第357話 助け舟
「もうユッキー。ケンケンを追い払ったな。久々なんだから触るくらい良いじゃないか」
「セクハラって言葉知っているかしら?」
「知ってるからいいだろ?」
胸を張って宣言したので
「わかってるならやらないで」
不満たらたらの様子を見た糸崎は、眩暈と頭痛を覚え、怒りを押し殺した表情となる。
「あんたのスキンシップは過激なの。男が勘違いするのよ。その気になったら後が大変でしょう? 死体の後始末を考えたことある?」
「待ってくれユッキー。ワタシは誘惑したことはあるが一度たりとも殺しまでやったことはないぞ」
「言葉のあやよ。気に入らないからと病院送りぐらいはするんだから。男に体をひっつけないで」
「えー、でもケンケンはひっつきたいな」
それをみた糸崎は苦虫を嚙み潰したような顔になる。
「やめてくれる? ケンだから無視してくれるのよ」
「いや一度くらい」
「それが駄目だって言ってんのよ!」
スパァン、と糸崎が強烈な張り手を
「ユッキー……」
二人の空気が冷えてきたので、
「そ、そういえば聞きましたよ!
「そうそう凄いです! 糸崎さんも
「そういやそうだったな。すげぇなケンケン」
「成果上げるなんてやるじゃない」
二人はあっさりと話題に乗っかり、不穏な空気が消し飛んだ。
喧嘩を未然に防ぐことに成功したので、
「俺は
「ご謙遜を。とても凄いことです」
憧れている先輩の活躍を我が事のように喜んでいる。しかし
「凄いことではない」
静かに言い放つと、
視線が合うと、
「謙遜しないでください。貴方だからこそ発見できたのだと自分は思っています」
彼は
「お前に言われたらそんな気になる」
「いえ。自分や
「あまり言うな。照れるから」
「なんか
「わかる。
対応の違いがクッキリと現れて、
「二人とも落ち着いてください。何もずるくないですって」
「だって。俺が先に言ったのに。温度差が凄い違うんですもん」
「だよなぁ。ワタシもねぎらいの言葉かけてんのに塩対応されてんだぞ」
「何に対しての不満か分からないが、煩い」
鋭い視線を向けられ、
「おいおいケンケン。帰って早々喧嘩売ってんのか?」
「そっちから喧嘩売ってるだろ。俺の動きに一々文句をつけて、鬱陶しい」
「はあ? ワタシがいつ文句言った?」
「今もだろ」
「はーあ?」
バチバチ、と二人の間に火花が散った。
「ちょっと。帰って早々喧嘩しないでくれる? どっちか大人の対応してほしいんだけど、二人とも子供だから駄目かしら?」
糸崎が呆れた眼差しを向けて止めるように促すが睨み合いは止まらない。
どんどん空気が冷えていくため、
些細な言い合いのせいで一触即発の空気になったオフィスだが、
「貴様ら、いい加減にしろ」
手の空いた
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