第17話 嘘つき瑞希
誰も信じてはくれない。
睦瑞希は霊能力者である。
誰も信じてくれない。
幽霊が見えると言っても、誰も信じない。しつこく言っていると、嘘つきと言われるようになった。
しまいには、いじめられるようになった。
嘘なんかついてない。
どうして私をいじめるの?
瑞希は困惑するしかなかった。
どうして私だけ前世の記憶があるのだろう?
どうして私だけ幽霊が見えるのだろう?
何もかもがわからない。
どうしていじめられるのかもわからない。
前世の記憶と言ってもあやふやなものだった。
見たこともない場所で、男の人のと一緒にいる。それだけしか覚えていない。
ただそれだけだったが、それがずっと昔の事で、その男の人がとても大切な人だと言うことだけは、何となくわかった。
あの人ともう一度会いたい。そう思うようになった。
私が生まれ変わったのは、もう一度あの人と逢うためだ。そう思うようになった。
何度も転生したような気がする。でもあの人には出会えていない。
あの人に逢えばすべて変わる。
この下らない世界から、私を救いだしてくれる。
中学生になった。
あの人とはまだ出会えない。
むやみに幽霊が見えるとは言わなくなった。転生のことは全く言わなくなった。
言っても、またいじめられるだけだから。
嘘つき瑞希の名は中学になってもついてきた。
それでも違う小学校から来た、同じクラスの女の子とは友達になった。
おとなしく目立たないように生きていこうと思っていた。
でも、彼から目を背け続けることはできなかった。
同じクラスの岸田
何も言わずに無視することもできた。言えばまたいじめられるようになるのも目に見えている。
黙っていようか?
彼がどんな悲惨な未来を迎えようと、私には関係ない。
でもあの人ならどうするだろう?
助けるだろうか?
助けるような気がした。
もしあの人が、私が悪霊にとり憑かれた人を見殺しにしたと知ったらどう思うだろう?
私は、岸田くんを見殺しにする事はできなくなった。
あの人に軽蔑されるようなことだけは、絶対にしちゃいけない。
瑞希は自ら火中の栗を拾いに行った。
でもそれは運命だったのだと思う。
覚悟していた事ではあるが、予想通り岸田くんを好きな結衣とその取り巻きたちに目をつけられた。
そして運命のあの日。
夕暮れ時のあの公園。
結衣とその取り巻きたちに囲まれていたとき。
「お前、いじめられていたよな? 助けいるか?」
ついにあの人は私の前にあらわれた。
助けて! 私をこの下らない世界から救いだして!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます