第110話 実力

「さあこれからが本番よ」

 ローガンは盾を構えた。構えた盾は以前より全体的に大きくなっている。


「えっ……まだや――」

 身に危険を感じたため瞬時に腕でガードすると目の前にはローガンがいた。


「その判断は間違えかな」


「ぐはっ!?」

 そのまま突っ込んできたローガンに俺は吹き飛ばされいた。


 当たると同時に勢いを殺すことで俺にその勢いぶつけているのだろう。


「腕が折れるところでしたよ」

 衝撃は強かったが痛みはさほど感じられなかった。魔力がSになったことにより回復速度が増加したのだろう。


「普通の人なら骨がボロボロになるほどだけどな……」


「いやいや、模擬戦でそんな技使ったらダメじゃないですか!」


「ははは、ウォーレンちゃんならいいと思ってね! 久々に本気で戦えるわ」

 ローガン再び盾を構えて突っ込んできた。


「同じ手には乗ら――」

 俺は盾の攻撃を避けてローガンを切りつけようとするとそこにはローガンの姿はなかった。


「私の盾って飛び道具にもなってるのよ?」

 声がする方に目を向けると上空にローガンがいた。


 避けようとしたがなぜかローガンから逃げられないと感じた。


「うぉりゃあー!」

 ローガンの重い拳が当たり、辺りは砂埃が舞い何も見えない状態になっている。


「おい、ローガンやりすぎだ」

 すぐにロビンは駆け寄ってきた。


「お兄ちゃん!」

 遠くではニアの声が聞こえた。俺は大丈夫だと分かるように手を振った。


「俺は大丈夫ですよー!」

 体を起こすとローガンとロビンは驚いた表情をしていた。


「ウォーレンちゃんアンデットになったのかしら?」


「お前本当に大丈夫なのか?」


「はい! ローナさんの攻撃が当たる瞬間に地面に攻撃を分散させました」


 ローガンの拳が当たる少し前にスキル【雷属性】を発動させ、ミスリルダガーを何度も地面に切りつけた。


 その結果地面を柔らかくすることでローガンの攻撃を地面に緩衝させた。


 重い拳が上から落ちこればそれだけ衝撃が強くなると判断した結果だ。あとは回復魔法でどうにかなると思ったら本当にどうにかなった。


「ははは、これは認めないといけないな」


「ええ、そうね」


「ん? もう模擬戦は終わりなんですか?」

 俺は状況が判断できなかった。


「私の盾の攻撃を直接当たっても無事でケロッとしてて、本気の力でもすぐに対処する力は本物だわ」

 どうやら俺は褒められているらしい。ローガンとの模擬戦は命懸けだからできればやりたくない。


「ウォーレンちゃん、今日からあなたをA級ランクの冒険者として認定するわ」


「えっ……?」

 ローガンの一言に冒険者達は騒いでいた。


 俺はまさかのBランクを飛び越えAランクになった。


 冒険者ギルド結成から初めてAランクのポーターが誕生した。

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