第15話 冒険者ギルド

 その後メジストとは俺が有利になるように話が進み、足りないお金はアイテムと交換してもらう話となった。


「あのクソババ──」

 それもモーリンのおかげだろう。さっきからメジストが何か言おうとするたびにまた外から雷の音が鳴り響いていた。さっきまで晴れていたのに急な天気の変化に俺は驚いた。


 また今後も冒険者ギルドを通さずに直接メジストが魔石を買い取ってくれることとなった。ただ、お金がないときはアイテムと交換らしい。


 メジストの錬金術店を出ると俺は冒険者ギルドに向かった。都市ガイアスでも俺は冒険者ギルドに泊まろうと思っている。


 まぁ、単純に言えばお金がないのだ。メジストからもらったのがほとんどがアイテムだった。


「それにしてもスキル玉がもらえるとは思わなかったな」

 メジストからもらったのはスキル玉だった。スキル玉とは決められた回数だけスキルが使えるアイテムだ。


 今回もらったのは【鑑定】と【回復魔法】が中に込められている。


 スキル玉はレアなアイテムで稀に魔物やダンジョンから手に入れることができる。メジストは自分で作ったと嘘を言っていたが、あんなおじいちゃんが作れるはずがないと思っている。


 そもそも作れるなら自分で売った方が高くなるため利益になるはずだ。


 俺は冒険者ギルドに着くといつも通りに扉を開けた。今までいた冒険者ギルドよりも都市のため建物も人の多さも規模が違っていた。


「あのー、冒険者ギルドに泊まることはできますか?」

 俺が声をかけると受け付けにいた男の人は俺を全身見てから話し出した。


「君みたいな子を泊める部屋はないかな」

 受け付けの言葉に聞いていた周りの冒険者達は笑っていた。その笑いはどこか俺を小馬鹿にしていた。


「ははは、それはポーターには可哀想だろう」


「ポーターが1人でこんなところにどうしたんでちゅかー?」

 俺は冒険者ギルドの中でポーターという立ち位置を改めて認識することができた。


 都市のためポーターへの扱いは改善されていると思ったが、都市や大きな街に行くほどポーターへの風当たりは強くなっていた。


 今までアドルに守られていたが、1人になった今だからわかるポーターとして差別だった。


 俺は仕方なく街の宿屋に泊まることにした。ギルドから出ようとすると突然冒険者に腕を掴まれた。


「おい、ポーターは俺達に荷物を届けてくれたんじゃなかったのか?」

 急に引っ張られたため俺は体制を崩し、ポケットから何か物が落ちてしまった。


「おっ、こいつスキル玉を2つも持ってやがるぜ!」 


「おー、俺達のプレゼントだ!」

 冒険者達は俺が持っていたスキル玉を奪うと冒険者同士で取り合いになっていた。これが都市ガイアスの冒険者ギルドの現状だろう。


 そんな中急にギルド内で爆発するような音が聞こえてきた。目を向けるとそこには真っ二つに折れたテーブルと剣を持ったおじさんが座っていた。


「おい、おっさんが冒険者ギルドに何の用だよ?」

 俺に絡んできた冒険者は俺の腕を離すとおっさんの方近づいて行った。しかし、さっきまで座っていたおっさんの姿はなかった。


「お前俺を誰だと……あああぁぁ! 俺の腕が!」

 冒険者の男は急に腕を押さえつけると腕から血が噴き出していた。俺の足元にコロコロと腕が転がってきたのだ。


「ああぁぁぁぁ! 誰か俺の腕を拾ってくれ」

 腕を斬られた冒険者の仲間達なのか急いで腕を拾うと、回復魔法を使う人を探すように声をかけていた。


「これは君の物だろう? 大事にするが──」

 おっさんはスキル玉を俺に渡そうと手を出してきた。

 それを受け取ろうと手のひらを出すが一向にスキル玉を返してくれる素振りはなかった。


「このスキル玉はどこで手に入れたんだ?」

 おっさんはスキル玉が気になっている様子だった。あまり手に入らないレアな物だから気になったのだろう。


 俺は助けてもらったお礼に宣伝も含めてメジストの錬金術店を教えた。


「ははは、あのおじいちゃんが君を気にいるとはな。 またどこかで会うだろう」

 そう言っておっさんは去って行った。俺はお礼を伝えてなかったと気づき、追いかけようと振り返るがそこには既におっさんの姿はなかった。


 その後、俺はそのまま宿屋を探すがどこも1泊100G近くもする高い宿屋ばかりだった。


 基本的に宿屋は金を稼げる冒険者か商会をやっている人ぐらいしか泊まらないため値段も高めの設定になっているのだろう。


 つい最近までいた街では1泊25Gが当たり前だったのに街を変えるだけで値段ががらりと変わっていた。


 その中で俺は街の外れにあるが食事付きで1泊50Gと半額の宿屋を見つけた。

 ちなみに冒険者ギルドは一律5Gととにかく格安なのだ。


 俺は宿屋の扉を開けると恰幅の良いおばさんがカウンターにいた。


「お兄ちゃん今から泊まりかい? 今日の食事はもう終わったけどそれでも大丈夫かい?」

 俺は頷くと部屋に案内された。部屋の中はさすが宿屋と言えるレベルだった。


 冒険者ギルドはベットしか置いていなかったが、ベットもワンサイズ大きくなり、テーブルとライトも置かれていた。


 俺はそのままベットに座り込むと疲れた体はベットに吸い込まれるようにいつのまにか寝ていた。

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