勇者パーティーの元ATMは謎スキル【証券口座】で成り上がる。〜配当で伝説の武器もスキルもアイテムも貰ったら最強ポーターになってました〜
k-ing@二作品書籍化
第1話 荷物持ちのお荷物さん
「今日からアイテムボックス持ちをパーティーに入れることになったからお前はいらねえ」
勇者パーティーのポーターとして所属している俺はある日突然パーティーから追放された。
「おい、それはどういうことだ……?」
「ほんとにお前は馬鹿だな。 荷物も持てないポーターなんて勇者パーティーにはいらないんだよ」
「ぐはっ!?」
幼馴染で勇者の称号を持っているアドルに蹴られ、そのまま屈み込んだ。体を起こそうとするがアドルの足が背中に乗っていて顔しか上げることが出来ない。
そもそも冒険者にもポーターにもなる気はなかったが、謎スキル【証券口座】の力でお金の管理がしやすいという理由で俺はポーターとなった。
この世界のお金は金額が増えると質量は重く、枚数が増えると管理がしにくい冒険者にとってはポーターは必須だ。
俺のスキル【証券口座】はいくらでもお金を収納しておくことができるスキルなのだ。
勇者パーティーと呼ばれているアドル達は報酬や素材売却で手に入れるお金の額が自然と高くなる。
結果、自然と質量が重いお金を持って移動することになってしまう。
だから俺はそのポーターとしてお金を中心に管理をしている。
息も出来ず苦しい中で俺は今までのことが頭の中を走馬灯のように駆け巡った。
「俺がお前に良い夢を見させてやるよ! 戦えなくても勇者の相方にポーターは必要だからな!」
アドルから声をかけられた時は何を言っているんだ。と思ったが昔から同じ村で過ごしている幼馴染に影響されたのだろう。
男ならどこか心の奥底にある"#勇者#になりたい"という憧れが俺の中にもあったからだ。
しかし、このスキルでは勇者にはなれないと気づいた俺は諦めてひっそりと暮らすはずだった。それなのにあいつのスキル【剣豪】に魅せられた。
そして気づけばアドルがリーダーを務めるパーティーのポーターとなっていた。
「これで私達も勇者になったから使えないお荷物はいらないのよ! 女の私があんたみたいなお荷物を守らなくていいって思うと清々する」
「ほんとそうよね! 聖女の私ですら魔物と戦っているのに何もしないやつなんていらないわ」
「ははは、相当お前って嫌われてるんだな」
今まで仲間だと思っていた【女剣士】のアテナと【聖女】のシャルロにもそんな風に思われているとは思ってもいなかった。
「そもそも、男はアドルだけでいいのよ。 いつも邪魔だったのよ」
【魔女】のマリベルはアドルに熱い口づけをした。
「いやん、マリベルだけずるいわ」
「そうよ、私も相手して」
アドルを囲むようにシャルロとアテナは近づき自身の体を曝け出している。
こんなところで淫らな行為をしようとしているこいつらに嫌悪感を抱いていると、俺の背中にずっと置いてあった足は退けられた。
体を起こすと今度は精神的な重しを乗せられた。
「あっ、全てのアイテムと金は俺達のだから置いてけよ」
アイテムが入った鞄とスキル【証券口座】からお金を取り出し地面に置いた。
「おい、アイテムって言ったらお前の装備もだろ?」
「これは俺が買ったや──」
さすが勇者パーティーと言われるほどだ。気づいたらまたアドルに蹴り飛ばされていた。全くアドルが蹴った姿が俺には見えなかったのだ。
「俺らが稼いだ金で買ったやつは俺らのもんだろ? なぁ?」
俺の頭を掴み見下ろすその顔に昔のような優しいアドルはいない。
"勇者"という称号はそれだけ人を変えてしまうのだろう。
こんなに人を変えてしまう称号なら俺はアドルについて行かずにひっそり暮らすべきだった。でも、今頃悔しても遅いのだ。
あの時に目の前にいる男の夢と俺の夢が重なってしまったのだ。
──勇者になりたい
そんな馬鹿げた夢を俺は持つべきではなかったのだ。
「こいつが使ってた装備なんていらないわよ?」
「いや、売れば金になるだろ?」
「あはは、さすがアドル!」
「だから、マリベルばかりキスしてずるい!」
「ははは、これからみんなで楽しもうぜ」
俺のことは既に頭にないのかアドルは女達と肩を組んで街の中へ消えて行った。
「これが私の仕事なのでごめんなさいね」
新しくパーティーに加入した綺麗な顔をした女性がアイテムや装備などをアイテムボックスに入れていた。
銀髪でスタイルも良くてどこか高嶺の花のような女性だ。
ああ、アドルはこいつの見た目が気に入ってパーティーに入れたんだとすぐに感じた。
全てのアイテムと装備を回収された俺に残っているのはポーターとしての冒険者カードと謎スキル【証券口座】だけだった。
──────────
【あとがき】
「面白かった!」
「続きが気になる、読みたい!」
と思ったらフォロー、コメントをして頂けると嬉しいです。
下にある♡応援や☆評価をお願いします。
面白かったら☆3、つまらなかったら☆1と正直な気持ちで構いません。
皆様の評価が執筆の励みになります。
何卒よろしくお願いいたします。
では、続きをお楽しみください!
※アルファポリスでも先行投稿しています。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます