第13話 都市ガイアス

 俺は早朝に街の外に出て薬草を採取してからモーリンの薬屋に向かった。リーチェに会うのはどこか恥ずかしくて朝はなるべく顔を合わせないように出てきた。


「おはようございます」


「やけに今日は早いのう」

 普段と会いに行く時間帯はそこまで変わらないが今日は薬草を持っているのをモーリンは気づいていた。


「しばらく都市に行くので先に渡しておこうと思いまして……」

 俺はすぐに都市ガイアスに行くことにしたため、その前に薬草を採取できるだけしてモーリンに渡そうとして持ってきたのだ。


「もう行くのかね?」


「はい。 また戻ってきたら伺いますね」

 俺はモーリンに挨拶をして冒険者ギルドに戻った。今度はリーチェに挨拶をしないといけなかった。


 冒険者ギルドに入ると俺は外套を着てカウンターで仕事をしているリーチェに声をかけた。


「リーチェさん今いいですか?」


「ウォーくん?」


「目立ちたくないので耳だけ傾けてください」

 俺の声に何となくリーチェは頷いていた。昨日のこともあり僕の話は冒険者ギルド内で噂になっていた。


 攻撃スキルも持っていないポーターが冒険者と同等の実力があればパーティーのポーターとして引くて数多だと思われるが現実はそうではない。


 昨日のような出来事があると珍しい装備の力で強化されているポーターだと冒険者達は解釈するのだ。


 そして、必然的に起きるのはそのポーターへの強奪だ。


 だからこそポーターは基本的にはパーティーに守ってもらわないといけない存在で目立ってはいけないのだ。


「今日から都市ガイアスに移動することにしました。 リーチェさんもお体には気をつけてください」

 俺はそう告げるとリーチェが何かを言う前に俺は冒険者ギルドを出てきた。やはりリーチェと会話するのもまだ恥ずかしかった。


 そういえばモーリンに薬草を渡したが報酬を受け取るのを忘れていた。


「まぁ、お世話になったお礼でいいか」

 俺はその足で都市ガイアスに向かうことにした。


 ガイアスは乗り合い馬車で5日ほどかかる場所にあり、冒険者ギルドの護衛依頼と一緒に行動することになっている。


 そんな中関わりたくないあいつらとまた一緒になってしまった。


「あっ、先輩ポーターもガイアスに行くんですか?」


「ああ、俺は客だけどな」

 声をかけてきたのは年下冒険者であるヒロトだった。こいつらのせいで俺はゴブリンジェネラルを押し付けられたと思っている。


 基本的に魔物討伐はお互いの承諾を得ないと共闘はできないし、追いかけてくる敵を他の冒険者に転嫁するのはルールとして認められていない。


 ただ、俺が匠の外套を着ていたため気づかなかったというのもある。だから文句は言わないがあまり良い印象は全く。


 そもそもアドルに憧れている時点で関わりは持ちたくなかった。


「うわ、怖っ!? そんなに俺達がポーターとして雇わなかったことを怒っているんですか?」


「もう、ヒロト辞めなさい! 先輩すみません」


「ああ、大丈夫です」

 一緒にパーティーを組んでいる女性はしっかりとしていた。


「ねぇ、こいつに荷物持たせたら俺らが楽なんじゃないか?」


「それはいい考え──」


「あんた達何言ってるのよ! そもそもアイテムボックスがあるのに変なものばかり入れているのがダメなのよ!」

 そう言って女性がヒロトとマヒロを回収するように引っ張って見張りに戻って行った。


 俺は行く先々で毎回邪魔をしてくるこいつらとはなるべく関わらないようにすることにした。


 その後は魔物が出てても冒険者の活躍もあり無事に都市ガイアスに着くことができた。


 年下冒険者達は薬草には興味がないのか、薬草には目もくれず、俺は金対策として途中の休憩中に薬草を刈り取ってきた。


「ほぉー、やっぱり大きいですね」

 都市ガイアスに着くと街の大きさに俺は圧倒されていた。ガイアス自体は一度だけ来たことはあるがそこまで滞在はしていない。


「ガイアスは色々発展しているから見て回るといいよ!」

 都市の出入りを管理している門番もそんな俺を見て声をかけてくれた。


 以前はお金の管理をしている俺がお金を使ってはいけないと思い観光もしたことはなかった。そもそも街に寄るのもアドルがパーティー以外の女性と行為をするときぐらいだ。


 だから何にも縛られていない今の俺は自由だった。


 街の中を歩くと辺りからは露店や店の呼び込みの声が響いていた。


「おっ、お兄ちゃん新しい魔道具はいらないか?」


「魔道具ですか? 今は大丈夫です」


「そうか。 もし何か欲しければリードン錬金術店に来てくれよ」

 声をかけて来た男は違う人に声をかけに行った。あまり見かけない人を中心に呼び込みをしているのだろうか。


 リードン錬金術店と呼ばれているそのお店はとても大きく行列が出来ていた。


 俺は引き続き地図を見ながら目的のお店を探していた。


「やっぱりここも街の外れにあるのか」

 俺が探していたのは目的地でもある"メジストの錬金術店"だ。


「すみません、誰かいますかー」

 扉を開けるとそこは人気もなく、中は物で溢れかえっていた。反応もなく店内は静かさに包まれていた。


「ここで合ってるのか? すみません、誰かいますかー!」


「そんなに叫ばなくても聞こえとるわい!」

 俺は大きな声を出すと突然足元からおじいちゃんが飛び出てきた。正確に言えば床に置かれた大量の本の中から出てきたのだ。


「あのー、メジストさんですか?」


「お主もわしの錬金術を邪魔するのか!」


「えっ!?」

 俺は何を言われているのか分からなかったが、ただその時感じたのはまた面倒事に巻き込まれるのではないかということだった。

 

 

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