付喪戦記

@Koto9

第一章 夢幻の鏡

一章 第一話 

(この街のおでんは美味いな)


如月朱雀きさらぎすざくは屋台で、おでんに舌鼓を打っていた。

家々の屋根や、道端にはまだ雪がある。

周囲は暗くなり始め、街灯には明かりが灯り始めた。


(最近は戦ってばかりだからな)


古くから存在している『付喪神』という存在。

そして、付喪神と戦う人々。

彼らは、『付狩りつきがり』と呼ばれていた。


如月は付喪神について考える。

負の感情によって生まれる付喪神。

付喪神が生まれるもともとの原因は、人間にある。

ものを大切に扱わなかったのは、人間なのだから。


(だからと言って、守らないわけにはいかないしな)


『付狩り』の仕事は、付喪神から人間を守ることである。

付喪神に何か思うことはあっても、仕事は仕事なのだ。 

ただ、如月はいつも思っていた。

もっとものを大切にしてくれ、、、と。



おでんを食べ終わり立ち去ろうとした時、何かが飛んできた。

危険を感じ取った如月は抜刀し、飛んできたものを斬った。


「店主、下がっていろ。付喪神だ」


すっかりおびえている店主にそれだけ言うと、如月は飛んできた方向に駆け出した。

幸い人の出は少なく、この屋台から離れてしまえば、周りの人を心配する必要はなかった。



そして、如月は付喪神と対峙した。


「お前だな、先ほど屋台を襲ったのは」

「あ?そうだよ。俺は屋台の人間が許せねぇ。俺は鍋の蓋なのに、まな板みたいに使いやがって。屋台をやっている人間は殺す!」


そう言って、付喪神は持っていた鍋の蓋を投函した。


特殊な蓋であり、縁に刃がついていた。

如月が弾いても、軌道を変えて如月に向かってくる。


厄介だと考えた如月は、弾くのではなくすべて斬った。


「まだ蓋は増やせるからな」


付喪神は蓋を六個にし、如月に向かって投げた。


「その技はもう飽きた」


如月は一瞬ですべて斬った。

まさかすべて斬られるとは思っていなかったのか、付喪神は驚愕の表情を浮かべていた。

そのすきに、付喪神の首を斬った。


付喪神は首に『核』が存在しており、核を斬られることで消滅する。



付喪神が消滅するのを見届けてから、如月は店主のもとへ向かった。


「ありがとう。あなたは命の恩人だ」


店主が何度も頭を下げるので、如月は苦笑しながら言った。


「そこまで恩を感じる必要はない。ただ、あなたのおでんは美味かった。道具を丁寧に使っているからだろう。また来たときに食わせてくれ」


そう言って、如月は立ち去った。

空には満月が明るく輝いていた。



これは、如月朱雀と、付喪神との戦いを描いた物語である。


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