第21話 獣人
俺は普段通りに目を覚ますと妙に体の重さを感じていた。昨日の影響なのか体を起こそうとすると全然起き上がれないのだ。
「うーん」
なぜか俺のお腹の方から声が聞こえてきた。俺は手を近づけるとどこかふさふさとする感触が手に伝わってきた。
「ふにゃあ?」
「にゃあ!?」
同じタイミングで声が聞こえてきた。俺は頭を少し上げるとちょうど俺のお腹を枕にして寝ているロンとニアがいた。
「おーい、2人ともなんでここで寝ているんだー」
俺は軽く揺すると2人は耳をピクピクさせて起きてきた。
「お兄ちゃんおはよう」
「にいちゃ!」
ロンはどこか舌足らずなのか俺のことを"にいちゃ"と呼んでいた。
兄弟がいなかった俺にとってはお兄ちゃんと呼ばれることはどこか恥ずかしい感じがした。
「なんで2人とも一緒に寝てるんだ?」
「それは……」
「にいちゃが温かいから!」
どうやら単純に温もりを求めていたのだろう。
俺はそのまま2人を抱えるとベットから下ろした。まだ眠たいのか2人ともぼーっとしている。
俺も眠たい体を起こすように大きく背伸びをした。
「水をもらってくるよ」
支度をするために桶に水を入れてもらい、顔を洗おうと俺は桶の中を覗くと何か文字が浮かび上がってきた。
《ステータス》
[名前] ウォーレン
[種族] 人間/男
[能力値] 力D/B 魔力D/B 速度C/B
[スキル] 証券口座、吸収、鑑定、回復魔法
[状態] 寝不足
「うぉ!? なんだこれは!」
突然の出来事に俺は戸惑っていた。手元を見てもスキル玉を使っていないのにスキル玉の【鑑定】が発動されていた。
「朝から騒がし……」
《ステータス》
[名前] ロビン
[種族] 人間/男
[能力値] 力?/A 魔力?/A 速度?/S
[スキル] e3:gdu&
[状態] 空腹
振り返るとそこにはお腹を掻きながら歩くおっさんがいた。
「お前朝から変態だな」
「はぁん!?」
俺は突然何を言われているのか分からなかった。それよりも意味もわからずに鑑定が発動していることに俺はどうすればいいのかわからなくなっていた。
「俺のこと覗いて何やってるんだか……」
いやいや、別におっさんのことを覗こうと思っているわけではない。そもそもスキル玉の時と違って鑑定の切り方がわからないのだ。
「これってどうすればいいんだ」
俺が戸惑っているとおっさんは近づいてきた。そういえばおっさんの名前はロビンと言うらしい。鑑定を使って初めて名前を知ることができた。
「目をつぶって気持ちを落ち着かせろ。 意識を目にもってくるな」
ロビンは俺の目に自身の手を覆い被せた。視界が真っ暗になると自然と落ち着き、手を離した時には鑑定の表示は消えていた。
「自分のスキルならちゃんと使いこなせよ。 そもそもお前って鑑定スキル持ちだったんだな」
ロビンは驚く様子もなくそのまま食堂に向かった。
しばらく休憩すると俺も落ち着いてきたためロンとニアを呼びに行った。
「ロンー! ニアー!」
俺が部屋に戻ると2人はまた布団に包まって寝ていた。やはり子供は眠たいのだろう。
俺はそのまま2人を抱えて食堂に向かうと宿屋で働く女性が微笑ましい顔をしてこちらを見ていた。なぜかロビンと同じ席に俺と子供達のご飯が用意されているのだ。
「少し話があるから一緒に食うぞ」
俺はそのまま2人を席に座らせると匂いに釣られて目を覚ました。
「食べていいの?」
「ニック! ニック!」
ニアはどこか遠慮気味だがロンは待ち遠しいのかフォークを持って小刻みに揺れていた。
「ああ、食べていいぞ」
ロビンの一言で子供達はご飯を口に放り込むようにかき込んでいた。
「あちゃちゃ!」
「ほらほら、昨日も火傷してたんだから」
ロンは猫舌なのかシチューをすぐに口に入れた瞬間に火傷をしていた。
宿屋の女性がコップに水を持ってきてロンに飲ませていた。本当にここの宿屋の人達は優しい人ばかりだ。
「それで話ってなんですか?」
「お前はこいつらをどうするつもりだ?」
ロビンが聞いてきたのはロンとニアについてだった。
「獣人があまり良い風に思われてないのはしっているよな?」
「知ってます」
獣人は人間より能力が低いと言われている。そのため人間は獣人を馬鹿にしたり陥れて奴隷として扱う奴らも少なくはない。
あの女好きのアドルでさえも人間に誘われれば断らないが、獣人とは絶対に関係を持たないのだ。
「なら、尚更お前はこいつらをどうするつもりだ?」
俺は考えるまでもなく即答した。だって、前から答えは出ていたのだ。
「一緒に生活するつもりです。 ただ、子供達の意思を尊重します」
ロンとニアが森の中で2人でいた理由はわからないが、まだ何もわからないような子供達が森の中にいること自体がおかしかった。
「ふっ、そうか」
ロビンは俺の言葉を聞くと何も言わずに食事を続けた。
俺の中で獣人だからといって人間達から軽蔑される子供達とポーターで馬鹿にされている俺がどことなく被ったのだろう。
「お兄ちゃん食べないの?」
みんなが食べている中、まだ何も手をつけていなかった俺をニアは心配そうに見ていた。
「これからは一緒だな」
俺はニアを優しく撫でると気持ち良さそうに喉を鳴らしていた。
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