第29話 集まった勇者達 ※一部モーリン視点
あれからモーリンの追撃が始まりメジストは逃げるように工房にこもってしまった。
「大丈夫なんですか?」
「あんなのは朝飯前よ? しっかり私が管理するから安心しな」
「どういうことですか?」
「しばらくここで住むのよ」
どうやらモーリンは俺が戻って来ないのとメジストからの連絡が来なかったため都市ガイアスに訪れた。
「ご迷惑をおかけしてすみません。 お店は大丈夫なんですか?」
「ウォーレンが気にしなくていいのよ。 ウォーレンが持ってきた薬草でしっかり稼いできたわ」
モーリンのお店は俺が持ってきた薬草で必要個数を納品して、一時的に休業できるように準備してきたらしい。
「しかもこんな可愛い孫達も出来たならずっとここに居ようかしら」
モーリンの声が工房に聞こえたのか、奥から物を落とすような音が響いていた。
「そういえばさっきスキル玉がほしいって言ってたわよね?」
モーリンはポケットからいくつかスキル玉を取り出して子供達に渡していた。
「ばあばもらってもいいの?」
「2人で分けなさいね」
ロンとニアはいくつかスキル玉をもらっていた。正直言って俺も欲しかったぐらいだ。
「じゃあ、にいちゃはどれがいい?」
「私はお兄ちゃんが怪我をしてもいいように【回復魔法】がいいな」
2人はスキル玉を貰うとまずは俺のところまで持ってきた。自分のことより人を優先する姿に俺はつい目頭が熱くなってきた。
「それは2人で分けなさい。 ウォーレンにはとっておきのやつを渡すわ」
俺はロンとニアにお礼を言って、モーリンへ手を差し出すとそこには黄色に輝くスキル玉が置いてあった。
「これは私のお気に入りの【雷属性】が入ったスキル玉じゃ。 メジストに何かされたらこれをすぐに使うんだぞ」
俺はメジスト対策のために雷属性のスキル玉をもらった。やはりあの時の雷はモーリンの力なんだろう。
俺はスキル玉を手に入れたため、気になっていたことを検証することにした。
「じゃあ、魔石を取りに行ってきますね」
俺達は外に出ると天気が良くなっていたため、恒例のマンドラゴラ狩りに行くことにした。
今日から薬草もメジストの錬金術店で買い取りをしてもらえるため、薬草が生えている川周囲は環境としては良いのだ。
「お兄ちゃんばあばに会えたから嬉しそうだね」
「そんな風に見えるか?」
「うん」
どうやら俺の気持ちはロンとニアにはバレバレだったようだ。
♢
「ロビンもそんなところに隠れてないで出てきなさい」
私は雷属性の魔法を発動すると急いでロビンは姿を現した。
「モーリン様……いや、大賢者様お久しぶりです」
【大賢者】それが昔から呼ばれていた私の二つ名だった。
「メジストもいつまでそこにいるのかしら」
私の声に反応して急いで工房からメジストが飛び出してきた。昔から弱虫ですぐに隠れるところは歳を老いても変わらなかった。
「来るなら一言連絡……いや、何もないのじゃ」
私の魔法を見てメジストはその先を言うのをやめていた。
「これで後はルイス様とセリナ様がいたら勇者パーティーの再来ですね」
「ははは、懐かしい話だわ」
私は過去に【鉄壁】のルイス、【
年が親子以上に離れた4人だったがあの当時は人生で1番楽しかった思い出だった。
ルイスとセリナが結婚をするタイミングでパーティーは解散しお互いの道に進んだ。
そういえばロビンはその当時に4人で面倒を見ていた弟子だった。
その後は異世界から来たセリナはルイスとともに元の世界に帰る方法を探すために旅をしていたがいつのまにか連絡が来なくなった。
ひょっとしたらセリナと一緒にルイスも異世界へ帰ったのかもしれない。
「そういえばウォーレンの過去の話を知ってるかい?」
私は2人に聞くと首を横に振っていた。彼が今まで受けていた仲間からの振る舞いにロビンは少し心当たりがあったのかどこか納得した表情をしていた。
「でもそんな昔のことは関係ないじゃろ?」
鈍感なメジストはきっと気づいていないのだろう。
「それが元仲間の勇者パーティーが街中でウォーレンを探しているのよ。 良い話ならよかったけど、ウォーレンを知っているギルドのスタッフが勇者達がまたよからぬことを考えているって私に報告をしてきたのよ」
その話を聞いた私は心配で都市ガイアスに来たのだ。
「じゃあ、ウォーレンを守るために──」
「ロビンそれは違うわ。 そしたらあの子のためにならないわ」
「それはそうじゃな」
「それにあの子って何か特殊な力を持っているのよ」
「それはルイス様のようにですか?」
「ええ」
異世界から来たセリナのスキル【聖女】は人を助けた分だけ強くなるという特殊なスキルだった。
また、彼女は異世界に来た時に神様という人から本来1つしか与えられないスキルを複数授かっていた。
「ひょっとしてウォーは特殊スキル持ちだと言うんか?」
メジストの言葉に私は頷いた。私も直接聞いた話ではないが冒険者ギルドのリーチェと数々の良質な薬草を持ってくるのは何かスキルが関係していると私は思った。
また、それに気づいた勇者パーティーが己の欲のために探している可能性が考えられた。
「確かにそうかも知らないですね。 ウォーレンをずっと見てきたが、鑑定と回復魔法を使っていることが以前ありました。 しかも、どっちもまだ制御できていませんでした」
ロビンの話に私の考えは一致した。きっと言えない何かがウォーレンにはあるのは仕方ない。
ただ、私に出来ることがあればあの時のように手助けがしたかったのだ。
私はこの時まだウォーレンの隠された過去と惹きつけられる何かを知ることはなかった。
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