新しいことを始めるために

シヨゥ

第1話

「なんでそんなに順調なのにやめてしまうんだい?」

 そう問いかけられた。

「やめてしまうにはもったいないよ」

「そうかな?」

「そうだよ」

「でも僕には順調には思えないんだ」

「そうなの?」

「そう。だって今がピークだと思うから。ピークということはこれからは下り坂だよ」

「そうとは思えないけど」

「それにもう飽きたんだよね」

 そう言うと目を丸くされた。

「飽きた? そんな理由でやめちゃうの」

「そうだよ。もう気が乗らないんだ。だからやめようと思うんだよ」

「そっか。君がそう言うなら仕方がないか。でも、新しいことが軌道に乗るまでは続けてみたら?」

 最後まで食い下がる彼に僕は、

「それは無理だよ。僕にはふたつのことを同時にやるなんて力はないんだから」

 そう告げた。

「新しく始めるなら今あるものを捨てないとね」

「それも、そうか」

 食い下がりたかったみたいだが彼は諦めたようだ。

「それじゃあ僕は片づけを始めるよ。ちゃんと片付けないと怒られるからね」

 茶化すように言って立ち上がる。これも新しいことを始める準備なのだ。

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新しいことを始めるために シヨゥ @Shiyoxu

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