凍死した中学生

 雪がはらはらと降って来た。家族と出くわす度に重苦しい。どいつもこいつも腹が立つ。


 むしゃくしゃして、もうどうにもなりゃしない。やけっぱちになってふてくされて、真昼の誰もいない庭に、大の字になって寝転んだ。


 今日は一段と寒い日だった。


 すぐに、もうやめようかと思った。


 が、起きるのも億劫だ。家の中に戻らなくてはいけないんだから。


 ああ……空が見える……。


 雪を送ってくる元をじっと見つめた。眼鏡があるから雪が目に入らなくて安心だ。


 しばらく見て目をつぶる。


 そうだ、もうこのままずっと動かないでやろう。誰かに気付かれて、声を掛けられたりするまで。……このままずっと微動だにせず。体が雪に覆われても……。


 ……。


 ……どれくらい経ったろう……。


 ……しばらくじっとしていたが、人が来る気配すらない……。


 誰かに見つからないと意味がないじゃないかっ。


 早く誰か来ないかと目を開けてみたら、眼鏡の上に雪が積もっていた。雪が日に照らされ白く輝いている……。


 ……なんだろう、少し元気が出た……。


 諦めたら負けなんだ……。よし、もう寝よ……寝てる最中とかに誰かに気付かれて起こされるだろう。


 誰が僕を起こしにくるだろうかな。


 母か、父か、妹か。誰だろうが吃驚するだろう。面白いろいや。


 ……。


 ……どれくらい寝たのか……目を開けたらまだ眼鏡の上に雪が光っている……。


 暮れてはないらしいな……何か……猛烈に怠い……さっきまで寝てたのに……。


 顔に積もった雪を払おうとしたが、力が入らない。


 ……もう一回寝よ……。


 次に寝てる最中とかに起こされるだろう……皆、期待してる……。


 ……。


 ……だが次に起きてみても、誰にも気付かれないままだった。


 ついに夜になってしまったらしい……眼鏡の先が真っ暗だ……。


 目の前が真っ暗だ……これはもう今日中には起こされないな……。


 ……でもやめない。


 きっと……見つかるのは朝になるだろう……。


 朝になったら……母は洗濯物を洗いにこの庭の横を通るから……その時気付いてくれるだろう……。


 庭に雪が人型に膨らんで積もってるのを見て、さぞびっくりするだろうな……。


 母がなぜ人型に膨らんで積もっているのかと、驚く所を想像をして、おもわず笑ってしまった。


 笑いをこらえながら、早くその時にならないかなあ、と浮き立つ気分のまま、上機嫌で、その夜を過ごす、夜。

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