第24話

「それで、どこで尋問するのかしら。」


「このまま固有結界内で尋問するよ。

 なんかこの人女みたいだよ。」


「女性型の個体ってこと?」


「女性型じゃなくて女性に当たる人かな。

 種族で雌雄があるのは知ってたけど、この固体を見るのは初めてだね。」


女性型は女性としての機能が無いモンスターのこと。

一部のモンスターの中には女性のような身体を持つが雌雄同体であったり、繁殖や狩猟において不利有利な点を持っている。


有名なモンスターで言うとゴースト。

増えることが無いため、雌雄同体でもないが、女性が死んで女性の魂を象った女性型が居る。

男性型ももちろんある。


見た目で女性と男性を判断すると足元を掬われるので口酸っぱく、指導していた。


「モンスターにも女性っていたのね。」


「あっちの世界では魔王をやっていた種族だから、俺にはよくわからないけどね。

 かなりの知性を持ってるけどプライドが変に高いから、詰めるのが苦手だったねえ。」


「詰めるってなによ。」


「軍の指揮で、相手を圧倒、王手にまでは持ち込めるんだけど。

 相手を確実に殺すことはできない。

 あえてそうしているのか、それとも絶対的な自身から来るものか、俺は知らないけど。詰めが甘いのはこの子を見るとわかったかな。」


詰めの甘さは軍の甘さ。

戦争で勝敗を決めるのは将の決断力と軍師の裁量。

そして、兵士の決死の覚悟。

魔王軍にはそのどれもが欠けていた。


生物としての格が高すぎるのもある。

下手をすれば人間よりも知能が高い奴らも多い。

にもかかわらず人類に敗れたのは文明を持った歴史の短さだろうか。

そして何も考えずに侵攻をした魔王軍は人類の勇者召喚の前に敗れた。


決死隊を結成した人類は強い。

古来よりも少ない戦力を相手どるときは常に三倍の戦力で、兵糧攻めが最も好ましいと言われている。


なんせ、守るべきものあっても、自分の命惜しくない者どものが集まっているのだから、文字通りの死ぬ気の後悔をしないための死闘を行うのだ。

彼らを止めるには一人当たり三人でようやく足りるかどうか。


モンスターでもそれは同じことが言える。

通常で3人を持ってようやく食い止められるような敵でも火事場の馬鹿力はどう赴くかわからないものだ。


目を狙い頭を引っ搔き回して、敗北させた兵士たちは数知れず。

それが精鋭ならもっと多くの数を撃退していく。

命と引き換えに爆弾を起動させるような奴らも戦場では多く居た。


その歴史は異世界でもしっかりと刻み込まれていた。


故に魔王は負けたのだと思う。


俺の功績も大きいと言われているが、人間の決死隊の力は子を守る母親のように強い。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る