第3話 転生ですか?

「ご主人様、名前教えて下さい」


 彼女(多分)はもじもじしながら、上目使いに、ちらっちらっと俺を見てくる。


 公園のベンチに、二人並んで座っている。


 俺は返事をせず、前を見ている。


 教えたくないなー。


「あ、私は睦瑞希むつ みずきです」


 人に名を尋ねるときは、先ず自分からと思ったらしい。

 変な子だけど、以外と常識あるようだ。


「睦月のむつに、瑞鳳のずい、希望のきです」


 特に興味ないのだけど。あと、瑞希では性別どちらでもありそう。


 瑞希は隣に座る俺を見上げてくる。


 なんか近づいてないか?


高坂洋介こうさか ようすけ


 圧に負けた。


「高校生ですか?」


 ブレザーの制服を着ているので、高校生なことも、学校名もわかるだろ。


「2年だ」

「私は中学2年です」


 声を聞いている限り、女の子に思える。でも、声変わり前の男の子の可能性もあるかも。


「ご主人様は今まで何してたのですか?」

「学校帰りだけど」

「いえ、私と別れたあとです」


「会ったのって、いつ?」

「んー、千年くらい前?」

「古代じゃないか」

「そうなの? 平安時代とか鎌倉時代とか思ってました」

「範囲広いよ」


「ご主人様と別れてから、何度も転生したので、記憶にある出来事がいつの事か、あやふやなんですよ」

「何度も転生してるんだ」

「ご主人様は何回目か覚えてるんですか? 私は何回目か数えられないけど」


「いや、俺は転生してないから」

「覚えてないのですか?」

「そもそも、転生なんてオカルト、あるわけ無いだろ」


 瑞希は目をぱちくりさせた。


「え?」


 しばらく無言になる。


「え? ご主人様、転生してるじゃないですか」

「そんな記憶はない」

「私は何回も転生してます」

「前世占いとか好きなの?」


「占いじゃないです!」

「んー。中学2年生だから、中二病?」

「中二病じゃないもん!」


 いや、自覚あるっぽい。




「わかった。転生したとしよう。なぜお前は俺にこだわる? 何度も転生したのなら、たくさん会った人の中の一人だろ?」

「一番最初に会ったご主人様だからです。生まれ変わる前の、一人目の時の」

「ん? 転生の一人目? オリジナルってことか?」

「そうです」


 おかしな事言ってる。


「輪廻転生するなら、俺と会ったときのお前も、誰かの転生じゃないとおかしくないか?」

「えっと…」即答できない。


「そのときの俺は、誰かの転生だった?」

「いえ、転生前の記憶はなかったはずです」

「記憶?」

「多分転生すると、前の記憶は無くなるんだと思います」

「お前は? 何で記憶があるの?」

「ご主人様に、再び会うためです」


 怖いわ。



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