幼馴染の家に行った俺は配信に映り込んでしまったらしい。
竜田優乃
一幕
どうやら俺は学年一、二番目の女子と遊ぶことは出来ないらしい
俺の名前は
俺の通っている
毎日電車に揺られて登校して、授業を受ける。
といってもまだ入学して一週間も経ってないんだけどな。
俺には幼馴染が居た、名前は
反対から読むとみるくになる、だから昔から胡桃の事をみるくと呼んでいた。今でこそ恥ずかしいが、昔は何も感じず「みるく!みるく!」と呼んでいた。もちろん、中学校でも呼んでいたさ。そのせいか、たまにからかわれたりもしたけどね。
しかし、みるくも俺と同じ北嶺高校に入学したはずなんだが、高校に入ってからその姿は一度も見ていない。
親から聞いたが、おばさんとおじさんが事故で亡くなったらしい。俺も最初は声を掛けようと思ったが傷をえぐるようなことはしないでおこうと思い、声を掛けるのは辞めた。
聞きなれたチャイムの音がなる。小学、中学と変わらない音、そしてこの帰りのHRも9年間ずっと変わらない。いや多少は変わってるかもしれない、小学と中学は帰りの会だったけれど、今は
「じゃあ今日はこれで終了、日直、号令」
担任の声に合わせて日直が号令をする。
「起立、気を付け、さようなら」
「「「さようなら」」」
クラスメイト一同揃って帰りのあいさつをする。あいさつをした後は各自でバラバラに行動する。担当区域の掃除を行ったり寄り道の予定など
そんな事をしみじみ思っていると「涼真、お前今日暇?」と不意に後ろから声がした
声の正体は友達の
「全然暇だけど、どした?」
「暇か、そうかそうか。実はさ今日、宮下とあかねの三人でカラオケ行く予定なんだけどさ~、お前も来る?」
亮はドヤ顔で誘ってきやがった。
そんなもん行きたいに決まってるじゃねぇか……!相手は一年生の女子の中で1、2番目に可愛いと噂になっている、あの宮下さんと五十嵐さんだぞ!
もう一人の
さぁ、誰にしてるかわからない説明も終わった所で返答しようじゃないか、この天国への招待を受け取ろうじゃないか!
「マジか!行きたい、めっちゃ行きたい!」
「おっけ~、じゃあ大泉のカラオケ屋で良いか?」
「良いよ、楽しみだなぁ~」
亮はスマホを取り出した、どうやら連絡してるらしい。
「やっべ、二人とも待ってるっぽいわ。早く行こうぜ」
二人とも待っているのか、それは早くしなければ。
端麗なお二人を待たすわけにはいかないからな。
廊下を駆け足で移動し階段に差し掛かった。
一年生のクラスは3階にあり、階段を使わなければならない。
面倒と思いながら階段を下っていると担任に呼び止められた。
「おう~、荒川。丁度良い所に居た。」
マジかよ、ここで呼び止められるのかよ。
俺は亮に「先に行ってて」と言い先生と話し始めた。
「どうしました、先生」
「いや~実は先生、中山の家の住所を見たんだけど、いまいち中山の家の場所が分からなくてさ~」
「は、はぁ……?」
「それで荒川の家の住所を見たらどうやら近くらしいじゃないか」
「まあ、そうですけど……」
ヤバい、嫌な予感がする。
「だから、このプリント届けてくれないかい?」
おいおい、マジですか。せっかく天国が待っていると思っていたのに待っていたのは地獄。最悪です、あーもう最悪です。
しかし、俺は気づいた。カラオケ終わった後に渡しに行けば良いやんと。なんだ、それなら安心だな。
一瞬天国への道が閉ざされたと思った。結構焦った。
「分かりました。特に期限とかあるものはないですよね?」
「いや~それが中山、入学式も来てないから早急に取り扱わないといけないプリントが一枚あってさ、だからもう、今すぐに行って欲しいんだ。」
はい、やっぱり待っていたのは地獄でした。対戦ありがとうございました。なんで?小中ともに告白イベントとか恋のキッカケを作るイベントなんて無かった。高校入って初めてのイベントだよ!?宮下さんや五十嵐さんと距離を縮めれるチャンスだったんだよ!あわよくば【私と付き合って!】なんてイベントもあったかもしれないのに、くそう。
一瞬断る事を考えたが、今後の進路に響くかもしれないと思い俺は顔を引き攣らせながら「分かりました……」と渋々了承した。
一階に着くと亮だけが待っていた。
「ごめんごめん、なんか呼び止められちゃってさぁ」
「なんも、それでなんかあったのか……?」
俺は亮に一連の流れを説明した。正直みるくに対してかなり腹が立っていたが、なんとか抑えた。
「そっか、残念だな。宮下もあかねも楽しみにしてたからさ」
「いや、ほんとすまん!この埋め合わせは必ずするから!」
「おっけ、じゃあ二人には連絡入れとくわ、あと今度4人で遊ぼうな!」
「あぁ、ありがとう」
やっば、この人優しすぎるんですけど。普通だったら絶対「は?お前ノリわる。そんなの断れよ。」とか威圧的な事言うでしょ、普通。普通?ごめんやっぱ普通じゃないかもしれない、ギャルゲーに夢見てたかも。
「じゃあ、楽しんでくるわ」
「くっそっ、羨ましすぎる。」
「へへーん、じゃあな。また月曜日!」
「おう、また月曜!」
亮を見送ってから少しして俺も歩き出す。
みるくに対することでぶつぶつ文句を言いながら歩いていたが、周りの生徒から気味悪がられたのでやめた。
少し歩いて
いつも人の群れについて行って電車に乗るから時間とかよくわかんないんだよなぁ、前とか、人についていって電車乗ったら間違えて逆方面の電車に乗っちゃったし。
小さな階段を上り、錆びれたホームに出た。ホームに居た人はほとんどというか、全員北嶺高校の生徒だった。そんな中にさっき話した亮が居た。周りには宮下さんと五十嵐さんがいて三人何か話している。きっと俺の事を悪く言っているに違いない。怖い、そして気まずい。俺は不安になって狭いホームの中、亮とは少し距離を置いた位置についた。
電車が来た、いつもは二両編成なのになぜか今日は一両編成だった。
仕方ないと思い、亮とは少し遅れて電車に乗り込んだ。
切符を機械から取り、中に入ると老人が3人ほど居て、あとはほとんど学生という成人と未成年の割合がとても激しい状態になっていた。
亮に見つからないように、席には座らずつり革を掴んだ。
「おや、あなたは……?」と後ろから声がした。しかし話しかけられてるのは俺じゃないと思いシカトした。
しかし、話しかけられているのは俺だったらしく、肩をポンポンと叩かれた。
振り返るとそこにはとても可憐な学生が立っていた。
そう、宮下心々音が居た。
「確か、同じクラスの荒川君でしたよね……?」
くそっ、みるくにプリントを届ける用事さえなければ、今頃は宮下さんや五十嵐さんと楽しく話しているはずだったのに、なぜ彼女とはこんな気まずい出会い方になってしまったんだ。
否定するわけにもいかないと思い「そうですが、どうしました?」と答えた。
「確か、今日は用事があるからカラオケには行けないと亮くんから伺ったのですが……」
「あぁ、その件はすまん。実は俺、幼馴染が居て……ほら、一度も学校に来てない中山胡桃って子がクラスに居るじゃん?」
「はい、胡桃さんですね。確かに居ます。」
「その子にプリントを早急に渡さなくていけなくなってしまいましてね」
宮下さんは納得したのか手をパチンと叩き「そうだったのですか!」と少し大きな声で言った。その声に周りが反応したので「静かにしましょ、宮下さん」と注意した。
「あぁ、すみません。てかなぜ、私にさんづけするのですか?」
「まぁ、まだ友達じゃないし」
俺の問いに対し、宮下さんは「あはは、不思議な事を言いますね。」とまた大きな声で言った。
こやつ、反省しないタイプだな。
俺はまた注意をした。
宮下さんはおでこに手を当て「てへっ」とあざとくごまかした。これがまた可愛いからずるい。
アナウンスで「次は大泉~、大泉~」と鳴った。
「あ、じゃあ私、亮くんの所行くね。」
「あ、うん。それじゃあ」
「ばいばい、涼真くん。後で亮くんから連絡先貰っとくね」
不覚にもドキッとしてしまった。てか、俺宮下さんから下の名前で呼ばれた……?やばいやばい。
宮下さんから下の名前で呼ばれたり、あのあざといポーズを貰った余韻に浸っているといつの間にか西北野駅にについていた。
俺は扉が閉まるギリギリでお金を払い、電車から降りた。
「セーフ」
独り言を吐き、歩き始めた。
と言っても100mほど歩けば俺の家なんですけどね。
今日は荷物が意外にも多かったので、一度荷物を置いてからみるくの家に来た。
中学卒業以来一度も会ってないからか、謎に緊張しながら俺はみるくの家のチャイムを鳴らした。
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