

 「いや、開いてないが」

 「じゃあ、今ここで開きましょう!」


 俺はポケットからスマホを取り出してTwltterを開いた。

 すると、昨日までは運営とみるくと心々音、そしてエロ垢しか居なかったフォロワーが2万人となっていた。


 「は?どうなってのこれ」

 「ふふふ、これが私の拡散力です」

 「何したお前」

 「なんも簡単な事ですよ、【伝説のシチュボ投稿者、RYOが帰って来た!】みたいなことを適当に書いてメンションしただけですよ。あ、みるくちゃんの配信の概要欄の効果もあると思いますが」

 

 通知の部分が99+になっていて、メンションされたりDMが飛んできたりしていた。

 それに、心々音は設定を任せている時にツイートもしていたようでリプが1000件ほど来ていた。


 「おい、どうすんだこれ」

 「知りませーん、自分でなんとかしてくださーい」

 「おい心々音、お前シバかれたいか……?」 

 「うえへーん、みるくちゃーん。涼真くんがイジメてくるー」

 「ちょっと、りょーくん!なんでりょーくんって心々音ちゃんの事いっつもイジメるの!」

 「お前はまたそっち側なのか!誰か、俺の味方になってくれる人はいないのかよ!?」


 ~~~


 二人を部屋に案内した。

 しかし、二人の美女が俺の部屋に居るとはなんとも不自然だ。

 みるくは前回と同じ、と言いたいが若干変化がある白いワンピース。

 微妙にスカートについているフリルの形が違ったり、十字架のネックレスを着けていて大人感を出そうとしているのかもしれないが、ネックレスはあんまり似合っていない。

 一方の心々音は、全身を派手ではない青色で染めていて。

 上着は中に無地のTシャツ、そして上に青いカーディガン、下はショートデニムパンツで俗に言うボーイッシュファッションだった。


 「何かちゃんとした服着てるけど、気合でも入ってんのか?」

 「は?何言ってるんですか?」

 「そうだよりょーくん」

 「え?俺がおかしい?」

 「そうですね、なんで部屋着のまんまなのでしょうか」

 「ほんとそれ、りょーくんダサい」

 「だ、ダサくないし!」

 「じゃあその、ねずみ色の服はなんなんですか?」

 「パジャマ」

 「はい、終わってますね。服はないんですか?」

 「うーん、前みるくの家に着てったやつぐらい?」

 「まあ、あれならまだ良いです。着替えて来てください」

 「は?なんでだよ。今日は配信を見届けてくれるんじゃないのかよ」

 「時間があります、服を選んであげます」


 こうして心々音の急な提案によって、俺は服を買いに行く事になった。

 脱衣所に向かい、まともだと言われた服に着替えた後、外に出た。


 「お金はまあ、今回は私が出してあげます。勘違いしないでくださいね、普通にダサいあなたが見たくないだけですから」

 「なにそれ、ツンデレってやつ?」

 「みるくちゃん、この人置いていきましょう」

 「そだねー」

 「おい!」


 二人が走って駅まで行ってしまったので、俺も走って駅に行った。

 タイミング良く電車が来たので三人で乗り込んだ。

 適当な会話をしつつ、俺たちは北野に来た。

 北野には大型ショッピングモールがある、そこでどうやら服を買うらしい。


 「おい、金を払ってもらうのは流石に悪い」

 「でも、あなた今財布持ってきてます?」

 「あ……」


 急いでいた俺は財布を家に忘れていた。

 

 「無いです」

 「ですよね?」 

 「それでも、払ってもらうのは流石に悪い。そうだ分かった、俺が配信で収益を得れるようになったらそっから返す。てか、服なんて買う必要あるか?」

 

 なんで今になって服を買うんだ、心々音と関わるようになってから振り回されることばかりだ。


 「必要は十分にあります。まず、涼真くんはそのうち東京に行く事になります」

 「は?なんでだよ」

 「運営、つまりstaralive本社が東京にあるからです。それに涼真くんはまだ二宮代表と顔も合わせてませんし話したこともありません。まあ、マネージャーとかはそのうち就くと思うんで大丈夫でしょうけど」

 

 そうか、俺もstaralive所属になったから必ず一回は代表と会わなければいけないのか。

 となるとみるくも一回――

 

 「まあ、早いに越したことはありません。それに明日は早速コラボです」

 「は?もう色々ありすぎだろ」

 「私とのコラボですよ?ちゃんとしてくださいね?」


 もう、何か朝から疲れた。

 今日は俺のデビュー配信で、明日は心々音とコラボ?展開が多いって。


 

 ショッピングモール「AONEア・ワン」に着いた。

 休日だからか、店内には家族連れからお年寄り、若いカップルなど沢山の人が居た。

 

 「混んでるな」

 「そうですね」

 「人多すぎでしょ……」


 みるくは人が多いのが嫌なのか心々音とずっと手を繋いでいる。

 それが嬉しいのか心々音は時々とろけた顔をする。


 「で、どこに行くんですか?心々音さん」

 「そうね、メンズ商品を取り扱ってるって言うと2階でしょうか」

 「おけ、エスカレーター使うか」


 エスカレーターで3階から2階に降り、心々音が行きつけの店だという場所に行った。


 「うーん、やっぱり涼真くんはゆるふわ系が似合うと思うんですよね」

 「違う!りょーくんは絶対カッコいいやつが良い!」


 店先で言い合う二人の間に入り静止させる。

 

 「喧嘩はやめてくれ、取りあえず二人が思うものを選んでくれ。服は正直分からん」


 二人は睨みあった後、店内にズカズカと入り各々俺に合った服を選んでいた。

 少しした後、最初に心々音が俺の所にやって来た。


 「じゃじゃーん。これぞ春に似合ったゆるふわ系男子コーデ!」

 

 そう言い心々音が持ってきたのは少し大き目のデニムパンツ、黒いノースリーブのTシャツと中に着る白の無地Tシャツ。

 「ほら、早く着て!」と強引に試着室に突っ込まれたので、俺は仕方なくその服を着た。


 「わーお、似合ってるじゃん!」

 「そうか?」

 「うん、普通にこれ来て街中歩いてたら陽キャって思われるよ!」

 「つまり、朝の俺は陰キャと?」

 「うん!」


 なんの躊躇いも無く、満面の笑みで心々音は言い切った。

 少しイラつきながら値段のタグを見てみると、全部3千円程度で3つで約1万円だった。

 値段も考えてくれたのかなと思っていると、次はみるくが服を持ってきてくれた

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