第28話 訪問は突然に

 あれから日にちは過ぎ2人は立派なポーター……いや、冒険者となっていた。


 ロンは基本的にスキル【収集】を使って魔物が来たら外套で身を隠し、その間にニアが敵の足元を切りつけて姿勢を崩す方法が1番安全に魔物を狩ることができた。


 そして最後に俺が匠の短剣でとどめを刺して魔物を倒していた。良いとこ取りで申し訳ない気持ちがあるが、匠の短剣は俺しか装備できないため必然的に俺がとどめを刺さないと良い魔法石が手に入らないのだ。


「先にじいじのところに行ってるよ」

 べったりとしていたロンとニアは少しずつ俺から離れるようになりメジストの錬金術店には2人で行けるようになった。


 少し寂しい気持ちはあるが、まだまだ他のところにはべったりくっついているため丁度いいぐらいだろう。


 そういえばお金を以前よりも稼げるようになったため、証券口座でルドルフの鍛冶屋とブリジットのスキル屋を購入しているが配当のタイミングは未だに掴めないでいた。


 どちらも購入したらすぐ貰えるのではなく一定の間隔で貰えるという特徴があった。


 あれ以来スキル玉をもらっていないため、そろそろ空から降ってきても良いと思うが中々落ちてこないのが現状だ。


 俺は身支度を整えると2人を追うようにメジストの錬金術店に向かった。


 いつも通り向かうと天気が悪いのか次第に空は薄暗くなっていた。今日はマンドラゴラを狩るつもりだったが、雨が降る日は川に向かうと危ないため今日の予定は変更になるだろう。


 そんなことを思っているといつの間にかメジストの錬金術店についていた。


「メジスト──」

 俺は扉を開けた瞬間に目が開けられないほどの閃光が目の前を走った。


「メジストめ! また浮気して隠し子でも作ったのか!」

 突然の出来事に俺は呆然としていた。ロンとニアは怯えており、メジストは何者かに襟元を引っ張られていたのだ。


「モッ……モーリンさん!?」

 そこにいたのは物凄い怖い顔をしたモーリンがいた。以前見たオーガという魔物に似ておりいつもの優しい顔はどこかにいっていた。


「にいちゃー!」

「お兄ちゃん!」

 俺が来たことに気づいたのかロンとニアは走って俺に泣きついてきた。流石に俺もあの顔を見たら泣きそうになってしまう。


「お兄ちゃん?」


「ちょうど良いところに来たのじゃ! ウォーよ、モーリンに説明してくれ」

 メジストは俺に説明を求めてきたが、俺は現状の状態が把握できなかった。


 そのためとりあえず抱きかかえている新しい家族を紹介することにした。


「お久しぶりです。 こっちが弟のロンでこっちが妹ニアです」

 2人はモーリンに怯えながらも頷いていた。2人とも良い子に育ってきている。


「弟と妹だと?」


「だから言ったのじゃ! あの子はわしの家族ではない」

 どうやらモーリンが何か誤解をしているようだった。


「じいじは家族じゃないの?」

「じいじはじいじだよ?」

 そんなことを知らないロンとニアは家族じゃないと言われて落ち込んでいた。


「言い逃れするために自分の隠してた孫を見放すとはどういうつもりじゃ」

 モーリンは怒りが頂点に達したのか空から雷がメジストを目掛けて落ちてきた。そういえば、手紙を届けに行った時に雷が落ちたのもひょっとしたらモーリンの仕業だったのかもしれない。


「ふぅ、なんで私はこんなやつと結婚したのじゃ?」

 どこかスッキリしたのかモーリンはいつもの様子に戻っていた。俺は黒焦げになったメジストに優しく手を合わせた。


「それでどういう関係なのじゃ?」


「実は──」

 俺は2人の出会いを簡単に説明するとモーリンが勘違いをしていたのこと子供達に謝っていた。


「2人とも驚かしてすまないね」

 モーリンは鞄から何か取り出し2人に渡していた。見た目からして飴玉をだろう。


「スキル玉?」

「これは何の魔法が出るのかな?」

 2人は飴を食べたことないのかスキル玉と勘違いしていた。


「あやつらはこんな幼い子にスキル玉をあげてたのかい?」


「2人ともお礼を言って!」

 モーリンはどことなく機嫌が悪くなっていたため、あとは2人に任せることにした。子供の可愛さに勝てる人はいないだろう。


「ばあば! ありがとう!」

「ばあばはじいじの家族なら私とも家族だよね?」


「うっ……」

 モーリンはどことなく胸を押さえていた。2人とももう一押しだ。俺は心の中で2人を応援していた。


「ひょっとしてオラに会いにきてくれたの?」


「私にもばあばができたんだね」

 さすがロンとニアだ。とどめを刺す勢いで可愛さを振り撒いていた。よくやったと褒めてあげたいぐらいだ。


「あー、なんだこの可愛い子達は! ばあばが何でも買ってあげるからね」

 ついにモーリンは子供達にやられたようだ。 


「オラはスキル玉が欲しい!」

「私ももっと強くなりたい!」


「あん!?」

 俺は2人に見えないようにそっと目を隠した。メジストを見るモーリンの目は再びオーガ……いや、悪魔のような顔をしていた。

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