一章 第七話

「あら、ここに誰かが来るなんて、何年振りかしら」


如月はとっさに刀を抜いた。

付喪神の額には丸い紋様があり、目のように見えた。

鎌の付喪神よりも重い威圧感。

言い伝えが目の前の付喪神によるものというのが一目でわかった。


(また紋様持ち。。。あの紋様は、、鏡か?俺の探知をすり抜けるほどの妖術。。。)


導き手だからと言って、紋様持ちと戦う機会は少ない。


(早く方を付けたほうがよさそうだ)


「舞刀術 百人一首」


如月は素早く水平斬りを放ったが、簡単に躱された。


「その技は知っているわ。鎌の奴に使ってたやつでしょ。それに、あなたが導き手ってことも知ってるわ」

「やはり、鎌の付喪神よりも前にいた奴か」

「こんなのはどうかしら」


付喪神は、鎌を作り出し、風の斬撃を発生させた。

如月は刀を振るい、打ち消した。


「あの鎌の付喪神が使っていた鎌か」

「確か、『鎌鼬』だったかしら」

「鎌の付喪神の真似か」

「真似?違うわよ。これは本物。私は鏡。鏡の付喪神、万華ばんかよ」


さらに鎌鼬を放つ。

斬撃の速度や威力は辻切よりも落ちているが、斬撃は柱に当たって跳ね返るようになっていた。

そのため、斬撃そのものを消さない限り追ってくるようになっていた。

さらに、万華は接近して鎌を振るう。

鎌の扱いには慣れていないが、体術は万華のほうが辻切より上だった。


キンキンキン!


「その程度なの?導き手ってのも。大したことないわね」


煽るように万華が言った。


「言ってくれるな。様子見だ。どんな術を使ってくるか分からないからな。だが、その挑発に乗ってやる」


如月は攻撃速度を上げた。


「いいわねぇ。きゃはははは」


万華は声をあげて笑い、鎌を振るって応戦する。

しかし、如月のほうが上だった。


如月は、万華の右腕を斬りつけた。

すると、如月の左腕の同じところが傷ついた。

血がしたたり落ちるが、すぐに止血した。


「やはりか、、、」

「な~んだ、気づいていたのね。どおりで、なかなか攻撃してこないわけね。そうよ。私が負った傷はあなたに返る。私の腕を斬り落とせば、あなたの腕も斬り落ちるってわけ」


如月は、この可能性を考えていた。

すなわち、万華を攻撃したら自分にも攻撃が返る可能性を、、、


「鏡の付喪神と言っていたことから、そうではないかと思っていたが、、、俺にない部分を攻撃したらどうなるのだろうな。舞刀術 百人一首」


如月は、万華の首、というよりも核に向かって百人一首を放った。


「それはもう見たって言っ、、、」


万華はぎりぎりのところで躱したが、掠っていたようで血が出る。


「なっ、さっきより速いじゃない!」

「俺にない部分は、反転できないようだな」

「うるさい!!!」


万華は風の斬撃を放った。

しかし、如月は軽く受け流す。


「鎌の付喪神を模倣したところで、俺はそいつを倒している」

「模倣じゃないって、、、言ってるでしょ!」

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